星になったヒーロー 作:日暮 蛍
「ハンマーヘッドはどこに行った?」
後ろから声がした。
振り返ればいつの間にか黒い装束を着た男が立っていた。
「まだ残党がいたとはな。」
「あっ、違います。この人は桃源団というテロリストではありません。ハンマーヘッドならあっちに」
アズマは男がサイタマの事を桃源団の一員であると勘違いしている事に気がつき誤解を解こうとする。
が、男に聞く気は無い。男はサイタマとアズマに向けてクナイを投げつける。
クナイはアズマの仮面の額部分に刺さり、サイタマは難なく手で受け止める。
「なんだこりゃ?」
サイタマがクナイを手に取った瞬間は男は刀を使ってサイタマを仕留めようとするが、サイタマはこの攻撃も手で止めて刀を握力のみで壊す。
アズマはサイタマを庇うように2人の間に立つ。
「だから違いますって! この人は桃源団とは何にも関係ありません。」
「怪人がテロリストを庇うとはな。」
「いや私人間!」
アズマの言葉を全然信じない男。それどころかアズマの事を怪人だと勘違いしている。
「お前いい加減にしろよ! よく見ろよ!」
「よく見るも何もその頭では何も言い逃れはできないな。」
「いや! ほら! 俺だよ俺! 趣味でヒーローをやってて割と活躍してる」
「お前など知らん。」
「あ、そうすか。」
サイタマは自分はヒーローであると言うが、男に知らないとはっきりと答えられてしまい落ち込んでしまう。
アズマは慰めの言葉をかけようとしたが
「それに。どっちでもいい事だ。」
男から殺気を感じた為警戒を最優先にした。
「は?」
「お前は俺の技を二度も見切った。それが問題だ。俺は忍者の里に生まれ、幼少の頃から技の研鑽を重ねてきた。その技をお前は見切った。許されない事をしたな。」
目の前にいた男の姿が消え、いつの間にかサイタマの背後に立っていた。
「俺のプライドが許さない。お前が誰だろうともう逃すことはできない。」
男が放つ殺気にも背後をとられた事もサイタマは気にした様子がない。
「嘘つけ。お前はただ自分の技を試したいだけだろう?」
なぜそう言えるのか。アズマは疑問に思ったが
「無邪気な笑顔を見りゃわかるぜ。」
サイタマの指摘で男の顔を見て、納得した。
男は口角を吊り上げて心底嬉しそうに笑っていた。
「アズマ。下がってろ。」
「はい。」
そして次の瞬間には男の姿は見えなくなる。
男は常人には捉えきれないほどの速さで林の中を縦横無尽に動いていた。
「どうだ! 見えるか!? この速度にもついてこれるか!!?」
男は己のスピードに自信があり、その自身に見合った実力を持っている。
この速さではまともに自分の姿すら見れないだろうと男はサイタマを挑発する。
「なぁ。」
しかし、サイタマには見えていた。
「帰っていいか?」
男が来る方に首を向けるサイタマを見て驚く男だったが、すぐにサイタマの命を刈り取る事に意識を切り替え足技をサイタマに喰らわせようとする。
しかしサイタマはあっさりとその攻撃をかわした上で
「チェックメイト。」
相手の股間に拳を向けて寸止めをする。
男はそれは反応して動きを止めるが、空中にいた為避けきれずそのまま強打した。
「あ! すまん。」
当たるとは思っていなかったサイタマは心底申し訳なさそうに謝る。
「いや、わざとじゃないんだよ。寸止めしようと思ったら勢いでぶつかっただけで。」
「あの、サイタマさ、ん。聞いてないですあの人。ものすごく痛くて全然聞いてないと思います。だってほら、痙攣しててうずくまってますよあの人。」
「ほんとごめん!!」
「確かこういう時、冷やした方がいいんでしたっけ?」
◆◇◆◇◆
「俺は暗殺から用心棒まで何でも請け負う最強の忍者、音速のソニックだ。」
男、ソニックは名乗った。
「だが仕事はしばらくおあずけだ。お前という好敵手を見つけたからには決着がつくまで鍛錬あるのみ。」
暗殺者が自分の命を付け狙う。
本来なら緊張感のある展開のはずなのだが、サイタマは全くそんな気持ちになれなかった。
「名前を聞いておこう。」
「...サイタマだ。」
「サイタマ! 次に会った時がお前の最後だ! 究極の忍術で確実に仕留める! この音速のソニックがな!」
つい先程までアズマが持っていた飲料水とタオルで患部を冷やし、どうにか立てた今でも痛みが引かない為内股でどうにか耐えているソニックの姿にサイタマは申し訳ないとしか思えなかった。
「ああ! 頑張れよ!」
サイタマはそれしか言えなかった。