鎮守府から出撃した別動隊は、全速力で正面海域へと向かっていた。
しかし別動隊は敵の背後を突くのが目的のため、真っ直ぐ向かわず背後に回り込めるよう鎮守府を出るとすぐに、敵を迂回する大回りの航路をとった。
「龍驤、偵察機を出してくれ」
「分かった。行くで!」
龍驤は2機の零戦を放った。偵察任務を携えた2機の零戦は予定航路の上空に展開し警戒に当たる。続けて艦隊直掩として10機を放ち艦隊防空態勢に入る。
「哨戒機発艦」
紀伊も対潜警戒のため対潜爆弾を装備したHSS-2Bとパイオニアを発艦させ周囲の対潜警戒を開始する。
「しかしまぁエライ任務引き受けたもんやな紀伊」
「なに、自身の能力に見合ってれば基本的に任務に不満は無い」
「せやけど向こうも相当な戦力やろ?大丈夫なん?」
「心配するな。まだ使ってない秘密兵器もあるし、作戦通りに行けば上手く行くさ」
「信じてんで紀伊」
「おぅ」
出撃した別動隊は徐々に敵の支配海域へと入っていく。
「敵の海域に入ったで」
「了解。全艦、警戒を厳に」
敵の支配域に入り別動隊全員の緊張が増していく。
海域突入から1時間が経過したが、今のところ敵からの接触はない。
「気ぃつけや皆」
龍驤はそう皆に念を押す。
「龍驤、偵察機からは?」
「今のところ敵の姿は無しやて。そっちはどない?」
「こっちも今のところ……ちょっと待て」
紀伊はインカムに耳を傾ける。
「お客さんだ。敵の潜水艦1隻を見つけた」
「攻撃するんか?」
「下手に撃ったら感付かれる。こっちに気付いていないならこのまま素通りさせよう」
ヘリから送られてくる情報を読み続け敵潜水艦の動向を見極める。データリンクによるリアルタイム情報はサングラス型のHUDに表示されており、ヘリから送られてくる敵潜水艦を示した光点は別動隊の警戒エリアから徐々に離れていく。
「敵潜は気付いていないみたいだ」
光点は警戒エリアの外に出ていき、反応は消失した。
「敵は気付かなかった。もう大丈夫だ」
「奇襲作戦て緊張するもんやな」
「相手に気付かれないのがミソだからな。そろそろ本隊も敵正面海域に出てる頃だな」
腕時計で時間を確認する。作戦では既に前衛の第3水雷戦隊が敵に接触している頃である。
その時…
「来た」
インカムから敵と接触の暗号文が送られてきた。
「向こうが敵と接触した」
「いよいよやな」
「あぁ。俺たちも気を張るか!全艦、巡航速度に移行」
此処で別動隊は敵に察知される可能性を減らすべく、速度を全速から巡航へ落とす。
此処まで来れば敵の潜水艦の脅威は無いと判断し紀伊はヘリを回収する。
「龍驤」
「分かっとる。攻撃隊は何時でも行けんで」
「よし。後は向こう待ちだな」
別動隊は第1機動部隊が敵に強襲を仕掛けると同時に攻撃を行う手筈となっている。
「そろそろ時間だな」
そう言うと紀伊は自身の艤装の一部である箱型のミサイルランチャーを展開させる。
「それが秘密兵器かいな?」
「この前見せたヤツよりも飛びきり強力なヤツだ」
紀伊の秘密兵器と言えるそれは、地球世界や新世界では導入や運用に様々な制限があったが、それ程までに強力なモノであり魔法帝国との戦いでも敵のアウトレンジ攻撃に使用され大いに活躍している。
この世界に来てからは初の使用となるソレが入った4連装ランチャーはハープーンと同じ4基16発が搭載されており、その全てが発射態勢に入った。
「安全装置解除」
懐に仕舞っていた安全キーを右下腹部の艤装部分にあるキー穴に差し込み左に回転させ安全装置を解除する。
「安全装置解除確認、無人機とデータ接続。諸元入力」
飛行中のパイオニアからの目標位置を入力させ、直ぐに発射態勢に入る。
「トマホーク全弾連続発射、用意、撃て!」
合図と共にランチャーからタクティカルトマホークが連続発射モードにより次々と噴射炎と煙を吐きながら飛び出していく。
射出用ロケットが切り離され、ターボジェットエンジンが点火、目標の方向へ向けて急速に向きを変え飛び去っていく。
「全弾発射確認!」
僅か30秒で全てのトマホークを打ち出した紀伊。
「時間だな」
腕時計の時刻は第1機動部隊が攻撃を開始する時間を差している。
敵からの探知を避けるため海面スレスレの超低空飛行を行いながら16発のトマホークは音速で飛行を続ける。
無人機から送られる位置情報を元にトマホークに内蔵されているセンサーが飛行経路の修正を行い、徐々に敵との距離を詰めていく。
やがて、敵の本拠地である凄地へと到達。そこで16発のトマホークは2手に分かれる。
先ず半数の8発が低空飛行を続け、残りの8発はホップアップを行い一気に上昇を掛ける。
「!?」
流石の凄地姫も気配に気付き後ろを振り向く。凄地姫は第1機動部隊からの航空攻撃から身を守るため迎撃を行っていたが、背後から迫ってくる16発のトマホークを見て、鎮守府側の意図を理解した。
凄地姫は背後の敵も迎え撃つため、機銃掃射を開始した。
「!!」
しかし、音速で迫ってくるトマホークに対して気付くのが遅かったため、機銃掃射を始める頃には既にトマホークは終末誘導により弾頭部のカメラが凄地姫を捉えており、真上と真正面からの攻撃を同時に受ける事となった。
「?」
凄地姫には迫ってくるトマホークの弾頭部にあるカメラシーカーのレンズが見えた。
まるで自身を見透かしているかのように感じたのか凄地姫はその場からは動けず、音速のミサイルをその白い肌で受けた。
続く
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