「戦いって……それ以前の問題だろ」
そう愚痴を吐いた彼、紀伊型戦艦1番艦『紀伊』は今、無人島に居た。
「アイツ、使命を授けようって言って連れてきたのがこんな無人島だなんて」
紀伊は無人島、正確には元有人島の島民達が使っていた廃村にある民家で過ごしていた。
あの夢の中での出来事から目を覚ますと、紀伊は無人島の砂浜に倒れていた。いきなり何もない無人島に送り込まれた紀伊は自身の身に纏ってい"モノ"に驚いた。
それは、艦時代の自身に装備されていた主砲塔と副砲、速射砲、CIWS、ミサイルランチャー、煙突、マストを模した物が取り付けられた、SF映画にでも出てきそうなギアのような物だった。
両足にはスクリューがついたブーツを履き、頭部にはグレー1色の88式鉄帽を被り、右足のレッグホルスターには自衛隊の制式拳銃である9㎜拳銃が収められ、海上自衛隊の刻印が彫られた64式小銃を手にしている。
SF映画に出てくる様なバトルスーツに現代の歩兵装備を組み合わせた様だが、これだけの装備を担いでいるにも関わらず、紀伊自身には重さは殆ど感じられず、身体と手に見事フィットしている状態であった。
「エイリアンとでも戦えって言うのか?」
紀伊はそれらの装備を取りあえず艤装(仮)と称して、動くかどうか試してみた。彼の予想通り艤装に装備されている主砲塔、副砲、速射砲は自身の意思のように動いてくれた。流石に射撃はしていないが、恐らく射撃する意思を込めれば射撃も出来るだろうと思った。
そして紀伊が何よりも驚いたのは、艤装の中から現れた者達の存在であった。
「艦長!現時刻、1700。食事の時間です」
「おう」
彼の足元には掌サイズの小さな小人達が大勢並んでいた。彼らは紀伊の前に現れると自身を『妖精』だと名乗った。
それを聞いた紀伊は、以前観光客落とし物の中にあった漫画のうちの1冊にあったお伽噺を思い出した。その妖精達は本の中では可愛げのある服を着ていたが目の前の妖精達は海上自衛隊の作業服や略帽を着用しており可愛げの欠片も無い。
しかし、それに反して妖精達はとても働き者で、普段は自身の艤装の整備と運用、廃村回りの警備や紀伊と共に無人島の調査をやったり、時々島内の何処からか猪や鹿を狩ってきたり魚を捕ってきたりするなど、現在の生活に完全に適応している。
「今日はメニューは?」
「はい。昨日捕まえたイノシシ肉のステーキとライスとスープ付きです」
「豪勢だな。じゃあ交代で喰おう」
「了解」
無難に無人島生活を送っている紀伊と妖精達の1日が終わろうとしていた。
食事を終え、今回の業務の報告を受けた後、航海日誌を記入してから古民家内に設けられた1室に敷かれた布団に入り眠りについた。
今日も特に変わった事はなく、1日が終わった。
日付が代わり、時刻は午前1時を過ぎた頃…
「艦長、失礼します」
寝室に副長妖精が入ってきた。
「…………ん。どうした?」
「お休みのところ申し訳ありません。哨戒ヘリがこの島の南東250キロ地点にて複数の反応を確認したとの事です」
「複数の反応?」
「はい。例の無線傍受にあった深海棲艦と艦娘との間で戦闘が発生している可能性があります」
「ようやくお出ましか。総員起こし」
「了解!」
紀伊は布団から出ると青色の迷彩作業服に身を包み、自身の艤装が置いてある部屋に向かい艤装(仮)を装着する。
「状況は?」
「たった今、無線の交信数が跳ね上がりました。内容から、戦闘中と思われます」
「分かった。哨戒ヘリには安全を確保しつつ現場の状況を逐一報告させるように指示を出しておいてくれ」
「了解」
「無線傍受と逆探はこのまま続行し内容は全て記録せよ」
「了解」
無人島に送り込まれてから今まで紀伊と妖精達は現状確認のため通信傍受や哨戒ヘリによる無人島周辺の調査、天測による現在位置の確認を行っている。
現状、天測と哨戒ヘリからの報告を纏めた結果、この島は日本列島から南に下った日本の領土の島であり、傍受した無線通信内容から此処が新世界ではなく地球世界である事、深海棲艦と艦娘と呼ばれる謎の存在が戦いが繰り広げられている事が判明している。
その過程で周辺の調査をしていた哨戒ヘリも深海棲艦と艦娘に関して写真や映像を複数記録しており、双方に察知されないよう遠距離からの撮影であったため不鮮明なものも多いが、海上をスケートの様に駆け巡り黒い化け物と戦っているのが分かる。無線交信記録から前者が艦娘、後者が深海棲艦だと推測された。
「接触する良い機会だ。最初は不審がられるかもしれんが、こちらから手を出さないよう全乗員に徹底させてくれ」
「了解」
「これより艦娘達と接触を図ると同時に支援を行う!今回の行動が今後の我々の命運を左右する事になるため、全員一層気を引き締めてくれ!」
続く
皆様からのご感想お待ちしております。