星になったヒーロー 作:日暮 蛍
剣聖会の者達が参戦し、戦況はヒーロー達の優勢へと傾く。
「バング! ガロウだ!! ガロウがいたぞ!!!」
離れた場所からボンブの大声が聞こえてきた。
「ムウ。こっちも手が離せん!」
ずっと探しているかつて弟子の元に行きたいのは山々だが、まだまだ手が足りないこの戦況にバングは離れ難い。
「行け! ここは任せろ。行って師としてケジメをつけてこい!」
しかし、そんなバングにアトミック侍はガロウの元に行けと背中を押す。
「みなさぁん! 道を譲ってくださーい。」
「あっ、てめ、オイ!」
「邪魔すんな!」
そして後押しに凶人が洗脳した黒い精子を使って正気の黒い精子達を押さえつけてバングの進路の邪魔を取り払う。
「アトミック侍! 凶人! 恩にきるぜ!」
後ろ髪引かれる事無くバングは真っ直ぐとガロウの元へと走って行った。
バングを送り出した後も激戦は続く。
無数の黒い精子が絶える事無くヒーロー達に襲いかかってくる。
負けじと応戦していく中、地中に潜り込んでいた巨大化した黒い精子が凶人を掴み上げる。
「うわ!?」
「よし! そのまま握りつぶせ!」
「ん? ぐっなんっだこいつ!?」
凶人を捕まえた黒い精子は他の黒い精子達の望み通りに凶人を握り潰そうとするが、いくら力を込めても強い弾力を感じるだけで潰す事が出来ない。
「焼却。」
黒い精子が凶人の相手に手間取っていると合流してきたジェノスによって腕を吹き飛ばされる。
「ジェノス君!」
再び友人に会えた事に目を輝かせる凶人。
「お呼びじゃねーんだよポンコツ。」
しかし、背後にいた巨大な黒い精子に地面に叩きつけられて埋まってしまったジェノス。
「ジェノスくぅぅぅん!!」
黒い精子の手から解放された凶人は慌ててジェノスを助け出そうとするが、その前にジェノスは勢いよく自力で抜け出した。
「だ、大丈夫ジェノス君!?」
「問題無い。アズマ、お前はどうだ?」
「全然平気だよ。まだまだげん」
ジェノスと再開できた喜びの中、凶人は警戒を怠ってはいなかった。
だからすぐにジェノスを掴みアトミック侍達がいる方へと投げ飛ばす。
「アズマ!?」
そしてすぐ、凶人は上から降ってきた光の玉に飲み込まれ、爆発した。
「おっ。やっとやる気出したか役立たず帝。」
ずっと戦いを高みの見物を決めていた怪人、ホームレス帝。
強い爆発を引き起こす光の玉を無尽蔵に出し操る事が出来る恐るべき怪人だ。
当たれば跡形も無く消し飛ぶほどの威力がある光の玉をもろに直撃させたにも関わらず、ホームレス帝は凶人がいる方へと視線を外さず強い警戒心を見せていた。
「おい返事くらいしろよ。」
「...黒い精子。先ほど、合体がどうとか言ってたな。」
「あ? それがなんだよ。」
「時間を稼ぐ。今すぐ合体しろ。」
「は?」
「凶人を殺すまでの間協力しようではないか。」
ホームレス帝の言葉を受けて黒い精子も凶人がいる方へと視線を向ける。
流石に、死んだと思っていた。
しかし、凶人は生きていた。
派手な服が吹き飛び、腹部分の肌を晒しているが被害はそれくらいだ。夥しく惨い傷跡が目立つが、全て古傷だ。
ホームレス帝の光の玉を受けてもなお、凶人は無傷だった。
眉間に皺を寄せて心底不愉快そうな表情をした凶人が大きなため息を吐いた。
「あー。やな感じやな感じ。今絶対変な顔してる。仮面、仮面、...無い。全部使い切った。このタイミングで。...やんなる。」
ここでようやく仮面が外れている事に意識が向き、ボソボソと独り言を呟きながら新しい仮面をつけようとしたが、どうやら作った仮面を全て使い切ったようだ。
仕方がなく、凶人は顔に両手を当てて無理矢理表情筋を動かす。
そうして出来上がったのはまったくの無表情だった。
隙だらけ、のように見えたが誰も動けなかった。
先ほどまで見せていた笑顔とはまるで違う異様さに皆どうすればいいのかまるで分からなかった。
「大きな怪物といい、あのおじさんといい、なんでアレの気配がするの? いるの? 近くにいるの? ふざけるな最悪だせっかく素敵で最低で強烈な怪人がたくさんいると思ってたのに。」
ドス黒い殺意に染まった片目が真っ直ぐとホームレス帝に向けられていた。
「...おい。死ぬ気であいつの足止めをしろよ。」
「お前こそ、何が何でもあいつを殺せ。」
黒い精子とホームレス帝は相手が隙を見せれば出し抜いてやろうと常に考えているが、この時ばかりは協力せざるを得ないと互いに思っていた。
そうでもしないと殺される。
怪人になってから久しく感じていなかった感情、恐怖。
野望や欲望を叶えるには命がなくてはならない。
生き残る為に、黒い精子とホームレス帝は一時的に手を組む事になった。