星になったヒーロー 作:日暮 蛍
ガロウがムカデ仙人を瓦割りのように縦真っ二つにする瞬間を地上で目撃した凶人は声が出ないほど驚いて口をあんぐり開けて、金属バットは不敵に笑う。
そこでふと、凶人は足元から振動を感じた。
ムカデ仙人とはまた違う何か、と感じた凶人は垂直に高く跳ぶ。
そしてキョロキョロと周囲を見回して、あるものを見て、顔を青ざめさせた。
「あっ凶人。どうしたんだよいきなり。」
「凶人。仮面を取ったのか。」
着地すれば金属バットは前触れなく跳んだ凶人を懸念してくる。
凶人が跳んでいる間に合流してきたアマイマスクは凶人に近寄る。
「まぁいい。それよりもどういう状況か説明を」
凶人は近づいてきたアマイマスクを掴み、金属バットも掴み、うつ伏せの状態で重ねて長いリボンを取り出してあっという間に新聞紙や古雑誌のように結んで2人を固定した。
「「...は???」」」
2人が抵抗する間もなくあっという間に行われた訳の分からない所業。
凶人は結び目の部分を掴み、2人を片手で持ち上げて勢い良く跳んでいく。
「おいゴルァ凶人!! いきなり何すんだテメェ!!?」
「そうだ!! ボク達をこんなぞんざいな扱いをして、いったい何がしたいんだ!?」
持ち上げられても体に痛みは無いように工夫しているのだが、いきなりこんな状態にされた事に当然金属バットとアマイマスクは怒り出す。
そんな2人の苦情に答えず凶人は垂直に高く跳んだ時に見つけていた気絶しているフラッシュの元へと向かう。その側には怪人であるマナコがフラッシュを起こそうとしている姿が見え、敵意も殺意も感じなかった為ひとまず凶人はマナコとフラッシュもリボンでまとめて、もう片方の手で掴む。
「え? え? ...えぇ!!?」
いつの間にか荷物のようにフラッシュとまとめられてしまったマナコ。
混乱し、ようやく自分の身に何が起きたのか分かり、そしてどうしてこうなったのか分からずただひたすらに困惑していた。
「おい凶人!! 黙ってないでさっさと解け!」
「おい暴れるな金属バット!」
金属バットは抜け出そうともがくが、リボンは凶人が作った物の為とにかく頑丈であり、結び方もかなり特殊な為全く解けない。
暴れる金属バットに構わず凶人は先ほどから後ろを気にし、立ち位置を細かく調整している。
「え? 何? 後ろに何かあるんですか?」
マナコは凶人が後ろを気にしている事に気がつき、どうにか後ろを見ようとしたところで凶人が高めにジャンプをした。
「えぐぅっ。」
そして、津波に流されてきた超原子力空母、ゴッツオッキーに背中を激突させる。
「「えええええええええええぇぇっ!!??」」
怒りの感情は吹き飛んでいった。
マナコと金属バットは絶叫し、アマイマスクは目を見開き、フラッシュは気絶したまま。
「さっきからすみません皆さん! 説明する時間がなかったので手荒な真似をしました。」
凶人は空母に押し出され、金属バット達に被害が及ばないよう腕の位置をずらさないようにしている状態でようやく説明を始めた。
「津波が来る事に気がついて、跳んでも追いつかれちゃうし、どうすればいいのか考えて、結果皆さんをこんな形で運ぶ事になって、本当にすみません!」
津波の音にかき消されないよう凶人は大声を出して何とか伝わるよう拙い説明をする。
「いやお前大丈夫なのかよ!?」
凶人の奇行が自分達を助けようとするものだという事は伝わったが、それよりも空母に激突し今も押し出されている凶人の身を金属バットは案じた。
「大丈夫ですよ。」
「本当に!? さっき思いっきりぶつかってましたよね!」
「平気ですよ。」
怪人のマナコも心配になる程だ。
しかし凶人は特に気にせず前を向く。
「あっ。皆だ。」
空母が向かう先にはキングやジェノス、そしてフブキ達が集合していた。
金属バット達も皆の姿を確認出来た。
「...待て。このままじゃあそこにいる全員この船に轢かれるんじゃないか。」
「おいヤベェじゃねえか!」
「大丈夫。」
アマイマスクや金属バットの心配そうな声に対して凶人は自信満々に大丈夫と言い放った。
なにせ、空母の上にはサイタマが乗っているのを凶人は見ていた。
だから、大丈夫。
凶人の思っていた通り、母艦はキング達の近くで方向転換し停止し、その上にガロウが真っ二つしたムカデ仙人の死骸の片方が落下する。キング達には激突しなかったが、急な方向転換によって凶人達は放り出される。
「いやあああっ!!」
マナコは悲鳴を上げるが、凶人は誰1人落とさず着地をし、津波に呑まれる前に皆の元へと勢いよく跳ぶ。
そして、反対方向から豚神が波をかき分けて皆の上から現れ大きな口を開けて皆を体内に入れようとしているのを目撃した凶人は金属バット達を皆の元へと投げる。
「そのまま口を閉じてて豚神!!」
豚神の口の中に皆が収まったのを確認した凶人は豚神の背中にしっかりとしがみつく。
「痛かったらすみません。」
豚神が口に手を押さえて凶人の目を見てしっかりと頷く。
そして豚神と凶人は強烈な波に呑み込まれていった。