星になったヒーロー   作:日暮 蛍 

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サイタマとジェノスがヒーローになってから1週間が経とうとしていた。

その間起きた大きな事件はサイタマをつけ狙う暗殺者ソニックの襲来だけ。そのソニックもサイタマの手によってあっさりと倒されて監獄送りとなった。それからはまだ大きな事件は起きていない。

 

つまり、アズマは暇を持て余していた。

 

「とはいえ、作りすぎた。」

 

アズマの目の前には大きなカゴには大量のぬいぐるみが山盛りに入っている。全てアズマが作った物だ。

 

「どうしよこれ。...服に縫い付けようかな。」

 

作ったはいいが使い道は全然考えてなかったアズマはとりあえずヒーロー活動用の服に縫い付けようかなと考えクローゼットを開けて中の服を確認する。

 

「んー。新しく作ろ。」

 

フリル、レース、リボン。

様々な装飾でゴテゴテの服が並ぶクローゼットの扉を閉めて新しい服を作る事を決めたアズマは布が入っているタンスを開けて、またすぐに閉めた。

 

「でも休憩。散歩行こ。」

 

1人だと独り言が多くなる。

アズマはシャツとズボンといった気軽な服装で出かけた。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

アズマが住んでいるのはZ市にあるゴーストタウンの商店町にある服屋だ。元の持ち主と交渉して破格の値段で買い取ったアズマは奥の居住スペースを改装して住み着いている。

 

人はいなくなり怪人が跋扈する町の中をアズマはスケッチブックと鉛筆を手にして1人で歩き時折立ち止まって町の様子をスケッチしていた。

 

「おい。」

 

スケッチをしている最中、アズマに声をかけてきたのは全身に昆布のようなものが生えている怪人だった。

 

「はい。」

 

怪人が目の前にいるにも関わらずアズマは逃げる事も戦闘体制を取る事もせずに怪人に返事を返す。

 

「ここがZ市のゴーストタウンか?」

「そうですよ。」

「噂のわりにはなんにもねーじゃねぇか。」

「噂?」

「めちゃくちゃ強い怪人が集まってるって噂があるんだよ。だけどそれらしい気配はねーし。」

 

そう言いながら怪人は体の一部である昆布を蠢かせ鞭のようにしならせてアズマを襲う。

その攻撃をアズマは避ける事なくまともに喰らう。

 

「でも人間が住んでるなら噂は、あれ?」

 

コンクリートなど容易く砕けるほどの強烈な一撃を喰らってもなおアズマは平然とした様子で怪人、昆布インフィニティの姿をスケッチしていた。

 

「ああその噂ですか。怪人の間では有名だそうですね。」

 

すごい速さで昆布インフィニティの姿をスケッチブックの1ページに書き上げたアズマは顔を上げて昆布インフィニティと目線を合わせる。

 

「ある怪人が組織を作って強い怪人を集めて社会転覆を狙っている、という噂。」

 

スケッチブックと鉛筆をどういう原理か服の中にしまい込んだアズマは代わりにマントを取り出す。

 

「それで? その噂を聞いてここに来たという事はあなた、人に害を為す怪人という事ですよね。」

 

アズマはマントを頭から被り全身を隠す。

 

「なら殺さないと。」

 

そしてマントを取った瞬間にはアズマの姿が変わっていた。

ヒールレスの厚底の靴。

刺繍が多く入った派手な服。

そして裏地が星座の刺繍が入った黒いマント。

そしてどこからか取り出した怪人を模した仮面。

 

「だって、ヒーローと怪人は殺し合うものですよね。」

 

そう言ってアズマは昆布インフィニティに向けて恭しく礼をする。

 

「初めましてこんにちは。私、A級2位の凶人と申します。こんな見た目ですが、一応ヒーローです。」

「ふーん。」

 

昆布インフィニティは全身の昆布をうねらせる。

 

「じゃああんたを殺せば有名になれるって事か。」

「そうですね。是非とも」

 

話しながらアズマは仮面をつけ、凶人となり

 

「殺して晒し首にでもしてください。」

 

ヒーローとして怪人と相対する。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

A市にあるヒーロー協会本部にて協会職員の幹部達が定例会議をしていた。今は町に異変がないかというヒーローからの調査の報告を確認している。

いくつかの町の報告がされ、次に挙げられたのはZ市だ。

 

「次に、Z市。担当はA級凶人。」

 

その名前を出た瞬間、会議室の空気が重くなった。

 

「凶人からの報告では例の噂を聞きつけて外からやって来る怪人が増えているようです。今回も資料として怪人の絵が送られてきました。凶人からSNSにあげる許可を求められていますが、どうしますか?」

「...構わん。」

 

ざっと絵を見て特に問題は無さそうだと判断した幹部は許可を出す。

 

「例の噂の方の調査はどうなっている?」

「いくつか地下に繋がる出入り口を見つけてはいますが、途中で道が潰れて入れず探索は難航しているようです。」

「その報告、信じていいのか? あの凶人だぞ。それに噂の出所は怪人の証言からだし、怪人が組織を結成しているなんてとてもじゃないが信じられん。」

「もちろん完全に信じるわけにはいきませんが、ゴーストタウンに大量の怪人が現れているのは事実です。何度か他のヒーローに向かわせても大怪我を負っただけで何の成果が得られませんでした。現状、Z市のゴーストタウンの調査を積極的に引き受けてくれるのは凶人しかいません。」

「それは、そうだが。」

「でも、凶人はなぁ。真面目に仕事はしてくれるし、成果も出してくれるが、言動がアレだからなぁ。」

「分かっています。ヒーローになった動機も含めて凶人はかなり危うい人物です。今後とも警戒を強めましょう。」

 

 

◆◇◆◇

 

 

「あっ! サイタマ様! お買い物帰りですか?」

「おう。だけど昆布出汁買い忘れた。その背負ってるの何?」

「怪人の死体です。腐る前に埋めようと運んでいます。」

「へー。...昆布の部分貰ってもいい?」

「勿論です! 今引っこ抜きますね。」

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