トラック島から出港した先行隊は、既に本土近海へと入っており鎮守府到着は目前であった。
「もうすぐ鎮守府だよ」
「はい。此処まで来ればもう安心ですね」
「油断しないで。この辺りはまだ哨戒線の端だから」
先行隊は潜水艦と敵の偵察機を警戒しながら輪形陣で航行する。
《こちらイーグルアイ。レーダーに敵性反応、警戒せよ》
「全艦対空戦闘用意!」
上空を警戒しているAWACSからの報告に全員、対空戦闘に備える。
「最上、レーダーに反応ありだ」
「俺のも反応あり。数は……20機は居る」
此処で紀伊と尾張の3次元対空レーダーが反応を示した。
「こっちも対空電探が捉えたよ。備えて!」
全員が上を見上げる。
「前方に敵機発見!」
吹雪が目視で敵機を捉えた。前方の空域から高度を保ちながら向かってくるのが見える。
「対空戦闘!」
吹雪は砲を上空に向けた。
「ダメだよ吹雪ちゃん。届かない」
敵機編隊は砲の射程距離外である。
「僕の砲もギリギリだね。多分撃っても当たらないかも」
「だったら俺達に任せろ」
紀伊はそう言うと主砲を最大仰角に上げる。
「まだギリギリ砲の射角内だ。俺と尾張の3式改なら半分は叩き落とせる」
尾張も主砲を敵編隊に向ける。
「兄貴、用意いいぜ!」
「皆、耳を塞いでろ!主砲、斉射!」
最上、吹雪、陸奥が耳を塞ぐのを確認して紀伊と尾張は主砲を放った。
衝撃波と轟音が3人の体を激しく揺さぶる中、18発の3式改は超音速で飛翔、敵編隊の直下に到達した瞬間、近接信管が作動し3式改は全弾が一斉に炸裂し数万発のベアリングが散弾の様に広がり、敵機14機が一度に爆散、3機が炎上し墜落していく。残った無傷の3機は慌てた様子で離脱していく。
「凄い……17機を一度に撃墜なんて」
最上は思わずそう呟いた。
「感心してる場合じゃない!あれを見ろ!」
指差した方向には地平線に陸地が見え、よく見ると黒煙が上がっているのが見えた。
「待って!確かあそこって……」
「鎮守府じゃ………」
先行隊は速度を上げて鎮守府へ向け急行、浦賀水道を越えて東京湾に入り国防軍が管理する横須賀港へ直接上がると、そこは大騒ぎだった。
「酷い騒ぎだな………すまない、何があったんだ?」
その場に居た国防海軍の水兵に声を掛けた。
「大変なんだよ!今さっき、敵の爆撃機の奇襲があって横須賀港がやられたんだ!」
「爆撃………鎮守府はどうなったんだ?」
「酷いらしい。此処はまだマシだけど鎮守府は徹底的にやられたらしい」
水兵の言葉に吹雪の顔が青くなるのが見えた。
「今すぐ鎮守府へ向かいたいんだ!車はあるか?」
「だったら基地の外に陸軍が待機してるからそれに載せてもらうと良いよ!」
「ありがとう!行くぞ皆!」
その足で横須賀基地の正門前に待機していた国防陸軍の車列へと向かい、最上が指揮官に話しかける。
「すいません!私たち横須賀鎮守府の者なんですけど、この車列は鎮守府に向かうと聞きました!」
「そうだ。君達は艦娘か?」
「はい!今、命令を受けてトラック島から帰投しました!」
「分かった!乗ってくれ!」
指揮官は車列の中にある73式大型トラックを指差す。最上達はそのトラックの荷台に乗り込む。
「前進!」
82式指揮通信車を先頭に国防陸軍の車列は鎮守府へ向けて前進を開始する。
「酷いな…」
トラックの荷台から外の様子を見ると、市街地と住宅地はそれ程被害は見られないが、各所から煙と炎が見える。所々で撃墜された敵艦載機の残骸も転がっている。
