鎮守府正面海域攻略作戦が大成功裏に終了し、太平洋各国は深海棲艦に対する全面反攻作戦に向けての準備期間に入った。
日本国防軍も同盟国や近隣諸国と次の作戦に向けての協議に入ると同時に、陸海空軍も諸外国軍との合同訓練や演習を行う等の次の戦いに備えていく。
それに呼応するかのように、日本各地の軍港にある鎮守府でも鎮守府正面海域が解放されたため駆逐隊や水雷戦隊による遠征任務や局地戦、国防海軍の護衛隊群や哨戒機部隊が近海に展開し偵察活動や警戒任務が盛んに行われる様になった。
横須賀鎮守府も例に漏れず、第1護衛隊群と合同で船団護衛任務や太平洋方面の哨戒活動が行われている。
「今日も賑やかだな」
鎮守府内で暇を持て余していた紀伊や他の艦娘達は近くの航空基地から米軍と国防軍所属のP-3CとE-2、AWACSや輸送機が次々と飛び立っていく様を眺めている。
中には、かなり特殊な機体である電波情報収集機や気象観測機も飛び立っていくのが見える。
「あの機体達って何処に行くんだろう?」
「確か、鎮守府正面海域を拠点に次の作戦に向けての情報収集活動をするとか何とかって聞いたが」
「私達が海域を解放した途端にコレだよ。もっと早く動いて欲しかったけどね」
紀伊と共に上空を眺めていた川内がそう愚痴を溢す。
「愚痴か?」
「言いたくもなるよ。前からこれだけ動いてくれればもっと作戦はスムーズに出来たのに」
「仕方ないだろ。上も深海棲艦を内心怖がってるんだろうし、そうなれば及び腰にもなるさ」
「そうなんだけどさ……何か納得いかないんだよね」
「今さら言ったってしょうがないさ。動いてくれただけでも良しと考えるべきだ」
そこまで言うと紀伊は次の話題に切り替えた。
「そう言えばお前さんの処に来た新人の事なんだが、この前の作戦も参加したんだろ?」
「吹雪の事?まぁ、参加はしたけど……どうも今まで実戦に出た事が無かったらしくて、この前の作戦の時も危なっかしくて」
「やっぱりか………」
「やっぱりって……知ってたの?」
「長門から少し聞いてたんだ。何でも提督の指名で此処に来たんだと」
「提督が?」
「長門が言うにはな。着任前に彼女の経歴を見せてもらったが、特にこれと言った実績もなく、特筆すべきものがない…………まぁ言ってしまえば、特徴が無いのが特徴と言ったところか?」
「提督の人選だから何かしらの意図はあるんだろうけど、どうして提督は此処にあの娘を連れてきたんだろう?」
川内の疑問に紀伊も答えられない。
「分からん。だが何かしらの可能性は感じたんだろう」
「可能性か………確かにあの娘は伸び代はあると思うね。夜戦やらせたら強くなると思うよ私は。紀伊は吹雪と話した事ってあるの?」
「着任の時に見掛けただけで、まだ会話はしてないな」
「いい娘だよ。素直で真面目だし、純粋で可愛さを感じるよ」
「なら、初っ端から嫌われる事は無さそうだな。吹雪は今何処に?」
「他の駆逐艦の娘達と座学の時間やってると思うよ」
「挨拶してくるか。長門から一応同期として仲良くしてやってくれって言われたからな」
「頑張ってね。私は夜に備えて寝るかぁ………」
紀伊はその足で駆逐艦達が座学を受けている講堂へと向かう。
「まるで学校の校舎だな」
木造の何処か懐かしさを感じる校舎のような佇まいをしている講堂は、学校と同じで玄関から上靴を履いて入館する。紀伊はブーツから備え付けのスリッパに履き替えて入館し、吹雪が居る教室へと向かう。
「此処か」
教室の前で足を止め『駆逐艦』と書かれたプレートを見て目的の場所だと確認、腕時計で時間を見て今は休憩時間であると確かめてからドアを開けた。
「あら?紀伊じゃない」
其処には大勢の駆逐艦に混じって第6駆逐隊の姿があった。
「よう、吹雪って奴は居るか?」
「吹雪?ちょっと待って………吹雪!」
「はいっ!」
暁に呼ばれて1人の艦娘が立ち上がった。
「さっき話した紀伊さんが吹雪を呼んでるわよ」
「えぇっ!?戦艦の人が私を?」
突然の事に立ち上がった艦娘、特型駆逐艦『吹雪』が緊張した面持ちで直立不動になる。
「大丈夫よ。紀伊は貴女を別に取って喰う訳じゃないんだから」
「は……はい!」
吹雪は自分の席から入り口へ向かうが、相当緊張しているのか両腕と両足を同時に出しながら歩き出す。
「あ……あの、どう言った…ご……ご用件で……」
「そんなに固くなるなって……言う方が難しいかもしれんな。実はお前と話がしたくってな」
「私とですか?」
「あぁ。実はお前と俺って着任した日が近くてさ、此処じゃ俺も新米だから同期として挨拶にと思ってさ」
「挨拶…ですか?」
「あぁ。お前の着任の日に挨拶に行こうとしてたんだが、生憎この前の作戦の開始日だったし、後処理がゴタついて今まで挨拶出来なかったんだ。少し遅れたがよろしく頼む」
「は、はいっ!よろしくお願いします!」
吹雪は差し出された手を握りしっかりと握手を交わす。
「吹雪、この後時間あるか?」
「えぇっと?次の授業が終わったらお昼ご飯の時間ですから、時間はあります」
「良かった。唯一の同期だ、親睦を深めたくて一緒に昼飯でもどうだ?」
「一緒に、お昼ご飯をですか?」
「あぁ。都合が悪ければ別にそっちを優先しても構わんが」
「行きます!一緒にお昼ご飯行きましょう!」
「分かった。もし俺とサシで緊張するなら他の仲良いい娘達も連れてきてくれ構わん」
「はいっ!」
「じゃあ0000時に食堂前でな」
そして、1時間後
「お待たせしました!」
食堂前で待機していた紀伊の元に吹雪と2人の艦娘がやって来た。
「来たか。そっちの2人は夕立と睦月だったか?」
「はい。私の友達です!」
「紀伊さん、久し振りっぽい」
「お昼ご飯のお誘いありがとうございます!」
「よし。じゃあ飯食うか」
4人はそのまま食堂へと入り、各々に好きなメニューを選びお盆の上に並べて空いている席へと座った。
「さて、何から話そうか?」
続く
皆様からのご感想お待ちしております。