星になったヒーロー 作:日暮 蛍
「このクッキーの詰め合わせをください。」
デパートに赴き地下の食品売り場で手土産用のクッキーを買ったアズマは紙袋を持ってサイタマの家に向かっていた。
訪問理由はヒーロー協会本部で暴れた自称怪人ガロウについてだ。
すぐにガロウの事は公表され情報に敏感なヒーロー達の耳に入るだろうが、サイタマはそうではない可能性が高いと考えたアズマはジェノスにこれから訪問する事を携帯端末を通してメールを送りこうして手土産を持参してサイタマの家に向かっていた。
そしてサイタマの家に向かう途中、とある人物と出会った。
「キング?」
S級7位のヒーローであり史上最強の称号を持つ男、キングがサイタマの住むアパートの近くにいた為思わず声をかけてしまった。
「あれ。ここに人? サイタマ氏の友達?」
「と、友達!? いえいえそんなとんでもない! 私はただの、その。サイタマ様のファンの1人です。」
「そ、そう。」
「キングはどうしてここに?」
「えっと。サイタマ氏に用があってここに来たんだ。」
「私もです。一緒に行きましょう。」
「えっうん。」
アズマから伝わる熱量に少し尻込みするが、自身に攻撃的でもキングのファンのようにグイグイ来るわけでもないのでキングはとりあえずアズマと共にサイタマの家に訪問する事になった。
インターフォンを鳴らせばすぐにジェノスが出迎える。
「アズマ、とキング!? どうしてここに。」
「サイタマ氏が俺のゲーム機を持って帰っちゃったかもしれないから返しにもらいに来たんだ。」
「私はメールでも書いてたけど話があってここに来たんだ。」
「メール? ...本当だ。すまない気が付かなかった。」
中に入りまずキングがサイタマに声をかけた。
「お〜いサイタマ氏! もしかして俺のゲーム持って帰ってない?」
「お邪魔しますサイタマ様。...ん?」
続いてアズマも部屋に入り、そこでもう1人来客の姿を確認した。
「地獄のフブキ? どうしてここに?」
「そいつは先生を潰そうとして返り討ちにあったんだが慈悲深い先生が話を聞く為に部屋に入れたんだ。」
「あー。新人潰しか。まぁサイタマ様がいいならとやかく言う気はないよ。あっこれお土産のクッキー。」
「感謝する。そこに座れ。茶を淹れよう。」
ジェノスにクッキーの入った紙袋を渡したアズマはジェノスに促され座る。近くにフブキがいた為とりあえず名乗る事にした。
「はじめましてこんにちはフブキ。私はアズマといいます。」
「ど、どうも。」
B級1位のヒーロー地獄のフブキことフブキは突然のS級ヒーローの来訪に驚いていたが、話しかけてきたアズマの正体に気がついていない為かすこし落ち着きを取り戻した。
「それでアズマ。要件はなんだ? メールでは至急伝えたい事があるとしか書かれてなかったが。」
アズマは一瞬フブキの方を見て、まぁいいやと判断してこの場で話す事を決めた。
「実は今日協会本部が襲撃されたんだ。」
「なんですって!? それは本当なの?!」
とんでもない事実を聞かされたフブキは半信半疑で会話に参加する。
「本当ですよ。すぐにこの事は他のヒーローにも通達されます。」
「襲撃してきたのは怪人か?」
「本人は自分の事を怪人だって言ってたらしいけど、人間だよ。似顔絵持ってきたから見て。」
そう言ってアズマはシッチの証言を頼りに描いた似顔絵をジェノスとフブキに見せる。
「それでね。そいつの名前も分かってるんだけど、さ。」
そこでアズマは気まずそうに襲撃犯の名前を口にした。
「ガロウっていうの。」
「...何? おいその名前、バングの元一番弟子と同じ名前じゃないか。」
「バングって、シルバーファングの事!?」
「はい。同姓同名の別人って可能性もあるけど、もしその本人ならかなり厄介だよ。下手したらたくさんのヒーローがやられちゃうかも。」
「そいつはヒーローを襲うのか?」
「うん。強い怪人になる為だって。協会本部にいた重戦車フンドシ、ブルーファイア、テジナーマンがやられちゃった。」
「嘘でしょ。全員実力の高いヒーローじゃない! それがたった1人にやられたっていうの!?」
「はい。だから気をつけてくださいね。」
頷いたアズマはサイタマに向き直る。
「念の為、サイタマ様も気をつけてくださいね。」
「おう。」
「相手がたとえS級ヒーローでも襲う好戦的な輩です。そこにいるキングも倒そうとしているらしいですから。」
「え?!」
実力の高いヒーローを倒したガロウに狙われていると知ってしまったキングは目をひんむいた。