「アンタらって艦娘かい?」
同じトラックに乗っていた迷彩服に89式小銃を手にした国防官が話し掛けてくる。
「はい」
「今、鎮守府が見えたが凄い事になってるぞ」
国防官が幌の視察窓を指差す。紀伊はそこから外を見ると、鎮守府がある方向は真っ黒い黒煙が覆い尽くしており、赤黒い炎も見える。
「もうすぐ鎮守府に入るぞ」
鎮守府正門前にたどり着くと、荷台にも黒煙と熱気が入ってくる。
「酷い煙だ」
「こりゃ石油か何かが燃えてるのか?総員マスク着用!」
国防官達はガスマスクを着用する。
「アンタらは大丈夫かい?」
「僕達は大丈夫です」
そう言うと最上達はトラックか降り、後に国防官達もトラックを降りていく。
最上達はそこで国防官達とは別れて、鎮守府へと入っていく。
「酷い」
爆撃された鎮守府はどの建物も崩落しているか、派手に吹き飛ばされており無事な建物は殆ど残っていない様に見える。
「被害確認!」
最上の指示で全員、鎮守府内を捜索する。
そうしていると、給糧艦『間宮』が立ち尽くしていた。
「間宮さん!」
声を掛けて、何があったのかを問いかける。
「皆は事前に避難してて無事だったけど、この様子だと鎮守府の機能が戻るまでに時間が掛かりそうね」
間宮の懸念は最もで、艦娘用の宿舎を始めとして司令部庁舎や格納庫は全壊、工廠やドックも少なくない被害を受けている。
鎮守府の復旧のため、翌日からはトラック島から戻ってきた面々や鎮守府の留守を任されていた艦娘達、そして国防海軍や陸軍の施設部隊、空軍の基地警備隊、アメリカ陸軍工兵隊も加わり、鎮守府の復旧作業が始まった。
「先ずは工廠とドック復旧が先じゃぞ!その他の建物は国防軍と米軍に任せておればよい!ほれ、急がんか!」
指揮を取っている重巡洋艦『利根』がメガホンで各所に指示を飛ばす。
「トラックは残骸を載せ終えてから出発しろ!」
「こっちにブルドーザーを回してくれ!」
「クレーンが足りないぞ!手配してくれ!」
応援の国防陸軍もトラックやショベルカー、ブルドーザー、クレーン車、ダンプ、更には近隣の戦車連隊から提供された78式戦車回収車や重装輪回収車、ドーザー付き74式戦車の支援も加わり急速に担当エリアを更地にしていく。
「兄貴、この丸太は何処に?」
「其処に置いてくれれば良い」
紀伊と尾張も復旧作業を進めており、工廠エリアで作業を行っていた。
「あぁっ!」
「どうした!?」
「ごめんなさい紀伊さん!そこのドアなんだけど、直したのに倒れちゃつたの!」
「分かった直ぐに行くから待っててくれ!」
「尾張さん!こっちの荷物を運び出すの手伝って!」
「任せろ!」
1日の作業で鎮守府は復旧の見込みがついた事で、新たに仮設の司令部を設けて引き続き業務開始の準備が進められる。
「諸君!ご苦労だった。皆の協力により鎮守府復旧の目処は立った。明日より工廠と港が限定的ながら使用可能となる。艦隊の準備が整い次第、敵機動部隊への攻撃を開始する」
トラック島から帰還した長門の訓示に全員が息をの
飲む。
「尚、提督から新たな作戦命令書が送られてきた。我々はそれに従い行動するが、命令書と共に吹雪、紀伊、尾張の3人には別途、提督から指示が入っている」
長門は命令書に同封されていた別の書類の内容を読み上げる。
「特型駆逐艦吹雪、紀伊型戦艦紀伊・尾張は作戦に備えて近代化改修を命じる!」
続く
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