星になったヒーロー 作:日暮 蛍
アズマがサイタマと出会ったのは2年半前だ。
アズマがヒーローとして怪人と戦っている時の事だ。
「ひっいやっはぁぁぁ! 俺様は」
怪人の名乗りの途中で胸に包丁を突き刺す。念入りに何度も。
「はぁ。」
息が途絶えた怪人を見下ろしてため息を吐くアズマ。そんなアズマの背後から新たな怪人が突進してきた。
「隙ありゃあああああっ!」
アズマは心を乱す事なく包丁を持ち直し後ろを振り返る。
そこで見たのはアズマに襲い掛かろうとしてきた怪人を殴るジャージを着た男の姿。必死の形相で男はアズマを助ける為に割り込んできたのだ。
「この野郎!」
殴られた事に怒った怪人は男を殴り飛ばそうとする。が、その腕がアズマの持つ包丁によって切り落とされる。
「はえ?」
腕を切り落とされて放心する怪人の脳天に向けてアズマは包丁で刺した。
怪人を倒した後、アズマは男の呼吸が整ったのを見て近づく。
「なぜ私を助けたんですか?」
ヒーローになってからのアズマは誰かに助けられた事がない。わざわざ危険を顧みずに自分を助けに来た男の事がアズマはほんの少し気になってしまった。
「なぜって。ヒーローが人を助けるのに理由なんていらないだろ。」
真っ直ぐな目ではっきりと言う男の姿にアズマは惚ける。
「あの、お名前を聞いてもいいですか?」
「俺はサイタマだ。」
サイタマ。
その名前をアズマは脳髄に刻み込んだ。
サイタマが立ち去った後、アズマは急いでサイタマの事を調べた。しかしいくら調べてもサイタマの情報は出てこなかった。
ヒーローと名乗る一般人だと結論づけたが、そう思ってもアズマの頭の中でサイタマの事が離れなかった。日常のほとんどサイタマの事を考えてしまうほどだった。
そこでアズマはサイタマの事を陰からこっそりと見る事にした。
日中はサイタマを探し、サイタマを見つければ見つからないように陰から観察をした。
サイタマが怪人相手にボロボロになって辛勝した瞬間の姿を目撃した時は小さくガッツポーズをした。
サイタマが外でトレーニングしている姿をスケッチするようになった。
気がつけばアズマの生活の中心にサイタマがいた。
すっかりとサイタマ個人にのめり込んでいる自分に驚いたアズマだったが、悪い気はしなかった。むしろサイタマの存在を知ってからは生き生きと動けるようになった。気分は上がり気持ちに余裕ができて仕事の効率が上がり楽しく趣味をし世界が明るく見えた。
「これが、推し活!」
アズマはますますサイタマを熱心に追いかけていき気づかれないよう観察をした。
日に日に高まっていくサイタマへの想い。抑えきれず、しかしサイタマ本人に迷惑をかけるわけにはいかない。
この気持ちをどうするべきかも考えに考えて、アズマはある結論に達した。
そうだ、ファンレターを書こう。
早速文房具屋でレターセットを買ったアズマは何度も何度も書き直して、ようやく納得のいく手紙を書いた後に勇気を出してそれをサイタマに届けに行った。本当はサイタマがいない間にこっそりと置いていくつもりだったがもたもたしている間にサイタマと出会ってしまいそのまま勢いで手紙を渡した。
これがきっかけでアズマはサイタマと深く関わっていく事になるが、この時のアズマはまだ知らない。