艦隊これくしょん 異界の不沈戦艦召喚   作:明日をユメミル

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第34話

「いよいよだな」

 

 

作戦開始日の早朝、鎮守府のドックでは既に艦娘達が出撃態勢を整えており、出撃命令が下るのを待っていた。

 

 

『諸君!』

 

 

鎮守府内に全館放送により長門の声が鳴り響く。

 

 

『遂にMI作戦が発動される!我々にとってこれはかつてない規模の作戦となる。この作戦の成否が今後の戦いに於いて大きな転換点となると言っても過言ではない。本作戦の目的は敵機動部隊を叩く事である!この敵機動部隊を撃滅しMI攻略が成功すれば戦局は大きく我々に傾く。太平洋と言う広大な海を制する事はすなわち深海棲艦により苦しめられている太平洋諸国に平和をもたらす。そのためにも我々は絶対に負けてはならない!諸君のこれまでの戦い振りを信じ、此処にMI攻略作戦発動を宣言する!』

 

 

長門の訓示を合図に鎮守府から作戦参加部隊が次々と出撃、艦隊は2手に分かれて凄地MIと凄地ALに向かった。そして同時刻にはトラック島からも大和を旗艦とする部隊が本隊支援のため出撃、本隊合流のため会合地点へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間が経過した頃……

 

 

 

「今のところ偵察機から敵発見の報告はありません」

 

 

 

作戦海域近くの環礁地帯に設けられた会合地点で第1機動部隊は偵察活動を実施していた。

既に赤城と加賀、蒼龍と飛龍からは偵察機が出撃し敵機動部隊の捜索を行っていたが今のところ成果は無かった。

 

 

「大和達も来る気配がないネー」

 

「霧島達が先に合流して、この集結ポイントを伝えている筈なんですけど」

 

 

 

機動部隊と合流予定の大和の部隊とは未だに接触できておらず待機する時間だけが過ぎていた。

 

 

「………………」

 

 

紀伊は腕を組んでMIの方向を見ている。

 

 

 

「どうしたんでしょう?大和さん絶対に張り切ってる筈なのに……」

 

 

 

吹雪も中々現れない大和に心配している様子である。

 

 

 

「どうします赤城さん?まだ待ちますか?」

 

「無線封鎖しているとは言え、此処は敵の勢力圏内。待つ時間が長ければ長いほど敵に見つかりやすくなる………けれど今動けば大和さんの部隊と合流できなくなる」

 

 

機動部隊の旗艦権限を持つ赤城は判断に迷う。自分の判断と命令で部隊を危険に晒す可能性と時間が無駄に過ぎていき機を逃すかもしれないという若干の焦りを感じていた。

 

 

「進みましょう、赤城さん」

 

 

そこへ加賀が意見を述べた。

 

 

 

「大和さん達との合流のため数人だけを残し、私達は索敵を続けながら先行すべきです。此処で敵に発見されれば作戦は破綻します」

 

 

 

それを聞いた紀伊と尾張の脳裏に警鐘が鳴り響く。ミッドウェーの戦いの結果を知っている2人にとってこの流れは不味いと感じた。しかし、意見をしようにも2人は万が一が起きなければ作戦には異を唱える事は出来ず、口を挟む事は出来なかった。此処は赤城の判断を信じるしかないと何も言わなかった。

 

 

しかしそんな2人の変化を見逃す程、赤城の洞察力は鈍くはなかった。

 

 

 

「お二人とも、どうかされました?」

 

 

 

赤城に問い掛けられた2人は表情を保ったまま、首を横に振った。

 

 

 

「いや、別に」

 

「……………………そうですか」

 

 

 

赤城はそれ以上は詮索せず、吹雪と金剛に指示を出した。

 

 

「吹雪さん、金剛さん。あなた達は集結ポイントで待機し大和さん達と合流後、全速力で私達を追ってきてください」

 

「え!?私は赤城さんを護衛するために……」

 

「勝つためには主力部隊と私達が密に連携しなければなりません。だからこそ、あなた方にお願いしたいのです」

 

「…………」

 

「確かに赤城の言う通りネ。此処で大和を待ちまショウ」

 

「………………了解」

 

 

 

 

赤城の判断により赤城ら1航戦と2航戦は凄地MIに向けて先行、残りは大和との合流のため引き続き待機となった。

 

 

「兄貴、大丈夫だと思うか?」

 

「今はまだ何とも言えん…赤城の判断を信じるしかない」

 

「我が輩のカタパルトが不調でなければのぅ」

 

 

 

利根は自身のカタパルトの不調が作戦に影響を与えている事に悔しさを隠せなかった。

 

 

 

「だけど兄貴、この流れ不味くはないか?」

 

「だが万が一が起きた訳じゃない。此処で焦れば却って敵の思う壺だ」

 

 

 

紀伊は平静を保っている様に見えるが、あのミッドウェー海戦へ向かって流れていく状況に不安が高まっていた。

 

 

 

(流れがあのミッドウェーの戦いと同じように推移している。やはり今からでも流れを変えるべきか?)

