星になったヒーロー 作:日暮 蛍
アズマがインターフォンを鳴らすとサイタマが出迎えてくれた。
「サイタマ様。こちらお約束の品でございます。」
「わざわざありがとなアズマ。」
「いえいえこちらこそ! このような素晴らしきお役目に携われて光栄です。」
「そ、そうか。」
サイタマに渡した紙袋に入っているのはアズマが作った白い道着だ。
サイタマがチャランゴのフリをして大会に出ると知った瞬間アズマが是非衣装のご用意をさせてくださいと懇願し、その熱意と勢いに押されたサイタマは思わず了承したのだ。
「ですが、本当にチャランコとして参加するのですね。」
「おう。実際に体験した方がいいからな。...ところで。」
サイタマの視線は先ほどからアズマの服だ。
いつもの普段着と同じシャツとズボンといった肌を極力晒さないものなのだが、シャツの柄が問題だった。
「そのシャツ、俺の顔に見えるんだけど気のせいだよな?」
「いえ。今回の為に作ったサイタマ様Tシャツです。」
「嘘だろ。」
サイタマの顔がでかでかと刺繍されているかなり目立つ長袖のTシャツをアズマは堂々と着ていた。
「非公式とはいえサイタマ様が表舞台で活躍されるのです。応援するにも相応の身だしなみが必要です。」
「いや、だからって」
「アズマ。」
アズマの着ているシャツに反応したジェノスが話に加わる。
「俺の分もあるか?」
「ジェノス?!」
「もちろんだよ。」
そう言ってアズマはもう1つ持ってきていた紙袋をジェノスに渡す。中にはジェノスにぴったりの大きさのサイタマの顔が刺繍されているTシャツが入っていた。
「チケットも確保してあるよ。一緒に行こうね。」
「あぁ。全力で先生を応援するぞ!」
「うん!」
サイタマとしてはかなり恥ずかしくてやめてほしかったが、道着を用意してもらった上に心底楽しそうにしている2人に水を差すのはためらいがあった。
結局、ジェノスもサイタマシャツを着てスーパーファイトに行く事になった。
◆◇◆◇◆
『ご来場の皆さま! 大変お待たせいたしました!! 第22回スーパーファイト、全選手の入場です!!!』
司会者の発言に合わせて今回の大会に参加する武術家達が表に出てくる。その中にはチャランコのふりをしたサイタマもいた。
「あっ! ジェノス君サイタマ様!! サイタマ様だよ!!」
「落ち着けアズマ。今はチャランコだ。」
「そうだったごめん!」
ジェノスとアズマは激しく拍手をしながら入場してくる他の選手にも注目する。
「あっ、スイリューって人も出るんだ。」
「有名なのか?」
「かなり強いみたいだよ。順当に勝ち進めばサイタマ様の決勝戦の相手になるね。」
「しかしサイタマ先生が武術を体験する前に決着がつく可能性があるぞ。」
「技を見る為に今回はかなり手加減すると思うよ。...たぶん。」
ジェノスとアズマが話している間に一回戦が始まった。
対戦するのはA級ヒーローのイナズマックスと今大会唯一の女性選手であるリンリン。
「ヒーローも参加しているのか。」
「スネックも参加してるし、ガロウの事がなければバングも特別審判団の主審ってのになってたみたいだよ。」
「そうなのか。意外と詳しいな。」
「サイタマ様が参加するから軽く調べたんだ。」
一回戦の勝者はイナズマックス、なのだが女性であるリンリンを倒した事でブーイングを浴びてしまい遠目からでも分かるほど気が滅入っている様子だ。
「次はサ、チャランコだよジェノス君!」
「あぁ。ところで先ほど司会者が言っていた逆シードというのは何だ?」
「この大会の場合初めて参加したり運営の人からこの人弱いなーって思われた選手がトーナメントで格上の相手と組み合わせられる事を言うね。」
アズマはトーナメント表の紙を取り出しその中に書いてあるバクザンという選手の名前を指差す。
「今回は好都合だね。次の相手のバクザンって人も強いらしいから良い経験になるといいな。」
話している間にチャランコのふりをしたサイタマの試合が始まり
『つ、強いー!!! チャランコ選手!』
すぐに終わった。
『ザッコス選手立てない! チャランコ選手のビンタ一発で脳が揺れてしまったかー!?』
「やはり今回も一撃か。」
「まぁまぁ。次のバクザンに期待しよ。」
ジェノスとアズマの予想通りサイタマの一撃で二回戦は終わってしまった。