星になったヒーロー 作:日暮 蛍
これはまだアズマにヒーローネームがなかった頃の話だ。
「特徴が欲しい?」
『はい。そうです。』
アズマはヒーロー協会の職員から電話越しでそんな事を言われてしまった。
「特徴ならいっぱいあると思うんですけど。」
『特徴がありすぎて困るんですよ。だってアズマさん、いつも違う服じゃないですか。フリルがたくさんついてるやつとか、厳つい刺繍が入ったジャケットを着てたりとか。特徴がころころ変わってヒーローネームがつけられないんですよ。』
「はぁ、そうですか。」
『それに、アズマさん怪人の仮面つけてるじゃないですか。あれのせいであなたの事を怪人と間違えるってクレームが来るんですよ。ヒーロー側からも間違えて攻撃しそうになるからなんとかしてくれって何度も言われたんですよ。』
「はぁ、そうですか。」
『ですからなにか、こう。目印になるようなものをつけてほしいんです。なんとかなりませんか?』
「何でもいいんですか?」
『公共の場に出せるものであれば大丈夫です。』
「了解です。じゃあ何か考えておきます。決めたらメールで写真送ればいいですかね?」
『それでお願いします。』
電話を切った後、アズマは考えた。
「どうしよ。」
アズマはいつも服を作る時その時の気分次第の為さほどこだわりは無かった。だから何かを決めろと言われると少し困ってしまうのだ。
『本日の素敵デートスポットはD市にあるプラネタリウムです。例え土砂降りでも満天の星空が眺められるこの場所の魅力をお伝えします。』
「...星。」
つけっぱなしのラジオ番組を聞いてアズマの頭の中で星が思い浮かび
「...ヒーロー。」
次に思い浮かんだのは推しであるサイタマの後ろ姿。真っ白なマントが印象的だ。
「...よし。」
頭の中でイメージが固まったアズマは早速スケッチブックを取り出しデザインに起こした。
◆◇◆◇◆
『アズマさんメール見ましたよ。目印となるあのマント、いいですねー。あれなら良い特徴になりますよ。』
「じゃあ今後あれをつけますね。」
『よろしくお願いします。公式のホームページにも載せますので後で確認してください。それでは。』
電話を切り、改めてトルソーにかけたマントを眺める。
黒いマントの裏地には様々な星座の金色の糸の刺繍が入っている。
白にはしなかった。
それをつけるに自分が相応しいとは思えなかったからだ。
「私には似合わない。」
だから黒くて派手なのにした。
理由はそれだけだ。
後日、ヒーロー協会の職員の言う通りアズマのマントの事が載った。
もしもこのマントを見かけたらそれはヒーローです! 攻撃してはいけません!
という紹介文と共にマントの写真が載せられていた。
熊が出没する地域によく見られる注意喚起のポスターのような紹介の仕方にアズマはちょっぴり傷ついた。