星になったヒーロー 作:日暮 蛍
「あっはははははっ!!」
恍惚とした表情で、厚底の靴で不安定な瓦礫の上を軽やかに跳んで舞い、笑いながら両手にそれぞれ持っている片手剣で襲いかかってくる無数の黒い精子を流れ作業のように殺害していた。
「ナメたマネしやがって!!」
「潰せ! 押し潰せ!」
バラけてしまえばやられる。ならば数で押し潰そうと黒い精子達は集まり一斉に凶人に襲いかかる。
数の塊に対して凶人は剣からランスに持ち替え、足に力を込めて跳ね、そのまま突貫する。
どれだけ殴られようと蹴られようと凶人は構わず押し進み、貫き轢き潰していく。
そして着地した時にランスから革鞭に持ち替えて周囲にいた黒い精子を打ち据えて洗脳していく。
「さぁ! さぁ!! どんどんかかってきてください! 無惨に衝動のままに冷酷に! それが、それが怪人でしょう!?」
「こいつ、言わせておけば!」
片目を輝かせて楽しげに笑いながら黒い精子達を倒したり洗脳している凶人にドン引きしながらもヒーロー達も黒い精子達に応戦している。
「...助かるが、やはり性格に難ありじゃな。」
重傷のタンクトップマスターとタツマキをジェノスに任せて共に戦っているバングも凶人の言動には眉を顰めていたが、黒い精子達へのヘイトを稼ぎ攻撃を引き受けていてくれるおかげで体力を消耗している、または温存しておきたいバング達にとって助かっている為かなり複雑な心境だった。
「ふふ、ふふふあははははははっ!! さぁみなさん頑張りましょう! 頑張ってヒーローを助けて死にましょう! 私も頑張りますから! ね。ね!」
革鞭を振るい洗脳済みの黒い精子達に命令下し襲わせる凶人。
それによって正気の黒い精子達の神経をさらに逆撫でしていく。
「くそがっ! こんな攻め方じゃ押し切られちまうぞ!!」
「チッ。避けたいとこだったが仕方ねぇ。こうなりゃ限界まで分裂しまくって精子津波で何もかも圧し潰してやる!」
「待てオイ! 分裂してたんじゃこのバカ耐久イカれヘンタイにいつまでたってもダメージが通らねぇぞ! 合体だ合体!」
「ウルセー指図すんな! そっちで合体しとけ俺!」
「半端な合体じゃ意味ねーだろうが。ワガママ抜かすな俺!」
一向に凶人が倒れない為苛つき出した黒い精子達は自分同士で喧嘩が始まる。
「まあまあ。ケンカせず、仲良う死んどけ。」
それを野菜の桂むきのように黒い精子が斬られた事で中断される。
「ようカミカゼ。精が出るな。」
黒い精子を斬りアトミック侍の本名を呼んだ老年の男の顔を見てアトミック侍の表情が明るくなる。
「ニチリン!」
「け、剣聖会のみなさん!」
アトミック侍がヒーローになる前から所属している、大剣豪が集まり結成された剣聖会のメンバー、ニチリン、アマハレ、ザンバイ、そしてニチリンの系列流派の門下生であるA級ヒーロー、バネヒゲも参戦してきた。
「怪人協会か何か知らんが。」
「うちの一角を怪人にされて黙ってたんじゃ名折れなんでな。」
剣聖会のメンバーはアトミック侍を入れて5人だった。
残りの1人の名前はハラギリ。
剣士としての強さを求めて、怪人となり、アトミック侍に討たれた。
旧友を誑かした怪人協会をそのままにするわけにはいかず、こうしてやって来たのだ。
「ご同輩。助太刀致す。」
「流水岩砕拳のバングじゃ。お噂はかねがね。よろしこ。」
肩を並べて戦う前に、ニチリンはバングに確認を取る事にした。
「ところで、あそこにいるのは」
そう言いながらニチリンが視線を向けた先にバングも見ると
「はははははっ! はは。はははあはははっ!! ほら! ほらほらほら! 私はまだ生きてますよ! 生きてるんですよ! ほら! ほら早く! 早くぅ!!」
「いぎゃああああっ!」
「この、糞がぁぁっ!!」
剣聖会の皆の参戦に気が付かず生き生きとした表情で黒い精子達の攻撃を受けながら地面に倒れている黒い精子に剣を突き立てていく凶人の姿があった。
「お仲間で?」
「...うん。根は、良い子なんじゃ。」