星になったヒーロー 作:日暮 蛍
今日もアズマはサイタマを陰から見ていた。しかし最近、サイタマ以外の者も観察していた。
「またいる。」
アズマが見ているのはサイタマからは見えない角度にいる金髪の人物。ただの人間ではない。機械の体に改造したサイボーグだ。
そのサイボーグがサイタマを観察していた。
「ファンかな?」
最初にサイボーグを見つけた時、アズマは自分と同じファンだと思った。しかし観察を続けて行くうちにサイボーグの行動が目につくようになった。
「ばればれじゃないか。」
隠れているとはいえ気配はするのかサイタマは時々何かを気にしているそぶりを見せている。
徹底的にサイタマの邪魔になる可能性を無くすために観察をする時は常に気配を消しているアズマから見ればサイボーグはその存在を隠せていない。
「どうする? どうする?」
アズマとしては同じファンに出会えるかもしれないという期待と同時に、もしも悪質なストーカーだったらどうしようという不安があった。だが、僅かでもサイタマの障害になる行為は見逃したくない。
「ヒーローとして注意するならセーフ? ギリギリセーフかな。」
職権濫用かな? と思いつつもサイタマに危害を加えようと弱点を探っている者の可能性も考えたアズマはヒーローとしてサイボーグと話をしようと決めた。
◆◇◆◇◆
故郷と家族を奪った狂サイボーグに復讐するために科学者クセーノの手によってサイボーグ化した男、ジェノスはサイタマの強さの秘密を探っていた。
Z市に現れた蚊の大群を操る怪人に深手を負わされ追い込まれた時、たまたまそこに通りかかったサイタマがその怪人を一撃で倒した。その強さに惹かれたジェノスはすぐさま弟子入り志願をしたがサイタマにやんわりと断られて帰って行ってしまった。重症だったジェノスは追いかける事も出来ず、クセーノが所有している大型ドローンの迎えが来るまでその場に倒れている事しか出来なかった。
しかしジェノスの身はサイボーグのためクセーノの手によって無事に復活。弟子入りを断られたが挫ける事なく次はサイタマの強さの秘密を知るために観察から始めた。
この日もサイタマの姿を遠くから観察していた。
「こんにちは。」
そんな時、後ろから声がかかった。
ジェノスは驚いた。
声をかけられた事ではない。声をかけられるまで気配を感じなかったからだ。
「何者だ。」
すぐに距離を取り臨戦体制に入る。
相手の姿は刺繍とレースのついた派手な服を着て、その上に裏地が星座の形をした金色の糸の刺繍がいくつも入っている黒いマントを身につけ、ヒールレスの厚底靴を履き、怪人の顔を模したお面をつけている。
なんともちぐはぐで派手な格好をした怪しさたっぷりの人物だ。
「始めまして。一応ヒーローをやっている者です。早速ですがあなたはここで何をしていたのですか?」
落ち着いた声音をしているがお面をつけているため相手の表情は一切分からない。それにより不気味さが一層増す。
「なぜお前に言わなければならない。」
迂闊に動けばやられると判断したジェノスは自身の武器の1つである技、焼却砲をいつでも撃てるよう気を張る。
一触即発。
2人の周囲の空気が張り詰めていく。時間が過ぎていく。
10分後。
「お前こそサイタマ先生に何の用だ。」
「1人のファンとして観察していただけです。」
30分後。
「サイタマ様にとっては何気ない行動だったらしいけど、私にはそれが光に見えた。そして気がつけば私はサイタマ様に惹かれ、のめり込んだんだ。」
「なるほど。」
1時間後。
「蚊の怪人にやられもう自爆するしかないと思った時、サイタマ先生が一撃で倒してくれたんだ。」
「えぇ。そんな事があったんだ。」
2時間後。
「狂サイボーグを倒すために俺は強くならなければならない。そのためにサイタマ先生の強さの秘訣を知りたいんだ。」
「そうだったんだ。確かにサイタマ様強いもんね。知りたいよね。」
3時間後。
「それでねそれでね! 巨人の頬に向かって強烈な一撃を与えたの! 本当にかっこよかったんだから。」
「さすが先生!」
4時間後。
話疲れたのか話が切れたのか。2人はしばらくの間無言で視線を交えた後、2人は同時に動き歩み寄る。後少しで触れる距離まで近づいた時、2人は同時に手を差し出して固い握手を交わした。
「私はアズマ。」
「俺はジェノスだ。」
「これからよろしくねジェノス君。」
「もちろんだアズマ。」
2人の間に強い友情が芽生えた。