第5遊撃部隊への補給のため大和の案内で、司令部庁舎内の1室に通される一行。
「お入り下さい」
木製のドアを開けると、その奥には驚きの光景が広がっていた。
「凄い……」
其処は、まるで高級ホテルにあるホールの如く真ん中には円卓があり、高級絨毯、壁や天井に装飾が施されている。
「大和、部屋を間違えてないか?」
「いいえ。こちらが艦娘専用の補給処です。皆さん、好きなお席にお座りください」
大和に促され全員、各々の席に座る。
「少々お待ちください」
そう言うと、部家の奥の扉から妖精達が移動式カートを押して現れた。カートには皿や器に綺麗に盛られた肉料理、魚料理、スープ、飲み物が載せられており、担当の妖精達はそれらを円卓へと並べていく。
「それでは皆さん、どうぞ存分にお楽しみください」
補給が開始され、皆運ばれてきた料理に食べ始める。
「美味しい!」
「本当に……美味しいです!」
「美味いな」
皆、料理の味に驚きつつ食べ進める。
「どうだい?大和の料理は美味いだろ?」
「これは皆、大和が?」
「いえ、尾張さんと妖精の皆さん達の自信作なんです」
「尾張、お前料理出来たんだな」
「此処に来てから大和や妖精達のお陰でな、今では厨房の責任者だぜ」
尾張はそう言って胸を張る。
その後も皆の会話は弾み、一時の安息の時間が流れる。
そして、会話が盛り上がったところで紀伊が挙手、新たな話題に入る
「そう言えば尾張、お前が此処に来てからの事を話してくれないか?」
その問いに尾張は「やっぱり」と言った表情となる。
「何処から話すべきか…………取り敢えず此処に来た時の事から話そう」
尾張は姿勢を正して話始める。
「今から1ヶ月前前の事だ…」
此処で時系列は紀伊達が鎮守府正面海域解放直後に遡る………
「撃て!」
トラック島の北にある海域で訓練を行っている大和。海上に設けられた標的は46センチ砲の砲撃で悉く破壊した。
「目標撃破!撃ち方やめ!」
主砲射撃を終えて、砲塔を元の位置に戻す大和。
「今日の訓練計画はこれで終了、トラック島へ帰還します!」
その日の訓練プログラムを消費し、足早にトラック島への帰路に就く。最新鋭艦である大和は大反攻作戦に備えて戦力温存と機密保持のため随伴艦も居らず、訓練でも1人孤独であり、普段も島内で待機生活を送っている。
「はぁ………」
それは大和と言えど精神的に少なからずダメージがあり、その孤独さを埋めるため訓練には力が入っていたが、完全に払拭できるものではなかった。
「何時まで続くのでしょうか……」
周りに誰も居ないため、大和は寂しさを溢す。
トラック島へ近付き、何時もの入港手順を取ろうとしたその時、大和の無線が反応する。
「ん?」
無線からは雑音混じりではあるが声が聞こえる。
《こち……海…衛隊……護衛…尾張……付近を航行中……艇へ……至急援護を要請する!》
周波数を調べると、艦娘用の通常無線周波数に近い事と至急援護を要請している事から状況が切迫しているのは明らかである。
「位置は…………此処から北北東ですか」
逆探により無線の送信位置は特定出来ている。大和は入港手順を中断、直ちに救援へと向かった。
「電波の出力が上がっていく……近いですね。航空機、発艦!」
大和は現場へと近付き零式水上観測機を発艦させると、現場へ向かわせる。
そして、砲撃戦に備えて主砲を旋回させる。
「後は観測機からの情報待ちですね」
初めての実戦に大和は緊張感に体が震えた。
「来た!《我、敵機動部隊と友軍艦を発見ス。尚、友軍艦は戦艦級と思われるが艦名は不明、敵戦艦級と交戦中》。分かりました、これより援護射撃を行います!観測機は敵機を警戒しつつ観測を開始してください!」
大和は観測機から送られてくる情報を頼りに主砲射撃準備に入る。
「射撃用意よし!射撃用意……撃て!」
轟音と共に46センチ砲が初めて敵に向けて放たれた。
9発の46センチ砲弾は弧を描くようにして飛翔、艦名不明の友軍艦を襲っていた敵機動部隊に襲いかかる。
「誤差修正………良し!斉射!」
再び砲撃が始まると、今度は敵機動部隊の巡洋艦と戦艦に直撃弾が入った様だ。
「観測機、友軍艦の様子は?」
艦艇機に状況を尋ねる大和。
《友軍艦は敵艦艇に向けて砲撃を開始。敵戦艦級2隻に直撃弾を確認。他の敵艦艇は後退を開始した模様》
「了解。しかし一体誰なんでしょうか?」
一抹の疑問を抱きつつ観測機からの報告を受ける大和。
時間が過ぎていき、大和も30回目の砲撃を行ったところ敵艦隊は現海域を離脱、戦闘は終了した。
「周囲に敵影なし」
戦闘態勢を解き、友軍艦艇へと向かう。
「あの方が」
現場へ入ると其処には海上を1人、立ち尽くす人影があった。
「貴方は何者でしょうか?」
その問に人影は振り返り、こう答えた。
「紀伊型戦艦2番艦の『尾張』だ。此処は何処なんだ?」
続く
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