ガルム隊の介入により第3水雷戦隊は敵の航空脅威から辛うじて逃れる事が出来、作戦通りに紀伊達が待機している海域へ敵艦隊を誘い出していた。
「そろそろ予定の海域ですね」
「神通、もう良いんじゃない?」
「そうですね。これより合図を送ります」
そう言うと神通は通信システムを作動させAWACSにリンクさせる。
「こちら第3水雷戦隊、AWACS聞こえますか?」
《こちらイーグルアイ、感度良好》
「指定海域に到達、待ち伏せ部隊に合図をお願いします」
《了解した》
数秒後、AWACSから紀伊に合図が送られた。
《こちらイーグルアイ。小判鮫が網に掛かった》
「こちら紀伊、了解した」
敵がこちらの待ち伏せ地点に入った合図を受けた紀伊は全員に戦闘態勢を命じた。
「主砲砲戦!目標、敵水雷戦隊!」
主砲全門が敵水雷戦隊へ向けられる。AWACSからのレーダー情報に従い諸元入力が速やかに行われ、敵を主砲の攻撃圏内へと収め、射撃態勢が整う。
「主砲斉射!」
主砲が火を吹き51センチ砲9門から砲弾が放たれ、第3水雷戦隊の真上を飛び越えて敵水雷戦隊に着弾する。
「紀伊の砲撃だ!巻き込まれないように後ろに回り込むよ!」
第3水雷戦隊はその場で針路を変え、大回りで敵水雷戦隊の後方に回り込み挟撃する。
「こっちも行くよ!」
第3水雷戦隊全艦が砲撃を開始する。敵水雷戦隊は前と後ろからの挟撃に碌な艦隊運動が出来ず、砲撃を浴び続ける。
「主砲斉射!」
紀伊は混乱する敵に向けて砲撃を続け、敵に水雷戦隊を行う隙を与えないようにする。
「次、斉射!」
3回目の砲撃で9発のうち1発が敵軽巡に直撃し、一瞬のうちに轟沈した。
「直撃だ!凄いな紀伊の砲撃は」
「51センチ砲は伊達じゃないって事だね!」
凄まじい破壊力に川内と那珂は驚きを隠せない。
「私達も負けてはいられません」
神通も久し振りに興奮しているのか、何時もよりも格段に戦闘に対して力が入っている。
「凄いっぽい!」
「うん。こんなの滅多に見られないよ」
「これが先輩達の戦い。私に出来る事は………」
夕立、睦月は皆の戦闘に驚嘆、吹雪は自身に出来る事を探している。
吹雪はここ4週間の間、他の艦娘達以上に訓練に明け暮れており、紀伊や神通も暇があれば訓練に付き合ってもらい、練度を自分なりに引き上げようと努力していた。
「神通さん!私達はこのまま敵の包囲を続けますか?」
「はい。機を見て水雷戦に突入します!それまでは現状維持を!」
「はい!」
戦闘開始から30分が経過し、前後からの砲撃を受け続けた敵水雷戦隊はもはや風前の灯火となっている。神通は今だと言わんばかりに水雷戦突入を命じた。
「全艦、水雷戦闘用意!」
第3水雷戦隊は敵に向けて突撃を開始。残存している敵イ級やロ級に向けて雷撃戦を仕掛ける。
「撃て!」
一斉に魚雷を放ち、イ級とロ級に直撃した。
「やった!」
「吹雪!10時に敵艦!」
川内の声に吹雪は10時の方角に視線を移動。そこには自身と並走しているイ級の姿があった。
「吹雪!そこからなら当たる!」
「はい!」
吹雪は自身の魚雷発射管をイ級に向ける。
「当たってぇぇ!!」
そう叫ぶと同時に魚雷を放つ。イ級に向けて突進する魚雷は扇状に広がり、6本のうち1本が直撃した。
「当たった……?」
魚雷が直撃したイ級は粉砕され轟沈した。
「やった!」
初めて敵を撃破した吹雪は訓練浸けだった4週間の努力が報われた様に感じた。
「良いよ吹雪!残敵掃討もあと少しだから、その調子で頑張って!」
「はい!」
その後、第4水雷戦隊と合流した第3水雷戦隊は残敵を掃討し、遂にW島攻略作戦は完了した。
《W島付近の敵勢力は一掃した。後は後続の艦隊と揚陸部隊の仕事だ。ガルム隊と水上打撃部隊は全員帰投せよ》
《よう相棒、まだ生きてるか?》
《あぁ》
《俺出番無かったっスね》
「終わったな」
「はい。疲れたぁ~」
「吹雪ちゃん、初戦果っぽい!」
「訓練が役に立ったね吹雪ちゃん!」
「うん。川内さんも神通さんもありがとうございました!」
吹雪は訓練に付き合ってくれた紀伊と神通に礼を言う。
「気にするな」
「そうです。まだこれからなんですから」
「はい。今後とも宜しくおねがいします!そう言えば、睦月ちゃん」
「どうしたの?」
「出撃前に如月ちゃんと何か話してたよね?」
「うん。最後までは出来なかったけど」
「行ってきたら?一緒に帰れるんだから」
「うん!」
そう言うと睦月は前方を航行している第4水雷戦隊の輪の中に入り、如月の並走し始める。
《ほぅ。あれが青春て奴か?》
《俺もハイスクール時代はあんな青春送ってたっスね》
《PJの青春てどんなのだったんだ?》
《楽しかったっスよ。友達と馬鹿やって、彼女とも仲良かったし》
《羨ましいな。俺もサイファーも碌な生活してなかったからな》
《少なくとも恋愛には程遠い生活だったのは確かだ》
《2人の昔の話も聞かせてください!俺、2人の過去の事は知らないですし!》
《その気になったらな》
《約束ですよ!》
続く
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