星になったヒーロー 作:日暮 蛍
過去にサイコスはアズマと会った事がある。
背徳的な欲求を隠さずに生きているアズマに怪人としての素質があるとふんだサイコスはオロチの代用にとアズマと接触した。
アズマなら簡単に堕ちる。
そう考えていたサイコスだったが、大きな誤算があった。
当時のアズマはかなり気が立っていた。
とある事情で片目を失ったばかりで、その理由が怪人にならない為というもの。
ゆえに、怪人化に誘うサイコスの存在は当時のアズマにとって許しがたい敵だった。
だからアズマはサイコスを殺そうとした。
今のアズマであれば気絶させて警察に引き渡す程度で済んだのだが、当時のアズマはサイコスを殺す事で頭がいっぱいだった。サイコスが逃げても執拗に追いかけた。
そしてサイコスはアズマの地雷を踏み抜いた事で執拗に命を狙われる事になってしまった。
どれだけ超能力で応戦してもアズマは眼帯の下から血の涙を流して殺意に染まったドス黒い目でサイコスを視線で捉え錆びた包丁を片手に怯まず追いかけ続けていく。
自身のダミーの死体を用意して念入りに工作をしたおかげでどうにか逃れる事は出来たが、サイコスはアズマの存在そのものがトラウマになってしまった。
その為、後から怪人協会のアジトのすぐ近くにアズマが住んでいると知った時は本気で引越しを考えた。
引越しの時に勘づかれてしまう危険性を考えて結局そのままにする事になったが、とにかく徹底的にアズマを怪人協会に近づかせないようにした。
アズマが入り口を見つければ即座に遠隔から超能力を使って道を崩して通らなくしたり、失っても問題の無い怪人を差し向けて気をそらしたりと、とにかくアズマと会わない為に色々と工夫をしていった。
しかし、アズマがヒーロー協会の作戦に便乗して怪人協会のアジト内に潜り込んだ時は心臓が止まるかと思った。
瓦礫で押し潰したかと思いきやピンピンしており気配を消しているせいで居場所が正確に分からずサイコスは対応に困り神経をかなり削った。それでも直接会えば確実に殺されると分かっているサイコスはとにかく他のヒーロー達への対応と怪人達への指示とアズマへの警戒で予想以上に神経を削りに削っていた。
エビル天然水と共に落とし気配が消えた時はようやく一安心、というところに宿敵の1人であるタツマキがやって来て、あれよあれよという間に追い詰められてしまった。
それでもサイコスは抗い、逃走して再起を図ろうとした。
しかし目の前に
しかし、タツマキが周囲を覆う巨大なバリアを張ってしまったせいで逃げられない。
タツマキを始末しようと光線を放とうとした時
「こら!」
凶人が発射口に手を突っ込んで塞ぎ、そのせいで暴発した。
「ぎゃっ!!?」
「やめてくださいよ。ジェノス君に当たる!」
手袋と袖口が焦げただけで大したダメージを受けていない凶人にサイコスは改めてその異常なまでの頑丈さに戦慄し、かつての末恐ろしい過去を思い出し身震いする。
その上凶人とタツマキの2人でも厄介なのに、遅れてやってきたS級ヒーロー、駆動騎士が飛行形態をとって戦線に加わってきた。
遠隔から攻撃してくるタツマキ、ジェノス、駆動騎士。そしてサイコスの攻撃を邪魔する凶人。かつてない負荷がサイコスを襲う。
「くそっ! 次から次へと、進化の帰結たるこの私に歯向かいおって。下等生物どもめ!」
「いきなり何を言ってるんですか。」
どれだけ速度を出しても一向に離れる気配のない凶人。
「この、離れろぉ!!」
せめて凶人を引き剥がそうとサイコスは旋回し、もはや瓦礫の塔と化したむき出しの怪人協会のアジトに自身の体ごと凶人をぶつけ、すりおろすように猛スピードで下降した。
「はっはぁ! これで、これ、で...」
しかし、凶人は落ちなかった。
先ほどの衝撃で仮面が外れ、素顔を晒した凶人。
顔を半分隠れるほどの大きな眼帯と大きく見開かれた目はかつて追いかけ回されて必死に逃げていた頃を思い出させる。
「ヒィ!!」
知らぬ間に凶人はサイコスに精神的に大きなダメージを与えていた。