星になったヒーロー 作:日暮 蛍
「深海王! 深海王! いませんかー!!!」
現在凶人は大雨の中J市の海辺で海人族を名乗る怪人の集団と戦っていた。
「深海王! あなたの仲間を殺してますよー! いないんですか深海王!!」
アズマがやたらと呼んでいる深海王というのは海人族の長の名前だ。海人族がその名を言っていた為アズマは深海王を誘き寄せようとひたすら叫んでいるが深海王らしき怪人は全くやって来ない。
「こいつ、同胞を殺すだけでなく深海王様を侮辱するつもりか!」
「下等生物め! 殺して死体をその辺に打ち捨ててやる!」
それどころか次々とやって来る海人族の怒りを買うだけ。囲まれている状況だがアズマはやって来る端から様々な武器で海人族の命を奪いとる。
斧。
大剣。
槍。
派手な服の下から明らかに許容外の武器を取り出して海人族を叩き斬って首を跳ね飛ばして心臓を穿つ。
何度も何度もそれの繰り返し。
気がつけば雨が止んだと同時に最後の1体を殺害していた。
「,..あれ? 終わり?」
辺りを見回してもあるのは大量の海人族の死体のみ。動いているのは凶人だけ。
状況を確認しようと凶人は携帯端末を取り出して協会に連絡する。
「もしもし。海人族について何か情報はありますか?」
『はい。先ほど深海王を名乗る海人族の長の討伐が確認されました。』
「えっ。やったのは誰ですか?」
『えぇっと。最近入った新人の、あっサイタマというヒーローですね。』
「本当ですか!」
『え、えぇ。』
凶人から嬉しそうな声が聞こえてきたことで電話相手のオペレーターは戸惑った声を出す。
「それなら後始末ですね。J市の海辺で海人族を始末したので死体の処理をお願いします。」
『分かりました。すぐに向かわせます。』
「よろしくお願いします。」
電話を切った後、アズマは仮面の下で頰を緩ませる。
「サイタマ様が深海王を倒した。これならB級に上がれる! んふふふ。」
雨の水分を吸って重くなった衣装をものともせずにアズマは軽やかにスキップをして帰っていった。
◆◇◆◇◆
後日。
「酷いよぉ。酷いよぉぉぉ。」
アズマは嘆いていた。片目からぼろぼろと涙をこぼしている。
「ジェノス君何にも悪くないじゃん!! 頑張って市民守ったんだよ!! 他のヒーロー達もさぁ!!」
「落ち着けアズマ。先生が決めた事だ。俺達が口を挟む事はしてはいけない。」
「でも! でもぉぉぉ!!」
深海王の一件でサイタマの世間での評価がかなり下がってしまった。
原因は深海王と戦い奮闘虚しく倒れてしまったジェノスや他のヒーロー達を庇ってサイタマが汚名を被ってしまったからだ。
以前の隕石の騒動の件もあってサイタマは世間からインチキヒーローとして大衆から誹謗中傷を受けている。
アズマの家にやって来たジェノスから一部始終を聞いたアズマは憤っていた。
「どうしてその場にいなかったぁ私ぃ!」
「だから落ち着け。」
「だってぇ! だってぇ!!」
ひとしきり憤って泣いた後、ようやく落ち着いたアズマはすっかりぬるくなってしまった茶を一口飲んだ。
「ごめんねジェノス君。わざわざ来てくれたのに。」
「いや気にするな。お前にも情報を共有すべきだと判断したまでだ。ここまで取り乱すとは思っていなかったがな。」
「取り乱すよ。推しと友達が酷い事を言われたんだよ。」
アズマの言葉にジェノスの気分が少し軽くなる。
「サイタマ先生は気にした様子はないが、今後は誹謗中傷の手紙は見つけしたい燃やすつもりだ。」
「うん。その方がいいよ。見て気分のいいものじゃないだろうし。でも私の手紙は燃やさないでね。」
「もちろんだ。」
敬愛するサイタマを少しでも悪意から守る為にと結束を強めるアズマとジェノス。
それから数時間ぶっ通しでサイタマがいかに素晴らしいヒーローか語り合った。