星になったヒーロー 作:日暮 蛍
「これで最後。」
スケッチブックを棚にしまい片付けを終わらせたアズマは窓から外の景色を眺める。
「広いなぁ」
現在、アズマはヒーロー協会本部の住宅エリアの内の一室にいた。
A級以上のヒーローであれば家賃無しで住める為アズマは趣味の為の部屋として借りてスケッチブックや自作のグッズをここまで運んできた。
Z市のゴーストタウンの方の住居を引き払ったわけではない。今後もあそこで生活する予定であり、この部屋は趣味を楽しむ為の部屋として時々訪れる予定だ。
荷解きを終えたアズマは窓からヒーロー協会本部の様子をぼんやりと眺めていると携帯端末から着信音が鳴り響いた。
緊急用に設定したアラーム音だ。
アズマはすぐに携帯端末を取り出して通話に出る。
「もしもし凶人です。...了解。すぐ行きます。」
協会本部の内部に招かれた悪漢が暴れている。
どうしてそんな事になったのか聞きたかったが緊急事態の為アズマは凶人の姿に着替え現場へと急行した。
◆◇◆◇◆
「...酷いな。」
凶人が現場に着いた頃には犯人は逃走しており、部屋は犠牲者達の返り血で汚れていた。部屋の至る所に人が倒れており、その中にはヒーローもいる。
A級5位重戦車フンドシ。
A級6位ブルーファイア。
A級7位テジナーマン。
3人共戦闘力の高いヒーローなのだが、全員再起不能だ。
凶人はこの中で意識がある人物に近づいて話しかけた。
「シッチ。大丈夫ですか?」
恐怖から頭を抱えてうずくまっていた協会職員の幹部であるシッチの目線に合わせるようにしゃがんだ。
「きょ、凶人か。」
「はい。医療班への連絡は済ませたんですか?」
「救援と共に連絡は済ませてある。」
「ならもうすぐ来ますね。ここは血の臭いが酷い。一旦部屋の外に出ましょう。立てますか?」
差し伸べられた凶人の手をシッチは恐る恐る取りどうにか立ち上がった。
「何があったか、話せますか?」
「あぁ。むしろ聞いてくれ。私は、とんでもない奴をここに招き入れてしまった。」
シッチの恐怖と焦りが混ざった表情。
倒されたヒーロー。
ただ事ではないと話を聞く前に気がついた凶人はひとまずシッチを落ち着かせる為に別室へと案内した。
◆◇◆◇◆
「ガロウ。そう名乗ってたんですね。」
「そうだ。」
怪我人が治療の為に運ばれていくのを確認し、落ち着きを取り戻したシッチからあの部屋で何が起きたのか一部始終を聞かされた。
「怪人、ねえ。」
部屋の惨状を作り出した犯人の名前はガロウ。動機は怪人としての強さを見せつける為、だそうだ。
「この事は公表するつもりで?」
「もちろんだ。ヒーロー達にガロウの事を伝え注意を促す。奴はA級上位のヒーローを圧倒的な力で倒した危険な奴だ。」
「真剣に聞いてくれるといいのですがね。」
「他の幹部とも話し合って早急な対策を立てる。君も充分注意してくれ。」
「はい。ところで、聞いた特徴からそのガロウの似顔絵を描いたのですが、合ってますかね?」
話を聞きながら描いた絵を見せられたシッチをじっくりと見た後、頷いた。
「ではこれを参考に注意させていただきます。対策の為にここで失礼させていただきます。」
凶人は紙をしまい部屋から出ていった。
シッチは凶人がいなくなった後、大きく息を吐き眉間の皺をほぐすように指を当てる。
「凶人。平時はまともなのだがなぁ。」