星になったヒーロー 作:日暮 蛍
訳が分からないままフラッシュとガロウの戦いに巻き込まれた凶人は瓦礫の上であたふたしていた。
そのすぐ隣にガロウが着地をし、ここでようやく凶人がいる事に気がついた。
「誰だテメェは?」
「凶人です。」
「...は?!」
凶人は普段は怪人の仮面をつけている為、素顔をほとんど公表していない。
「いや、待て。どっかで見たような」
だが、ガロウは以前に一度森林公園で凶人の素顔を見た事がある。顔を半分隠せるほどの大きな眼帯は特徴としてかなり印象的だ。
しかし、フラッシュが近づいて来た為記憶を探るのは中断し、その場から跳び退いた。
「すまん! 刀を折ってしまった。」
「いえ、お気になさらず。私もよく壊してしまうので。」
ガロウに代わり今度はフラッシュが隣に立ち、強引に借りた刀が折れてしまった事を詫びるフラッシュ。
それを凶人は全く気にせず、むしろガロウと戦ってくれるのならばと別の刀をフラッシュに差し出した。
「怪人の略奪品ですのでどうぞお好きに使ってください。」
「誰だか知らんが有り難く受け取ろう。」
「私はきょ、あー行っちゃった。」
お言葉に甘えてフラッシュは刀を受け取るとすぐにガロウの元へと行き戦いを再開した。
「...どーしよ。」
この戦いに凶人は積極的に参加する気が無い。
しかしこのままフラッシュを置いていくのも気分がモヤモヤするという理由からとりあえず地面に落ちるまでの時間を延ばそうと上にある瓦礫へと移動している。
ひとまず、色々あって愛刀を失っているフラッシュに代用の刀を渡そうと新しい刀を用意するが
「オイ。」
持っていた刀を弾き飛ばされ、両肩を掴まれた凶人はガロウと目が合う。
「次はお前だ。」
「フラッシュは?」
「今頃下でおねんねさ。」
フラッシュがやられ、次の標的を凶人にしたガロウは地面に向けて凶人を殴り飛ばした。
「あうっ。」
勢いよく地面に激突した凶人は起き上がるが、今だにやる気が無い。危機感が、無い。
「おいどうした。」
降りてきたガロウは凶人のやる気の無さが気になり、追撃をやめて話しかけてきた。
「まさかもうバテたのか? 3日3晩は戦えるヒーローだって聞いたぞ。」
「体力はあってもやる気はないのです。そもそも、どちら様で?」
「俺か? 俺はガロウ。ヒーロー狩りと言えば分かるか?」
「...え?! 貴方が? 聞いてた特徴と全然違うのですが。あっ怪人化?」
「そうだ! 俺は遂に怪人となった。そして、お前を血祭りにあげて災害レベル神への踏み台にしてやる。さぁ、かかってこい!」
やる気満々で構えるガロウに対して、凶人は少し困った様子で視線を右往左往させていた。
「...なぜ来ない。怪人だぞ、俺は。」
「なぜって、貴方から殺意を感じないからですよ。」
「何?」
「私はですね、私を殺しにきてくれるのであれば怪人でも人間でもいいんですよ。大事なのは殺意の有無。貴方からはそれが無いんです。だから私もやる気が無いのです。」
「何を言っている。お前の目の前でフラッシュがやったんだぞ。俺は本気だ!」
「殺していませんよね。」
「そんなの、アイツの運が良かっただけで、」
「他のヒーローも、殺してませんよね。」
淡々と。淡々と。
凶人はガロウの目をじっと見て淡々と戦わない理由を告げる。
「何故、トドメを刺さなかったのですか? チャンスはいくらでもありましたよね。殺して生首をヒーロー協会に送りつけたりしなかったのですか?」
「物騒な事を言うんじゃねーよ!! お前、マジでイカれてんのか!!」
「怪人はやりますよ。このくらい。プライドが高くて、人間を見下して、欲望に忠実で、ヒーローなんて自分の悪名を高める存在としか思っていない。それが怪人。私の求める怪人なのです。」
ガロウのペースを始終乱し、凶人は平坦な声で喋り続ける。
「ガロウ。貴方はいったい、何をしたいんですか?」
首を傾げる凶人に、心を見透かされるような瞳に、ガロウは言葉を詰まらせる。
そんな時、とても大きな地響きがした。
「え? 何? 何?? また超能力!?」
揺れが近づき、発生源から出てきたのは、巨大なムカデだった。