星になったヒーロー 作:日暮 蛍
突如現れた巨大なムカデの怪物、大怪蟲ムカデ仙人。
そのデカさに驚いた凶人はポカンと口を開けたままムカデ仙人を見上げていた。
「不遜なる小さき者よきけ! 神に仇なす忌むべき拳を滅すべく我らは遣わされた! この父なる大地の化身と、母なる海の化身によって神罰の下に滅せよ!」
「え?」
凶人がムカデ仙人が向いた方角を見ると、海が隆起しているように見えた。よく見る為に双眼鏡を取り出して覗き込むと
「げっ!?」
大量の海水を取り込み、巨大化したエビル天然水改めエビル海洋水が海から出てきて町へと向かっていた。
「あの水の化け物、いつの間にあんなパワーアップを!?」
これには流石に顔を引き攣らせる凶人。
「やなこった。」
そしてガロウは、そう言ってムカデ仙人の方まで跳び上がり、圧倒的な体格差に怯まずムカデ仙人の顔に強烈な攻撃を浴びせる。
「ハハハ! 神がビビる程の拳が手下ごときの手に負える訳ねーだろ!」
遥かに巨大なムカデ仙人をも怯ませたガロウは、跳び上がった事で遠くに見えるヘリを目撃した。そして、窓から子供の姿が見えた。その子供の名前はタレオ。前からガロウと交流のある子だ。
タレオの無事な姿を見てガロウは安心からか口元に笑みを浮かべる。
「オラッどうした! かかってこい!」
そして、ムカデ仙人が脱皮による超回復を見て、ヘリに攻撃が行かないよう気を引かせる為に挑発する。
「ほほォ。あのハエを気にしているな。」
しかし、ムカデ仙人にあっさりと見破られてしまった。
「何のことだ?」
ガロウはとぼけるが、ムカデ仙人はヘリに乗っている者達が人質に使えると思い、ガロウの動きを止めようとする。
「ピクリとでも動いて」
しかし話の途中でムカデ仙人の顔の横にある巨大な目にこれまた大きな矢が突き刺さる。
「あ。すみませーん! お話の途中でしたか?」
矢を射ったのは凶人だ。
人と同じくらいの大きさの弓を持って矢が刺さって痛みに悶絶しているムカデ仙人に詫びを入れながら矢を取り出して二射目の準備をしている。
「お前、お前は! 煽動者! 神の誘いを蹴り続けている不届者め!」
触腕を使って矢を無理矢理引き抜き、矢を射った凶人に怒りを向けるムカデ仙人。
「やっぱりアイツの関係者か。」
神という言葉を聞いて凶人は不機嫌そうに眉を顰める。
「知り合いならばアイツに伝言をお願いします。ちょっかいかけてくるな! お前の兵になる気はない! 他の人のついでにいちいち私を勧誘するな! とりあえず、以上!」
「この、罰当たりめぇ!!」
怒りに任せて、ムカデ仙人は凶人に向かって突進をかける。
「凶人!」
まともに攻撃をくらい吹っ飛ぶ凶人の姿を見て思わず名前を呼ぶガロウ。しかし、ガロウにはエビル海洋水によるさらに強烈になった水鉄砲を撃たれてしまい、大きなダメージを受ける。
「ん?」
一方で、ムカデ仙人による突進によって空高くまでまで吹き飛んだ凶人はあるものを見た。
海に一直線。
何かがエビル海洋水に向かって走っている。
「何だろ。」
凶人は双眼鏡をもう一度取り出してその正体を確かめた。
そして、息を呑んだ。
サイタマだ。
サイタマが海の上を走り、そのままエビル海洋水にパンチ1発をおみまいした。
海が割れるほどの威力のあるパンチによってエビル海洋水は沈黙した。
「サ、サイタマ様ぁ!!!」
エビル海洋水を倒したサイタマの姿を双眼鏡ごしで目撃した凶人は破顔する。
サイタマが近くに航行していた航空母艦のデッキに降り立ったのを確認すると双眼鏡から顔を上げる。
「サイタマ様が、サイタマ様がいらっしゃる!」
つい先ほどまでのやる気のなさや不機嫌そうな顔はどこへやら。
凶人は頬を赤らめて双眼鏡をしまう。
「よし! よし!! 元気でてきたぁ!」
地面に着地した凶人はやる気充分にムカデ仙人と対峙する。
「よぉし! かかってきなさい!」
しかしムカデ仙人は凶人をほっといてどこかへと走って行ってしまった。
「あれぇ!?」
「おい凶人ついて来い!」
「え? え?」
ガロウにそう言われ、戸惑いながらも跳んで走るガロウについて行く。
「アイツの狙いはあのヘリだ!」
「ヘリ?」
ガロウが指差した方を見上げれば、夜空で分かりにくいが凶人にも飛んでいるヘリが確認出来た。
「あっ本当だ。」
「あのムカデはヘリに乗ってる奴らを狙ってる!」
「え!?」
「止めるぞ!」
「はい!」
なぜそんな事を?
なぜ怪人を自称するのに人助けを?
色々と疑問が湧く凶人ではあったが、今は人命最優先。
ガロウの事は一旦棚上げをしヘリに乗っている人達を助けに凶人は跳んで向かう。