星になったヒーロー 作:日暮 蛍
サイタマがガロウを探しに出かけて数時間が経過した。
「サイタマ様、帰ってきませんね。」
冷蔵庫に食材を詰め終えたアズマは時計を見て心配そうに呟いた。
「結構遅い時間になっちゃったな。」
「サイタマ君はガロウを探すと言って飛び出していったが、そう闇雲に探しても見つからんじゃろう。」
「奴は怪人どもと秘密のアジトにいるだろうしな。」
「先生の意思は固そうだった。怪人協会の拠点を発見し殲滅するまで帰ってこないかもしれない。」
「サイタマ氏、強いけどあんな性格してるから少し心配だな。万が一、怪人の罠にかかったら。」
皆の不安が表に出て空気が重苦しくなる。
「ただいま〜。」
が、サイタマが帰宅した事で霧散した。
「先生だ。」
「普通に帰ってきた。」
「何か成果あったかの?」
皆サイタマを出迎えようと立ち上がりぞろぞろと玄関の方を見る。
「いやーまいったまいった。大変な目にあったぜ。」
帰ってきたサイタマの全身のあちこちに血がついていた。
「サイタマ様!? その血はいったい? 怪我とかは無いですか大丈夫ですか?」
「怪人の返り血だよ。帰り道に出てきた。」
「怪人協会絡みか!?」
「いや。大体いつも怪人いるんだよここら辺って。何でか知らんけど。」
「あー。また噂に釣られてきたんですね。」
「噂?」
「なんでも、この辺に怪人が集まって組織を作って悪巧みをしているって噂です。」
「へー。」
「...ん?」
アズマの話を聞いて引っかかりを感じたジェノス達。
「それよりもサイタマ様。浮かない顔ですが何かありましたか?」
しかしアズマがさっさと話題を変えてしまった事で追求するタイミングを逃してしまった。
「はぁ。それがな。」
ヒーロースーツを脱いで落ち込んだ様子で座り込むサイタマの様子に皆もいったい何があったのかと心配になる。
「どこかで財布落としちゃって。六千円くらい入ってたんだけど。」
が、サイタマの話を聞いて肩の力が抜けた。
「なんじゃそんな事か。てっきりガロウと遭遇でもしたのかと。」
「はぅあぁーッ!!!?」
突如、サイタマがかなり焦った表情で大声を出す。
「どうかされましたか?!」
「そういえばあの時!!!!! あ、あの食い逃げ犯」
「なんじゃどうした? 心当たりがあるのか!?」
「アイツのこと追いかけた時に、せっかく買った白菜! ファミレスに忘れてきた!!!」
「何ですって!!」
「く! 俺が回収してきます!」
「いかんジェノス君。その身体では無理じゃ!!」
「楽しそうね。」
皆が騒いでいる中、サイタマの後を追うように外へと出かけていたフブキが再びサイタマの部屋にやって来ていた。
「また戻ってきたか地獄のフブキ。まだ何か用があるのか?」
「サイタマ。やってくれたわね。」
フブキの手元にはビニール袋に入っている白菜1玉。
ジェノスはそれがサイタマが置いてきてしまった白菜である事にすぐに勘づいた。
「これ。忘れものよ。」
「お! 助かった! 今日は鍋にしたい気分だったんだよ。鍋に白菜は欠かせないからな。」
「他に私に言うべきことがあるんじゃないの?」
「え? 白菜ありがとう。」
「違うでしょ! お店の会計を私に押し付けて逃げたことをちゃんと詫びなさいよ!」
「あぁ、忘れてた。ご、ごめん。」
「しかもまた話の途中で行っちゃうし!!!」
「ん? 何か話してたっけ?」
「ほらやっぱり聞いてなかった! とにかく今回の件は一つ貸しだから!! 憶えときなさいよ!!!」
実力差があるにも関わらずいまだにサイタマを自身の派閥に入れようとする、あるいは弟子入りを狙っているのではとフブキに警戒心を強めるジェノス。
そんな時にジェノスのセンサーが高エネルギー反応を放つ何かが高速接近しサイタマの住む部屋の真下に止まった。強力な怪人だと認識したジェノスはすぐさま対応できそうな人物を見繕い、その人物の背中を押した。
「現状まともに戦えるのはお前だけだ。キング! 敵が接近している。外で迎え撃て!!」
「え?」
「ここで戦う訳にはいかない!!」
「何で?」
「早く外へ!!!!」
「あっちょっと待って押さないでちょっと待って。落ち着こうどゆこと?」
「安心しろ。敵は一体だ。」
「何で?」
ジェノスはキングの背中をぐいぐいと押し、外へと出した。
「どうしたジェノス。」
「怪人が来たようなのでキングに任せました。」
「じゃあすぐ戻ってくるね。」
「うーわ。」
アズマの言う通り、キングはすぐに戻ってきた。
「げ、玄関の前にいた。お客さんです。」
謎の機械仕掛けの装甲を身に纏った人を連れて。
「な、キング!? 招き入れてどうする!!?」
「うわぁ何その人?! 人??!」
驚きながらもジェノスとアズマが構えようとした時、武装した人物が待ったをかけた。
「あー待て待て。また酷く壊れたな。それ以上無理に動いてはいかん。ワシじゃよジェノス。」
真っ黒だったヘルメットが透明になっていき、外れて顔が見えた。
「クセーノ博士!!!!」
ジェノスをサイボーグ化し、共に悪のサイボーグを討とうと協力をしてくれる技術者、クセーノ。
クセーノが武装してるとはいえ危険なゴーストタウンまでやって来た事にジェノスは驚きを隠せなかった。
「あなたがクセーノ博士! ジェノス君からお話しは伺っております。初めまして。私はアズマといいます。」
「おぉ。君がアズマ君か。ジェノスと仲良くしてくれている。これからもジェノスの良き友としていてほしい。」
「もちろんです!」
クセーノが武装してまでここに来た理由はジェノスの様子を見る事とジェノスの師匠であるサイタマに一度会いたかった為だ。
そして手ぶらでは何だと思い手土産として高級な牛肉を持ってきたクセーノに対してサイタマは快く歓迎した。
「じゃあこの肉も鍋に入れよう。」
「では野菜を切ってきます。」
早速その牛肉を今夜の晩ごはんにするべく鍋の準備をしようとした。
「え!? そんなに良いお肉なのに鍋なんかに入れちゃうの? もったいないわよそんな食べ方。この部屋赤ワインとか置いてないわけ!?」
「ん? ねーよそんなもん。まさかお前ら食ってく気じゃないだろうな!? 関係ない奴らはここで解散だっつーの。ほら、キングもアズマもジイサン達も帰った帰った!」