星になったヒーロー 作:日暮 蛍
ジェノスから見たアズマの第一印象は怪しい奴だった。
仮面をつけて、派手な格好をして、センサーにも反応しないほどの高度な気配遮断を行えるアズマをジェノスは強い警戒を抱いた。
しかし、サイタマの熱烈なファンと知りすぐに打ち解けた。
そのすぐ後に凶人という名でヒーローをやっている事を知った。
強い他殺願望を持っている事もこの時に知ったが、一般市民に直接迷惑をかけてはいない為最初の頃は放置しており、最近では時折無駄に命をぞんざいに扱うなと警告するくらいだった。
交友を重ねていくうちに、アズマの事を知っていくジェノス。
多趣味で、情緒不安定で、行動力があり、精神年齢は少々幼く、感情豊かで、理解し難い嗜好を持ち合わせ、機械よりも頑丈な肉体を持ち、一般市民と同じ感覚を持っている。
不安定であり、それでも自分の意思を貫く芯がある。それがジェノスから見たアズマだった。
ジェノスはアズマの強さを信頼していた。
殺されたいと常に願い、それを叶える為に笑いながら無謀な突撃を繰り返し、その度に生還してくるアズマの実力をジェノスは何度も近くで見てきた。
だから、無意識に。
アズマは死なないと思っていた。
どれだけ本人が殺されたいと言ってもその強靭な肉体を傷つけられる事など全く想像が出来なかったからだ。
「俺はブラスト。細かい事情は後回しだ。ガロウは神によって手先にされている!」
「な、何じゃと!」
変貌したガロウを凶人が連れ去った直後、S級1位のヒーロー、ブラストが空間を歪めて現れてそう言い放った。
「ガロウが放つ宇宙放射線に耐えられる人間はいない。ここは危険だ。すぐに全員避難させる。」
「待て。」
ブラストが拳と拳をくっつけ何らかの力を行使しようとする前にジェノスは止める。
「凶人は、どうなる。アイツはガロウと接触したんだぞ。」
ブラストは、何も言わなかった。
答えられなかった。
「ジェノス君!」
すぐにジェノスは凶人を追いかけて行った。後ろからバングに名前を呼ばれたが、ジェノスは振り返らない。一刻も早くアズマの元に向かっていく。
ガロウの放つ宇宙放射線とやらのせいでアズマの反応が確認出来ないせいだと自分に言い聞かせ、アズマが跳んだ方角へと飛んでいく。
この辺りかと一旦立ち止まり、周囲に目を配らせている間に
胸にべちゃりと音を立てて何かがぶつかった。生暖かい液体が身体につく。
ジェノスは、それが何なのか確認しなかった。
確認したくなかった。
崩れ落ちそうな足を堪えて、前へと進む。
そうして、ジェノスは見た。
赤。
赤赤。
赤赤赤赤赤赤赤赤。
赤いものが地面に散らばっていた。瓦礫に赤いものが付着していた。
「鬼サイボーグか。」
ガロウの声がして、そちらの方へと視線を向けたジェノス。
ガロウは、何かを掴み上げていた。損傷が激しかったがその一部に、見覚えがあった。
アズマが身につけている星座の刺繍が入ったマントだ。
「次はお前か。」
ガロウは掴んでいたものを地面に落とす。
「...ん? あぁそうかお前、こいつの友達なんだっけな。」
何も喋らず、ガロウが地面に落としたものに視線を釘付けになっているジェノスを見て察したガロウは、ジェノスに正直に話した。
「凄かったぜ。こいつ、上半身だけになっても俺に立ち向かってきたんだ。ヒーローってのはしぶといなぁ。」
考える前に、ジェノスは叫び声を上げてガロウに立ち向かっていった。
「健気なモンだな。」
「よくも、よくもアズマを!!」
「...ほォ。あのハゲ、S級ヒーローのお前を弟子に従えるクラスだったのか。どうりで。」
攻撃はことごとく流され、首が掴まれ、思考を読まれてもなおジェノスは攻撃を続けた。
友を失った悲しみを誤魔化すように、怒りに身を任せた。
皆の避難を完了させ、ジェノスとガロウの元へと駆けつけ、凄惨な現場を見て言葉を失っていたブラストだったが、ガロウに捕まってしまったジェノスを救おうと自信もガロウとの応戦を始める。
不思議な力を行使して時空操作をしジェノスと引き離し、ガロウを翻弄するが、ガロウはその力すらもコピーをし逆にブラストを翻弄する。
「なるほど。S級一位ってのはダテじゃなさそーだな。だが今の俺はてめーなんぞ眼中にねえんだ。」
ジェノスの焼却砲すらものともせず、ガロウはジェノスの腕を掴んで引き寄せ、手刀を構える。
「よせ!!」
ブラストは叫び、止めようとしたが、間に合わなかった。
ガロウの手刀がジェノスの胸を貫く。
生命線であるコアを抜かれたジェノスは、地面に倒れ、そのまま動かなくなってしまった。
サイタマの本気を引き出す為に、弟子であるジェノスの命も奪ったガロウ。
「あーあ。殺しちゃった。」
背後から、アズマの声が聞こえた。
驚きすぐに後ろを向くと、死んだはずのアズマの姿が見えた。