星になったヒーロー 作:日暮 蛍
「やはり桃源団を始末したのは音速のソニックでした。ゼニールに雇われていた為暗殺者として仕事をしたようです。」
「なんだその頭痛が痛いみたいな名前の奴は。」
「凄腕の忍者だよ。後で調べたら高額の賞金首だった。実力は折り紙付きってやつだね。」
「そいつが先生の命を狙っているのか。先生の障害になるのなら俺が消すべきか?」
「油断は駄目だよジェノス君。相手は忍者だ。潜伏なんてお手のもの。見つける事すら一苦労だ。」
「厄介だな。」
「いや、厄介なのはお前らだよ。」
家主を差し置いて談義をするアズマとジェノスにサイタマは呆れた様子で声を上げる。
「なんでまた来たんだよ。帰れよ他人なんだから。」
「先生! 俺は強くならなければ」
「うるせええええええ! 俺は重大な問題に気づいてショックを受けている最中だ! 今日は帰ってくれ! 頼むから!」
「重大な問題? 先生ほどの人が抱える重大な問題とはなんですか? 教えてください。」
ジェノスの質問にサイタマは少し悩んだ後、答えた。
「知名度が低い。」
その発言に真っ先に反応したのがアズマだった。
「え?! サイタマ様、間違えた。サイタマさんにも承認欲求とかあったのですか?!」
「あるよそりゃあ! 悪いか!」
「いいえ全く! 全然! ただ意外だなぁと思っただけです。」
そこでアズマは首を傾げた。
「だったら何故ヒーロー協会に入っていないのですか?」
「,..ヒーロー協会?」
「はい。あそこ、マスコミとの繋がりがありますからヒーロー協会に所属していない自警団とか個人で怪人を倒している人達に対しては露骨に報道を避けますよ。」
「アズマ。」
「はい。なんでしょうか。」
「そのヒーロー協会って、なんだ?」
サイタマの問いかけにアズマの思考が一瞬停止する。
「...えっと。もしかして、ご存知では、なかったのですか?」
「うん。今初めて知った。」
それを聞いてアズマは頭を抱えて項垂れた。
◆◇◆◇◆
「以上がヒーロー協会の設立までの経緯です。先生。」
「へー。こんな感じなのか。」
「3年前に設立されたそうでプロのヒーローが出てきたのもこの頃です。」
「全然知らなかったな。」
アズマの持つ携帯端末とジェノスの補足もあってヒーロー協会についての情報を得たサイタマは携帯端末に表示されている公式サイトを興味津々で見ていた。
「ランキングとかもあるんだな。アズマは何位だっけ? えーと。名前、きょ、きょう、凶作だっけ?」
「凶人です。先生。」
「凶人か。...2位か! すげーなアズマ。」
公式サイトからアズマのヒーロー名を検索してランキングの順位を見たサイタマはあえて明るい声を上げる。
「だからさ、元気出せよアズマ。」
理由は部屋の隅で膝を抱えて落ち込んでいるアズマに気を遣っているからだ。
「...すみません気を使わせてしまい。結構宣伝してたから知ってるとばかりに、すみません私の勝手な思い込みでサイタマ様の活躍の場を、てあああああまた様づけしてしまったああああ。」
「ああもういいから! 気にしてねぇから! もう好きに呼んで良いから立ち直れって!」
自分よりも落ち込んでいる様子のアズマを見て色々と吹っ切れたサイタマはヒーロー協会について詳しく知っているであろうアズマに質問をする。
「ところでさ、このヒーロー協会に入るにはどうすればいいんだ?」
サイタマの言葉にアズマは勢いよく顔を上げてサイタマの方を見る。
その勢いにサイタマは少し驚く。
「入ってくれるのですか?!」
「お、おう。」
「すぐに確認しますね! 少々お待ちを!」
途端に機嫌が良くなったアズマは立ち上がり、ふとジェノスに視線を向ける。
「ジェノス君はどうする?」
「俺はいい。」
「そっか。残念だけど仕方がないね。」
ジェノスはヒーロー協会に入る気はないようだ。
「登録しようぜ! 一緒に登録してくれたら弟子にしてやるから!」
「いきましょう!」
が、サイタマからの提案でジェノスはヒーロー協会に入る気になった。
「やったぁ! じゃあ2人の分の資料用意しますのでちょっと待っててくださいね。すぐに戻りますから。」
そう言ってアズマは部屋から出ようとして、すぐに戻って来た。
「忘れるところでした! サイタマ様。その前に本日はある許可を得たくてここにやって来ました。」
「え。何?」
「その、実は私、サイタマ様の観察だけでは飽き足らずスケッチをしたり、グッズを自作したりとしておりまして、その。今後ともそのような事をしても大丈夫でしょうか?」
「グッズ?!」
「あっ! お嫌ならすぐにでもやめますので!」
指をもじもじと突き合わせて恥ずかしそうに告げられたアズマの言葉にサイタマは驚くが、今まで実害は無かったし別にいっかと考えた。それと、小っ恥ずかしくもあったがヒーローとして認知されてちょっぴり嬉しかった。
「まぁ、他の奴らの迷惑にならなければ別に良いぞ。」
「ありがとうございます! ではこれ、お渡ししますね。」
そう言ってアズマはパンパンに膨らんだ茶封筒を懐から取り出してサイタマに差し出した。
「なんだこれ?」
サイタマが中を開けてみると
「肖像権費です。」
札束だった。
「...は?」
「では今度こそ行って来ます!」
「待て待て待て! ちょっ、こんなえらいモン残して行くなぁ!!」
この時のサイタマは知らなかった。後に弟子となるジェノスからも部屋代として札束を貰う事になるのを。