星になったヒーロー   作:日暮 蛍 

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出動

自宅にてラジオから流れてくる音楽を聴き流しながら黙々と手のひらサイズのぬいぐるみを作っていたアズマ。68個目を作り終えた辺りでラジオの音楽が途切れ緊急ニュースが流れる。

 

『番組の途中ですが、ここで緊急速報です。F市にて桃源団を名乗るテロリストが現れました。警察官やヒーロー達が必死に応戦しておりますがテロリストの進行は止まりません。市民の皆様は速やかに避難をしてください。』

 

物騒な事件だな、と思いながら69個目のぬいぐるみを作ろうと鋏を手に取り

 

『構成員は全員スキンヘッドです!』

「え?」

 

ニュースのアナウンサーの焦りが乗った発言を聞いて手から滑り落ちた。

 

『F市でスキンヘッドを見かけた際は速やかに離れてください。繰り返します。テロリストの特徴はスキンヘッドです!』

 

アズマは落とした鋏に目を向ける事なく近くに置いてあった携帯端末を素早く手に取り電話帳のアプリを開く。通話相手の名前に表示されたのは《F市支部》だ。

 

『はいこちらヒーロー協会F市支部です。ご用件は何でしょうか?』

「こんにちは。ヒーローの凶人です。」

『きょ、凶人?!』

「今すぐそちらの方で暴れている桃源団の位置情報を教えてください。私が始末します。」

 

通話相手の隠しきれない焦りと恐怖が入った声に気にかける事なくアズマは着替えながら通話越しで桃源団の位置情報を確認する。

 

「分かりました。他のヒーローの方々や警察の方々には市民の避難誘導に専念させてください。大丈夫。すぐに仕留めますので。」

『わ、分かりました。』

 

どうにか怒りを抑えて仕事相手に向ける落ち着いた声音で要件を聞き出したアズマは通話を切り携帯端末をしまう。

 

フリルがたくさんついた派手な服。

裏地に星座の刺繍がされた黒いマント。

ヒールレスの厚底靴。

怪人の仮面。

 

いつも通りの凶人というヒーローの姿に着替えたアズマ(凶人)は苛立ちが込もった独り言を呟く。

 

「なんで、よりにもよってスキンヘッド! サイタマ様がテロリストと勘違いされたらどうする。桃源団許すまじ!!」

 

完全なる私怨でテロリストの撲滅を誓う凶人は桃源団がいるF市へと急行した。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「うわーテロリストだああ!!」

「俺はちげーって!」

 

ニュースで桃源団という全員スキンヘッドのテロリストの存在を知ったサイタマは自分と特徴の被っている桃源団を潰す為にやって来たが、町の人々にテロリストと勘違いされてしまっている。

 

「待ってください!」

 

そんな時、サイタマを庇うように現れたのが凶人だ。

 

「この人はテロリストでは」

 

アズマはサイタマにかかっている誤解を解こうとするが

 

「ぎゃあああああ!! 怪人だああああ!」

「うわ本当だ!」

「え?! 怪人?」

「いやあれ多分凶人! ヒーローの! あのマント公式サイトで見た事ある!」

「じゃあ急いで逃げろぉぉ! 凶人がいるって事は凶暴な怪人が近くにいるぞぉ!!」

 

町の人々は凶人の姿を見た途端一目散に逃げていった。

残された凶人は落ち込んだ様子で俯く。

 

「,,.あの。大丈夫?」

 

テロリストよりも恐れられた凶人を見てサイタマは気の毒に思い声をかける。

 

「...はい。慣れてますので。いつもの事なので。」

「ヒーロー、なんだよな。なんで悲鳴をあげられるんだよ。」

「いつもレベルの高い怪人と戦っていますのでそれが原因かと。戦闘に巻き込まれたら死にますからね。」

「いや見た目だろ。そのお面とか怖いし。」

「そうですかね。」

 

凶人(アズマ)はサイタマの前で仮面を外して仮面をまじまじと見る。

 

「あっ! お前この前の。ヒーローだったのか。」

「はい、そうです。一応。」

 

思わぬところで再会したサイタマとアズマ。

アズマとしては推しのヒーローに変なところを見られてしまった為さらに落ち込んでしまった。

 

「落ち込むくらいなら紛らわしい格好すんなよ。」

「でも作った以上使わないと。」

「手作りなのかよ。すげーな。」

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