星になったヒーロー 作:日暮 蛍
空中で瓦礫を足場に跳び交う白金精子と凶人。
大太刀、薙刀、大剣、金棒、大斧。
凶人は次々と武器を取り出し振るうが、白金精子によって砕かれていく。
「うっわこんなあっさり。強いなぁやっぱり。」
近くの瓦礫の上に着地した凶人は粉々に砕かれた武器の残骸に目を向けず笑みを浮かべて真っ直ぐと白金精子に見ていた。
「さすが54兆。凄いですね。久しぶりですよここまで一方的にやられるのは。」」
「強がりも大概にしなさい。私に一撃も与えられず攻撃を受けているばかりじゃないですか。」
「まぁ、避けられませんからね。速いんですものあなた。」
「このままあなたの首をへし折るのは簡単ですが、あなたには散々な屈辱な目に合わされましたからね。メッキを剥がして本性を表したあなたの無様な姿でも見なければ怒りが収まりません。」
「? これが私の本性ですよ。」
「ふん。どうだか。その服のように醜い姿を隠しているのではないのですか?」
「え?」
白金精子の言葉を受けて首から下を見て、ようやく気がついた。
腹、腕、手、太もも、などなど。
服が焼け焦げて穴があき古傷だらけの肌が露出している。
それに気がついた凶人は思考を停止。
「ぴゃあああああああああああっ!!!?」
「ぐふぅッ!???」
そして奇声を上げて反射的に白金精子を渾身の力で蹴り飛ばした。あまりに理不尽。
「あ、あわわ、あっ、えっ服、服。え? なん、なんで、え? え??」
顔を赤くし必死にマントを引き寄せて体を隠す凶人。
「き、が。着替え! 服、服! 無い?! 落ちたぁ!! えっと、えっとぉ!!?」
大慌てで着替えを探しているようだが、どうやら服に穴が空いてしまったせいでしまっていた物がいくつか戦いの最中で落としてしまいお目当ての物がなかなか見つからないようだ。
「そんなに慌ててどうしたのですか?」
服を探すのに気を取られている凶人の背後を取った白金精子はお返しとばかりに後頭部を蹴り飛ばす。
「上辺だけを飾り、それが崩れれば無様に取り乱す。実に滑稽です!」
嘲笑を浮かべる白金精子は頭の触覚で凶人の首を絞めて逃げられないようにした上で追撃をしていく。
「ヒーローなど所詮こんなものでしょう。真に弱者を救いたい者など、いやしません。」
トドメを刺そうと白金精子が腕を振り上げた時、凶人はマントで全身を隠す。
「悪あがきを!」
小細工を使って逃げる気かと思い、その前に仕留めようと腕を振り抜く白金精子。
しかし、腕を振り抜いた先に手応えがまるで無く、触覚から感じていた温度と感触が消え失せる。
「あー。良かった。」
凶人の声が聞こえ、ほんの少し目線を下に向ければすぐ近くにあった瓦礫の上に凶人は立っていた。手品の瞬間移動のように、凶人はあっさりと白金精子からの拘束を抜け出してしまった。
いつの間にか右腕部分に竜、左腕部分に鬼、右太もも辺りに虎、左太もも辺りに狼の刺繍が入った派手なツナギに着替えて手袋を新しく替えている。
飛んでいきそうな黒いマントを掴んで身につけた凶人は白金精子の方へと視線を向ける。
「さっきはすみません取り乱してしまって。」
服を探すのに夢中で白金精子の話を全く聞いていなかった凶人はそう言って首を傾げる。
「準備運動はそろそろいいですか?」
その余裕な態度に白金精子の神経は逆撫でされる。
「...えぇ。お望み通りにちゃんと殺してあげましょう。」
「わぁ素敵! どうやって殺すのですか? 絞殺? それとも撲殺?」
ウキウキとした様子の凶人に白金精子は青筋を立てる。
「八つ裂きですよ!!」
瓦礫を足場に一気に凶人の元へと跳んだ白金精子は凶人の腹に向けて強烈な一撃を与える。
急速な勢いで落下する凶人であったがすぐに体制を立て直して別の瓦礫を足場にして再び高く跳び上がるが、白金精子にあっさりと追いつかれ、拳による連打を何度も受けていく。
にも関わらず、凶人は平然としていた。
一撃受ければ意識が失うほどの強烈な打撃を何十回もくらっても凶人の意識ははっきりとしており白金精子から視線を逸らさない。
攻撃は確かに通っているのにダメージを受けている様子が全く見えない。
それにより白金精子の苛立ちと焦りが徐々に増えていく。
それでも、凶人の攻撃は一度も当たっていない。このまま攻撃し続ければ勝つのは自分だ、と考えどうにか冷静さを保とうとし左拳を振り上げた。
その瞬間、白金精子の左腕から大量の血が吹き出した。
「...は?」
訳が分からず、目の前で起こった自分の体の異変をすぐに受け入れられなかった白金精子。
その隙に乗じて凶人は金槌を取り出し動きの止まった白金精子の右腕、両足に打ち付ける。すると左腕同様に血が吹き出していく。
「な、何が、起きて。」
よく見れば白金精子の腕や足には無数の切り傷があり、血はそこから吹き出していた。腱も切られたのか力が入らず、そのまま近くの瓦礫の上に落ち起き上がれなくなる。
「凶人! 私に何をしたのですか!?」
原因は凶人であると気づいた白金精子は顔を上げて見下ろしている凶人へと声を上げる。
「何をって、攻撃ですよ。さっきからずっとしてましたよ。これとか使って。」
そう言って凶人は金槌をしまい代わりにメスを取り出す。
「あなたは硬いですからね。いつものやり方では倒せません。だからこうしてちまちまと切れ目を入れて、脆くしました。」
凶人は大きな武器を囮にして白金精子に気づかれないように痛覚を感じさせないように両腕両足を切り裂いていた。
「さぁ白金精子。」
メスをしまい、刀を取り出した凶人は切先を白金精子に向ける。
「いきますよ。」
瓦礫に足をつけ、力を込めて踏み砕き白金精子へと突進する。
「足掻いてください!」
まだ隠し玉があるだろうと期待して凶人は笑う。
「凶人ンンンンン!!!」
しかし、両腕両足を使いものにされなくなり、反撃しようにも他の部位もいつの間にか切り裂かれまともに動けなくなってしまった白金精子が出来る事は、怨みの声で凶人の名を叫ぶ事しか出来なかった。
凶人は刀を振るう。
アトミック侍達のような剣豪とは違う使い方だ。構えも握り方も、剣士のものとはまるで違う。
それでも、凶人は白金精子を切り裂いた。
細かく細かく丁寧に、細胞の一つ一つを残さず、白金精子は切り刻まれた。
その結果、夜空に白金の輝きが舞い散った。