星になったヒーロー 作:日暮 蛍
津波が収まり、ゴーストタウンが水没してしまった。
豚神を仰向けにして押しながら泳ぐ凶人は水に沈んでおらず充分広い場所を見つけ、そこを目指して泳ぐ。到着すると豚神を引き上げる。
「ここなら皆さんを出しても大丈夫ですよね?」
豚神が頷くと、口を大きく開けて体内に匿っていた皆を解放していく。金属バットとアマイマスク、フラッシュとマナコを見つけると凶人は裁ち切り鋏を取り出して手早くリボンを切り拘束を解く。
「えぇと。いない人はいないですか? えっと。えっと。あぁ知らない人がいる。」
裁ち切り鋏をしまった凶人ははぐれた人はいないか確認をとろうとするが誰がいて誰がいないのか正確に把握出来ずにいた。
「えっと。えぇと。」
「落ち着けアズマ。」
軽いパニック状態になっている凶人の肩に手を置いたジェノスはそのまま凶人を皆から少し離れた場所へと誘導する。
「人数確認はこちらでする。お前は少しここで座って休め。」
「うう。...お言葉に甘えてそうさせてもらうね。」
不甲斐ない気持ちになったが冷静に判断が出来るジェノスに任せた方がいいと判断した凶人は素直にジェノスの言う通りに瓦礫の上に座り込む。
「凶人は大丈夫そうか?」
「大丈夫だ。よくある事だ。少し休ませれば落ち着く。」
アトミック侍をはじめ他のヒーロー達はずっと動きっぱなしの凶人を心配していた為、休む姿を見れたので少し安心した。
凶人の方はぼんやりと水没した周囲をぼんやりと眺めていた。
「...ん?」
ふと、遠くから何かが見えた。
目を凝らして見ると、人が乗っているボートがいくつか確認出来た。
「ねぇねぇ! ボートが見えます! 人が乗ってます!」
「何?」
凶人は急いで皆に知らせた。
◆◇◆◇◆
「みんな! よく生き残ってくれた!」
ボートに乗っていたのは救助ヘリに乗っていた者達と救援に駆けつけて来たヒーロー達だった。
合流を果たすと仲間との再会に喜び、無事を確認し合い、怪我の心配をしたりとそれぞれ会話していた。
「...サイタマ様、いない。」
「先生ならきっと大丈夫だ。」
「うん、そうだね。」
不安な気持ちはあるが、サイタマならきっと無事だと信じようとする凶人とジェノス。
「おい、あれ。何だ? あの雲。」
救援にやって来たヒーロー、イナズマックスの言葉に反応して凶人は空の方を向いた。
空には円の形をしたものがいくつも重なっている奇妙な雲が浮かんでいた。それが雷を宿したように光り、いくつも出現する。明らかに自然現象のものではない。
「何だあれは。」
奇妙な光景を目の当たりにして困惑するジェノス。
凶人はその光景を見て、唇を噛み嫌悪の感情を浮かべた。
雷雲が突如消え失せた。
重なる異常現象に困惑するヒーロー達。
その直後、遠くで大きな爆発が起きた。
爆風に飛ばされないよう必死に耐えたヒーロー達が次に見たのは、爆発によって発生したキノコ雲に映る2つの人影だった。
その内の1つの影が凶人とジェノスにはサイタマの姿に見えた。
「な、何と何が戦っとるんじゃ!?」
人影が動くと真夜中の中辺りが昼間のように光り、爆発が起き人が飛ばされるほどの強い爆風が吹き荒れる。
「...まずいな。」
小声のジェノスの言葉に凶人は頷く。
「確かに、爆風が凄いから避難しないと危ないよね。」
「そうじゃない。今、この場に強い放射線の反応が出ている。」
「...え?」
「原因はおそらくあの爆発を起こしている存在だ。」
一瞬、凶人にはジェノスが何を言っているの分からなかった。
「このままだと、全員死ぬぞ。」
凶人の顔から血の気が引く。
理解を拒みたかった。
ジェノスの勘違いだと思いたかった。
しかし、皆の様子を見ると鼻血を出していたり具合が悪そうな者がちらほら見かけた。
「ど、どう、どうし」
凶人はどうすればいいのか分からなかった。
何とかしなければならないとは分かっているのだが、人を救う方法を知らない凶人には何も出来ない。
凶人がパニックになりかけた時、皆のすぐ目の前で何かが降って来た。