星になったヒーロー 作:日暮 蛍
怪人協会には幹部の座が与えられている怪人が何体もいる。全員災害レベル竜クラスでありS級ヒーローといえど油断ならない強者だ。
その幹部達によってヒーロー達は追い詰められていた。
強さはもちろん、怪人協会の参謀であるギョロギョロがヒーローの戦力を分析し、ヒーロー1人ひとりに相性の悪い怪人とぶつけている為S級ヒーローも幹部クラスの怪人に苦戦していた。
これまで、数多の経験を積み勝利してきたS級ヒーロー達は久しく忘れていた感情を思い出していた。
恐怖。
強者ほどこの感情を忘れていき、死への覚悟が出来なくなる。
しかしそれは怪人も同じ事だ。
◆◇◆◇◆
「天井崩すとかなめたマネしてくれたなオッサン。」
怪人協会幹部、黒い精子。
S級4位アトミック侍。
片や無数に増殖する怪人、片や無数の斬撃を放つヒーロー。
両者が戦った結果、優勢なのは黒い精子だ。
分裂してもなお衰えない戦闘能力の高さにアトミック侍は押されてしまいあっという間に戦闘不能寸前まで追い込まれてしまい、天井を斬り崩して自分ごと黒い精子を生き埋めにしようとしたが、効果は無かった。
髪を掴まれ宙吊りになり、アトミック侍絶体絶命の状況。
「ん?」
そんな時に頭上から水滴が雨のように降ってきた。
地下水かと思いきや、降ってきた水が集まり塊となる。
「は!? 何でコイツがここにいるんだよ!」
黒い精子はその水の正体に気がついた。
エビル天然水。
ギョロギョロですら制御出来ない凶悪な生態から封印されていた怪水が今、黒い精子の目の前にいる。
「割り込み失礼しまぁす。」
そして、背後から第三者の声が聞こえたと同時にアトミック侍を掴んでいた腕を斬り落とされた。
「テメェ!」
腕を切られた事で怒りを噴き出し振り返るがそこには誰もいない。
アトミック侍の姿も見失ってしまった。
「誰だ!?」
「凶人です。」
声が聞こえた方を向けば怪人の仮面を被った派手な格好をしたヒーロー、凶人がアトミック侍を背負って立っていた。
「んふ、ふふは、ははは。」
凶人の笑い声が辺りに響く。
「お前、何笑ってんだよ。」
「この状況分かってんのか。」
「そいつを助けにきたのか? だったら無駄死にだな。」
数多の黒い精子が凶人を睨みつける。
だからこそ、凶人は笑いが堪えられなかった。
「だって、だってぇ。こんな絶望的な状況、笑うしかないじゃないですか。んふ、ふふ、ふふふ。」
そしてマントを翻してある物を黒い精子達に向けて大量に放り出した。
「でも残念。ここは撤退させて貰います。」
心底残念そうに告げた凶人がばら撒いたのは手のひらサイズの愛らしいぬいぐるみ。
「は! 何だよおもちゃをばら撒いて。」
「逃すわけねぇだろ!」
黒い精子の一体が凶人を捕まえようと走り出し、ぬいぐるみを踏んづけた瞬間、爆発した。
「ゲギャー!?」
そうして火花が散り、他に落ちているぬいぐるみにも引火し連鎖して爆発していく。
「それじゃあ失礼しまーす。縁があったらまたお会いしましょうね。」
「おいゴルァ待て!!」
「とんでもねぇ置き土産を残していくんじゃねえ!!」
黒い精子は叫ぶが、すでに凶人の姿はない。
「アイツ、アイツ! 凶人! 絶対殺してやる!!」
今だに続く爆発の上にエビル天然水を押し付けられた黒い精子達は怒り狂い必ず凶人を殺してやると意気込んだ。