星になったヒーロー 作:日暮 蛍
町に怪人が出没し、凶人として現場に向かったアズマだったがすでにサイタマが怪人をワンパンで倒した後だった。
町の人々がシェルターに避難している為静かな町の中で共に帰る途中、サイタマは前々から気になっていた事をアズマに聞いた。
「その靴歩きにくくねぇの?」
サイタマが指差した先はアズマが履いている厚底のヒールレスの靴だ。よくよく見れば厚底の靴には綺麗な細工が施されている。
「ハイヒールと同じで慣れてしまえば大丈夫ですよ。こう見えて結構安定感があるのです。」
「へー。」
そして、視線を少し上にあげれば和服にフリルやレースを付け足して改造したような服装が目に入る。
形は違えどいつも派手な服装にサイタマはまた新たな質問をアズマに投げかける。
「靴もだけど服も動きにくそうだな。」
「まぁ、確かに。結構飾りがついてますしね。サイタマ様のヒーロースーツに比べてしまえば機能性はかなり劣りますね。」
「もうちょい動きやすいのにしたらいいんじゃねーの?」
「まったくもってその通りですが、作っていくうちに色々と付け足してしまうんですよね。気が付けばこんな風に派手なものになってしまうのです。」
「オシャレは我慢って言葉があるけどさ。いくら好きだからって、怪人と戦うんだから動きにくいのはどうかと思うぞ。」
「え。別に好きじゃありませんよ。」
「好きじゃねぇの!?」
「はい。」
とんでもない事実を聞かされたサイタマは仰天する。
「じゃあなんで厚底の靴とかそういう派手な格好をいつもしてるんだよ。」
「作るのは好きなんですよ。そして作った以上は使わなければ勿体ないじゃないですか。」
「まぁ、そうだけどさ。」
改めて、サイタマはアズマの履いている厚底の靴に目を向ける。
「やっぱ歩きにくそうな靴だな。」
「...気になるようでしたら、履いてみます?」
「え?」
アズマからの思いがけない提案にサイタマはきょとんとする。
立ち止まったアズマが懐を探り、また別の厚底のヒールレスの靴が取り出された。アズマが今履いている靴と比べてシンプルなデザインだ。
「こちらは以前その靴って歩き難くないの? という世間の質問に答える為にテレビ局に提出したフリーサイズのものとなっております。」
「やっぱそう思うよな。」
そんなこんなで、サイタマはアズマのお言葉に甘えて履いてみる事にした。
「おっ。おー。確かに、結構安定感があるな。」
「あぁ良かった。」
いつもより視線が高くいつも履いている靴とはまた違った感覚であり、見かけに反してかなりの安定感がある靴にサイタマは感心していた。
「これアズマが作ったんだよな。すげーな。」
「勿体なきお言葉です。」
サイタマが自分の作った靴を履いただけでなく、技量を褒められた事にアズマは頬を赤く染めて照れる。
そんな時、新たな怪人が現れた。
「怪人!」
「よし!」
サイタマはいつも通り倒そうと足を踏み出して、そこでいつもとは違う靴を履いている事を思い出し、踏みとどまろうとして
サイタマは意図せず大きく飛び上がった。
「...え?」
厚底靴の仕掛けによって空高く飛んだサイタマにアズマは呆然とする。
サイタマはそのまま落ち、怪人の脳天を貫く形で着地した。
まさかの結果にアズマは口を大きく開けて呆然とするが、すぐに我に帰りアズマはサイタマの靴を持ってすぐさま駆けつける。
「サイタマ様! ご無事ですか?」
「ごめんアズマ。靴、壊しちゃった。」
怪人の死骸の上に座り込み申し訳なさそうなサイタマの足元を見れば靴底が剥がれて無惨な厚底の靴が目に入った。
「いえそんな、お気になさらず! それよりもお怪我は? 足首は捻っていませんか? 返り血などはこちらのタオルでお拭きください。」
「大丈夫。ありがとな。」
サイタマにタオルを手渡したアズマは壊れた靴を脱がして回収し、ブーツを受け取ったサイタマは慣れた手つきで履く。
地面に足をつけた2人は再び歩き出した。
「申し訳ありませんサイタマ様。まさかこのような事になるなんて。」
「いいって。こっちも靴壊したし。おあいこって事で。」
「ありがとうございます。」
サイタマの言葉になんと寛大なお方なのだろうとアズマは感動する。
そしてサイタマは改めて今履いているブーツの履き心地を確かめる。
「やっぱ履き慣れた靴の方がいいな。」
「おっしゃる通りです。」