艦隊これくしょん 異界の不沈戦艦召喚   作:明日をユメミル

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エピローグ2

自衛艦旗返納を終えて正式に退役となった紀伊と尾張。

2隻とも呉と横浜の岸壁にて記念艦となり、地球世界と新世界に於ける戦争を後世に伝える遺構としての役目を背負う事となった。

 

記念艦となり多くの人が紀伊と尾張の元を訪れる様になった。いつしか2隻は観光地として世界的な知名度を持つに至り、日本人だけではなく諸外国からも多くの人やエルフ、竜人達が押し寄せてくる。

年間の来艦者数は東西冷戦後に退役したあと記念艦だった頃を遥かに上回り、その経済的効果から呉市や横須賀市の貴重な観光資源となった。

 

 

 

そんな物言わぬ鋼鉄の船に意思と言うモノがあるとすれば、多くの人はそれを信じるであろうか?

 

 

大抵の人は信じないか、かもしれないと言う表現に留めるしかない。モノに意思が宿ると言うのは昔からよく言われている事であり身近なモノや人形に意思を持たせて、擬人化すると言う文化は現代ではよくあるジャンルで、アニメやマンガの題材として扱われる事が多い。

 

 

 

もしそんな紀伊と尾張に意思があるとすれば………

 

 

 

 

 

「今日も千客万来だな」

 

 

 

紀伊の第1艦橋上部の射撃指揮所の頂部に仁王立ちする者の姿がある。そこは甲板や船の周囲に居る人たちからは直ぐに目につく場所であるが、今紀伊を訪れている人達は誰もその者の事に気が付いていない。誰も彼を認識しておらず声も聞こえていない。まるで幽霊のようであった。

 

 

「しかし、暇だな」

 

 

その者は海上自衛隊の階級章とネームプレートが縫い付けられた作業服に身を包んでおり頭には紀伊の艦番号の刺繍が施されたキャップを被っている。

それだけを見れば何処にでも居る海上自衛官に見えるが、その顔つきは若さが目立ち一見すると高校生から20代前半にも見える。

 

 

「来てくれるのは良いんだが、艦内をエアコンエリア代わりにするの止めて欲しいな」

 

 

そんな愚痴を溢す彼こそが、この紀伊の意思を具現化した存在であり紀伊そのものでもある。

 

 

「さて、見回りにでも行くか」

 

 

彼は射撃指揮所から降りると、第1艦橋に入る。

 

 

「来てる来てる」

 

 

艦橋内には見学に訪れた観光客でごった返しており、すし詰め状態であった。皆、、艦橋内に入った彼はそんな状態にあっても全く動じず、観光客達の体を幽霊みたいにすり抜けていく。

 

 

「異常なし」

 

 

次に彼は下の第2艦橋、一番下の司令当塔の順に見回りを行い、艦内に設けられた見学エリアや甲板を歩き回り見回りを終える。

 

 

「しかし、人から認識されないのがこうも寂しいとはね」

 

 

彼は突如としてこの艦としての意思を持った存在となった。最初は魂の様に、気が付けば人間の様な肉体を持ち、自由にあちこち動き回れる様になったが艦に訪れる者達には誰からも自身の姿や声を認識される事はない。何故そうなったのかは彼自身にも全く分からなかったが、戦艦である自身が意思を持てた事は素直に感謝し、今まで出来なかった事が出来る様になった

 

例えば、来艦者の話や話題に聞き耳を立て、売店にある新聞や雑誌を読み漁って流行を追い掛けたり、予約来場者限定で艦内の科員食堂で提供される食事を調理員の隙を突いて試食して食事を楽しむ等、刺激のある日々を過ごしていた。

 

 

しかしそれも飽きが来るもので、いつの間にか退屈な日々を送る事となった。

 

 

 

「刺激が欲しいな」

 

 

 

旧艦長室内のベッドで横になりながら、彼は今後はどう過ごすべきかを考える。

しかし記念艦となり戦いから遠ざかった自分に出来る事などはなく、ただ記念艦としての日々を送るしか無い事に内心は辟易としていた。

 

 

 

「もう一戦…あともう一戦くらいは戦いたかったな」

 

 

 

そう思いながら彼はそっと目を閉じた。

 

 

 

(新たな戦いを望むか?)

 

(ん?)

 

 

 

ふと目を開けると目の前に壮麗な羽織を幾重にも身に纏った何者かが居た。

 

 

(誰だ?)

 

(そなたは戦いを望むのか?)

 

(なんでそれを?)

 

(応えるがよい)

 

 

突然の質問に彼は少し考えて応えた。

 

 

(あぁ、戦いたい)

 

(何故?)

 

(何故か………俺は戦艦だからだ。戦艦は戦うための存在だからだ。そんな俺に平和はほんの少しだけ合わないんぁ)

 

 

少しだけ合わないと応えた彼。少しだけと言う表現は、彼戦闘狂ではないためで、平和の尊さと大切さをしっかりと理解しているからであり平和を否定する様な考えは持っていないからである。

 

 

(ならば新たな使命を背負う覚悟はあるか?)

 

(使命?)

 

(そなたのような者は使命を背負う事で戦う意味を見い出す)

 

(俺がそんな崇高な奴に見えるかい?)

 

(見える。だから問うておる)

 

(使命ね…………その使命っての俺にくれるのかい?)

 

(いかにも)

 

(それは、多くの人を助ける事になるか?)

 

(それは自身の目で確かめるが良い)

 

(見てからのお楽しみって訳か?)

 

 

 

彼は腕を組んで暫く考えに耽る。

 

 

 

(……………)

 

(答えは決まったかえ?)

 

(あぁ。態々使命っての用意して俺の目の前に現れたって事は、何かが起きるのか或いはもう起きてるからだろ?)

 

(………)

 

(その何かが何なのか?それは俺じゃないとダメなのか…俺だからこそ出来るかもしれないと思って人の夢の中にまで入ってきた。違うか?)

 

(聡いな)

 

(80を越えると、会話の中から色んな事を見つけるのは程度出来るようになる)

 

(油断ならぬな。まぁ良い、そなたは使命を背負う覚悟は出来たと言う事で良いか?)

 

(あぁ)

 

(ならばそなたに使命を授けよう。そして、新たな戦いへ)

 

 

その言葉と共に彼の姿は消えた。

 

 

 

残された羽織を纏った者は体全体を光が包み込み、光が収まると、羽織は和装のように変化していた。

 

 

(さて、報告せねばならぬのう)

 

 

 

 

 

 

 

続く




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