星になったヒーロー 作:日暮 蛍
ゴーストタウンにある公園のベンチにぼんやりと座っているアズマは携帯端末をいじっていた。
「342位かぁ。まだ先は長いなぁ。」
携帯端末に表示されているのはヒーロー名簿でありそこからヒーローの名前や順位が確認出来る。今アズマが見ているのはC級ヒーローのランキングでその中にはサイタマの名前が載っている。最下位から順位は上がっているがS級ヒーローまではまだまだ遠い。
携帯端末をしまい家に帰ろうとした立ち上がった時、遠くからサイレンの音が鳴った。
「...隕石?!」
どうにか聞き取れたものは巨大な隕石がZ市に落ちるというもの。急いで携帯端末を使って調べれば正式にここZ市が壊滅するほどの巨大な隕石が落下する事が報道されていた。落ちるまでの時間は30分ほど。とてもではないが全ての市民の避難は間に合わない。
アズマは空を見上げる。
「隕石、かぁ。」
自身に何が出来るか分からないが、とりあえず行ってみよう。
そう考えたアズマはとりあえずニュースで報じられている隕石が落ちて来ると予想されている場所へと向かって行った。
◆◇◆◇◆
「大きい。」
ヒーローの姿に着替えた
「タツマキは来てないのかな。」
ぼやきながらも自分に出来る事はしようと武器を取り出そうとした時
「アズマか?」
「サイタマ様!」
サイタマがやって来た。
「お前も巨大隕石をぶっ壊そうとしてるのか?」
「はい。でもサイタマがいれば万事、かい、けつ。」
そう言いながらアズマは想像した。サイタマが隕石を破壊した場合、どうなるのか。
砕けて細かくなっても元が巨大な隕石ではまだまだ大きい。欠片が町に落ちれば大きな被害が出る。隕石がそのまま落ちてくるよりかはマシではあるが、被害は少ない方がいい。
「どうした?」
「...サイタマ様。隕石の欠片の対処は私がやっても大丈夫でしょうか?」
巨人を一撃で倒した姿を目撃したアズマはサイタマが巨大隕石を砕けないとは微塵も思っていない。
差し出がましいかな? とは思いながらも今のサイタマは同じ組織に所属しているプロヒーロー。協力するのは何も変な事ではない。そう自分に言い聞かせてアズマは後始末の役目を申し出る。
「いいぞ。任せた。」
「あ、ありがとうございます!」
許可を出してくれただけではなく、任せたと言われた。
その事実にアズマは歓喜し、気合が入る。
「必ずや期待に沿えるようにします!」
「よし。じゃあ行くか。」
「はい!」
◆◇◆◇◆
ヒーロー協会から隕石の破壊を依頼されたジェノスは単独で隕石を破壊しようとしていた。
S級ヒーローのメタルナイトもやって来たが、あくまで自身が作った新兵器の実験に来ただけでジェノスと協力する気も隕石を本気で破壊しようとは考えておらず、そんなメタルナイトの兵器も通用しなかった。
様子を見に来たS級ヒーローのバングの助言をもとにフルパワーの焼却砲を隕石に向けて放つが効果は無し。
ほとんどのエネルギーを使いジェノスはその場で膝をつく。
「残り9秒。」
それはジェノスが予測した隕石がZ市に落ちるまでの時間だ。
「逃げるんだバングさん。」
万策は尽きた。
ジェノスが諦めた時
「じいさん。こいつ任せたぞ。」
「だ! 誰じゃね君は?」
「俺はヒーローをやっている者だ。避難してなじいさん。」
サイタマは脚力のみで隕石まで飛び上がり
「俺の町に落ちてんじゃねえ!!!」
パンチのみで巨大隕石を砕いた。
「砕きおった! 信じられん!」
目の前で信じられない事が起きて目を見開くバング。
しかしこのままでは隕石の欠片が町全体に降りかかる。せめて動けないジェノスは守ろうと身構えた時、バングはまたもや信じられないものを目撃する。
「ん?!」
隕石の欠片が次々と粉々になっていく。瞬く間に無数の隕石の欠片が砂粒のように細かく斬り刻まれていく。
その妙技を見てバングは知人のヒーローの姿を思い浮かべたが、遠くから見えたその派手な姿を見て正体が分かった。
「まさか、凶人か?!」
正解。
凶人は今、両手に刀を持って隕石の欠片を粉微塵に斬り刻んでいる。仮面の下で焦った表情をしながらもひたすらに手を動かし、隕石の欠片を足の踏み場にして踏み砕きながら縦横無尽に駆け回り何本か刀を折ってしまうがとにかく隕石の欠片を粉々にしていく。
とにかくひたすらに斬り続けて、あと少しで地面に接触してしまう隕石の欠片を最後に斬った。
「よし!」
これで町への被害を減らす事が出来た。ほっと一安心した凶人は
「あう!!!」
着地に失敗し派手に転んで顔を地面に打ちつけた。
そのせいで仮面が割れた。
「...あー。もう。」
倒れたアズマは寝転がり顔に両手を当てて
「サイタマ様、隕石までパンチ一発で! カッコ良すぎる〜!!!」
サイタマが隕石を破壊した瞬間を思い出して悶絶していた。
「あの素晴らしき勇姿! 記憶が薄れないうちに描かないと!!」
それどころか避難していて誰もいないとはいえ道路の真ん中で片目を輝かせながらスケッチを始めてしまった。