自己紹介を終えてから、壇上から降りた紀伊は早速皆から質問攻めにあっていた。
(凄い状況だな)
皆に囲まれ、揉みくちゃにされながらも全員からの質問に応えていく。
「紀伊ってさ、何処の産まれ?」
「それは機密だから答えられないな」
「紀伊さんて、どれくらい強い?」
「実戦だとそこそこ戦果は出してるが自分じゃ強いかどうかは判断できないな。人並みって処かな」
「貴女って戦艦って言ってたけど、もしかして八八艦隊の?」
「いや、少し違うな。ちょっと込み入った事情でね」
「そう」
「ねぇねぇ、紀伊ってさどれくらい早いの?」
「頑張れば30ノットは出せるぞ」
「おっそ~い。島風の勝ちだね」
皆が持ってる個性的な質問に困惑しつつも紀伊は丁寧に答えていく中、2人の艦娘が歩み寄ってきた。
「ちょっと良いか?」
「あぁ」
「私は天龍って言うんだ」
「木曽だ」
「紀伊だ。よろしく頼む」
軽巡洋艦の天龍と、同じく軽巡洋艦の木曽が紀伊と握手を交わす。
「さっき第3水雷戦隊の面々から聞いたんだけどよ、アンタ強いんだってな?」
唐突な質問を投げ掛ける天龍。
「どんな風に聞いたか知らんが、お前達がそう思うならそうなんじゃないか?」
「隠すなよ。見りゃわかる、アンタはとんでもなく強いってな」
眼を見てくる木曽と天龍に紀伊は何かを見透かされるんじゃないかと思った。
「随分と自信あり気に言うじゃないか。根拠は?」
「根拠は無い。だが私らは伊達に深海棲艦と戦っちゃいない。強い奴とそうじゃない奴は匂いで分かるのさ。お前はかなり……いや、相当強い!確信を持って言える!」
武人のような雰囲気を持つ天龍と木曽には紀伊の力を勘で見抜いている。やはり地球世界や新世界で幾度も戦ってきた紀伊の強さを感じ取れる辺りこの2人は同類なのかもしれない。
「今はまだ言えないが時が来たら俺の力でも何でも教えてやるさ。それまで待っててくれるか?」
「絶対だぞ!」
「あぁ」
「よし!じゃあ私らは退散させてもらうぜ」
そう言うと天龍と木曽は引き下がっていった。
その後も紀伊は他の艦娘達と交流を深め、皆が紀伊の人柄を知れた頃、今まで沈黙していた長門がマイクの前に再び立ち上がった。
「交流中だが皆に知らせたい事がある」
その言葉に紀伊も含めた全員が長門に視線を向ける。
「明日行う予定の定期演習の事なんだが、提督からの指示で急遽、紀伊の参加が決まった」
その言葉に紀伊以外の艦娘達がザワめいた。
「おい長門、聞いてないぞ」
「今言っただろ?お前の実力を示してくれない事には、こちらも今後の戦略や作戦が立てられないんだ。それにこれは提督からの命令なんだ」
「随分と急な話だな。で、その定期演習ってのは何をするんだ?」
「定期演習は鎮守府全体の艦娘の練度と戦闘能力を図るため2つの艦隊に分かれて行われるテストみたいなものだ。3ヶ月に1回に行われるのだが、今回は急遽配属となったお前の実力を図りたい」
「準備する時間はあるのか?」
「勿論だ。艦隊編成や演習プログラム作成はこちらで行うから、明日の演習開始前に編成内容を発表するからしっかりと聞いてくれ」
「分かった」
「それでは、明日の定期演習に備え本日はこれにて解散する!各員は宿舎に戻り、休養するように!」
その掛け声で歓迎会は終了し紀伊はそのまま工廠へと戻った。
「お疲れ様。どうだった?」
「歓迎会は上手くいったよ。だが明日の定期演習って奴に俺も急遽参加する事になった」
「やっぱりね。そうなるんじゃないかと思って、貴方の艤装はしっかり整備しておいたから」
夕張が指差した方向には完璧に整備された紀伊の艤装があった。主砲や副砲に速射砲やその他の武装や装備は整備が行き届いており、艤装に施されている海上自衛隊の護衛艦色であるロービジ塗装や自身の艦番号もしっかりと塗装されている。
「此処までしてくれたのか?」
「完璧に整備してこその技術者よ」
「これなら明日の定期演習は問題なさそうだな」
そう言って自身の艤装を撫でる。
「さて、もう寝るか」
「お休み」
そう言うと紀伊は自室へと戻り、布団へと入り眠りに付いた。
続く
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