 

 

 

紀伊は懐に締まっているトランシーバーに手を伸ばす。

 

 

 

「…………」

 

「どうかしましたカ?」

 

 

一方で吹雪も胸騒ぎが収まらず、落ち着かない様子である。

 

 

「胸騒ぎが止まらないんです。それに息苦しくなって」

 

 

吹雪は胸を押さえる。手には心臓の動きが徐々に早くなっていくのが伝わってくる。

 

 

「大丈夫ですカ?」

 

「………………金剛さん、紀伊さん、尾張さん!私達も先行しましょう!」

 

 

吹雪の言葉に皆が振り向く。

 

 

 

「あの時と同じなんです!翔鶴さんや瑞鶴さんの時に感じたあの嫌な予感が………」

 

「吹雪、お前もそう感じてたか?」

 

「紀伊さんもですか?」

 

「あぁ。もしかしてお前、この海戦の結果を薄々感付いてるんじゃないか?」

 

「…………………分かりません。でも何となくですけど、このままだと赤城さん達が無事じゃ済まない様な気がして」

 

 

 

吹雪の言動に紀伊は同意せざるを得なかった。此処まで不安が高まってしまえば、もう取れる選択肢は1つしか無かった。

 

 

「奥の手を使うか」

 

「え?」

 

 

紀伊の言葉に吹雪が素っ頓狂な声を発し、紀伊はトランシーバーの電源を入れる。

 

 

「こんな事もあろうかとな、長門からは言質をとってる」

 

「一体何を?」

 

「吹雪、お前責任取る覚悟はあるか?」

 

「責任……ですか?」

 

「あぁ。言質をとっていると言ったがこの奥の手を使えば明らかに命令違反になる。それは軍と言う巨大な組織の中に居る身となれば責任は生半可じゃ済まない事になる。下手をすれば逮捕か軍籍剥奪の上に刑務所へ行く事にもなるかもしれん」

 

 

紀伊の言葉に吹雪は一瞬だけ迷ったが、直ぐに迷いを振り切って答えた。

 

 

「私は赤城さんの護衛艦です。たとえ赤城さんに嫌われても私は後悔はしません」

 

「吹雪…」

 

「それに、もし捕まって何らかの処罰が下りたとしても私は大人しくそれを受け入れます」

 

「そうか。金剛、お前はどうする?」

 

 

紀伊は金剛にも問い掛ける。

 

 

 

「2人の覚悟は理解しましタ。Meも付き合うヨ」

 

「金剛さん!?」

 

「ブッキー、今さら仲間外れはnothingネ」

 

「そうじゃの。我が輩も付き合うぞ」

 

「私も同じく」

 

「私もです!北上さんにもしもの事があったら…」

 

 

金剛が同意すると利根、筑摩、大井も声をあげて紀伊の奥の手に賛成する。紀伊は全員の顔を見てからトランシーバーの電源ボタンを押して電源を入れた。

 

 

 

「本当に良いんだな?」

 

「はい」

 

「OK」

 

「俺は元から覚悟は出来てるぜ兄貴」

 

「そうか」

 

 

紀伊は長門に渡してあるもう1つのトランシーバーの周波数の番号を入力し、コールボタンを押した。

 

 

「来た」

 

 

コールが終了し長門側と交信できる状態となり、プレストークボタンを押して話し掛ける。

 

 

「俺だ。万が一が起きそうだ」

 

 

 

紀伊は現状を説明する。

 

 

 

『…………分かった。秘書艦権限で自由行動を許可する』

 

「良いのか?まだ引き返せるが」

 

『大丈夫だ。今私と陸奥もそちらへ向かっている』

 

 

突然の事に紀伊は困惑した。

 

 

「どう言う事だ?」

 

『私も同じ穴の狢と言う事だ。大和との合流は私達に任せて、お前達は赤城達を追え!』

 

「了解した!」

 

 

 

無線の電源を切ると、尾張と吹雪、金剛に指示を出す。

 

 

 

「これより1航戦と2航戦の救援に向かう!全艦、最大戦速!」

 

 

 

 

 

 

 

同時刻………

 

 

 

「敵襲!」

 

 

 

凄地MIで艦載機部隊による奇襲に成功した赤城達は敵からの攻撃を受けていた。

 

 

「赤城さんっ!直上!」

 

 

特に赤城ら空母組は集中的に狙われており、夕立や北上らの護衛も処理が追い付かず、遂に空母組全員が敵の攻撃を受けて被弾した。

 

 

「!?」

 

 

直掩機を出そうとするも、艦載機を射出する弓の弦は今の被弾で切れてしまっており、加賀や蒼龍と飛龍も自身の身を守るのに精一杯で直掩機を上げる余裕は無い。

 

 

「敵機動部隊視認!」

 

 

夕立が指差した方向を見ると、敵機動部隊が姿を表しており赤城達を包囲しつつある。

 

 

「やはり………この事態は避けられない………」

 

 

この事態に赤城は混乱、次々と被弾していく仲間達、流れを変えられなかった自身の無力を痛感する。

 

 

 

「ならば…………」

 

 

赤城は最後の手段として、封鎖していた無線の回線を開いて、予め定められていた符丁を信号発した。

 

 

「間に合うとは思えませんが……せめて他の方達だけでも」

 

 

赤城は自身の犠牲に仲間だけでもこの海域から逃がし、味方に合流させるため救援信号を発したのであった。

 

 

 

「赤城さん!」

 

 

加賀の悲痛な声が赤城に伝わったものの、赤城にはもうそれに応える気力はなく、両手からも力が抜けた。

 

 

「抗えなかった…………運命には………」

 

 

 

 

 

続く




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