星になったヒーロー 作:日暮 蛍
流水岩砕拳。
S級ヒーローシルバーファングことバングが生み出した拳法だ。
現在サイタマ、ジェノス、アズマはバングの道場に招待され流水岩砕拳がどんなものなのか見学していた。
「まぁこんな感じじゃ。どうじゃ? やってみんか? サイタマ君やジェノス君なら勘が良さそうだからすぐ身につけることができるかもしれんぞ?」
「面白いもん見せてくれるっつーからわざわざ来たのに勧誘かよジイサン。興味ねーよ。ジェノスお前やっとけ。」
「いや俺も遠慮します。俺が求めるものは護身術ではなく絶対的な破壊力です。」
「貴様ら! 流水岩砕拳を愚弄するか! バング先生の一番弟子チャランコ参る!」
バングの誘いを断るサイタマとジェノスの態度に怒ったチャランコが勝負を挑んできた。
「アズマ君はどうかな? 護身術として習ってもいいんじゃよ。」
「すみません。私、拳法といった武術の才能は全然無いのでお断りさせていただきます。」
「ぐぇっ参った!」
「えっもう?!」
一番弟子があっさりとジェノスにやられてしまった事にアズマは驚く。
「これが一番弟子? バング。お前の道場は実力者揃いと聞いていたんだが。」
「ん。まぁ、弟子の1人が暴れおっての。実力派の弟子達を全て再起不能にしてしまったせいで他の門下生も恐れて辞めてしもうたわ。」
「たった1人で?!」
「そいつ、強いのか? 名前は?」
「...ガロウ。当時一番弟子じゃったが、ワシがボコボコにして破門にしてやったわ。」
ガロウの話をしている時、サイタマ達に背を向けているせいで表情は分からなかったが、一瞬アズマはバングの背中から哀愁を感じとった。
「ジイサン強いんだな。」
「貴様! あのヒーローシルバーファングを知らないのか!? S級ヒーローランキング3位、シルバーファング!!! 流水の動きで相手を翻弄し激流の如き一撃をもって巨石をも粉砕する武術の達人!」
サイタマのバングに対する態度が気に食わないチャランコは詰め寄る。
「お前、最近B級ヒーローなったばかりのヒヨッコらしいじゃないか!? バング先生をなめてると痛い目あうぞ!」
「チャランコ! 恥をかかせるな! ワシよりサイタマ君の方が何倍も強いわ!」
バングがチャランコを叱った時
「シルバーファング様!」
入口の方の扉が勢いよく開かれバングのヒーロー名を呼ぶ声がした。
「ヒーロー協会の者です!」
そこにいたのは道場に続く長く険しい階段を上って息絶え絶えのヒーロー協会の職員が体力の限界からかその場で座り込みながらもここに来た目的を果たそうとする。
「この度、S級ヒーローに非常招集がかけられました! 協会本部まで御足労願います! やや! そこにいるのはジェノス様ですね!? S級は全員集合せよとのことですのでジェノス様にも来ていただきます!」
「S級ヒーロー全員!?」
「レベル竜が来たか?」
「やれやれ。」
S級ヒーロー全員が集合しなければならない事態が発生した。同行を断る理由はジェノスとバングにはない。
「チャランコ。留守を頼むぞ。」
「お気を付けて!」
「S級が呼ばれるということは先生の力も必要になるかもしれない。一緒に来てくれますか?」
「いいぜ暇だから。アズマも来るか?」
「いえ。今回は私は遠慮させていただきます。」
「そうか。わかった。
てっきりついて来ると思っていたサイタマだったが、申し訳なさそうで残念そうな顔で断りを入れたアズマを見て用事があるんだろうと考えジェノスとバングと共にヒーロー協会本部へと向かって行った。
◆◇◆◇◆
「行きたかったぁ。」
A市にあるビルの屋上でアズマはぼやいていた。
サイタマ達と別れてバングの道場へと続く階段を下りたアズマはその場にとどまりうろうろと歩き回った後、結局A市までやって来た。
「でも私、特にS級ヒーローに嫌われてるんだよなぁ。行ったらサイタマ様とジェノス君に迷惑かけちゃう。我慢我慢。」
屋上から見えるヒーロー協会本部を未練がましく眺めていると影が差し込んできた。天気は晴れているのにどうしたのだろうか、雨でも降るのかと思い見上げると
「...え?」
巨大な戦艦が空高く飛んでいた。
そして、何の前触れもなく戦艦から大量のミサイルがA市に向かって落ちた。