星になったヒーロー   作:日暮 蛍 

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逆行

サイタマとガロウの拳がぶつかり合う瞬間、その衝撃で地球の破壊を危惧したブラストが2人を宇宙空間にワープさせ、木星の近くまで飛ばした。

 

木星の月に着地した2人はそこで激戦を繰り広げた。

 

サイタマの常識はずれな戦い方に翻弄され、最初のうちは拮抗していた実力もすぐに追い抜かれ、最終的には理不尽な強さを見せつけられたガロウ。

サイタマから逃げる為にサイタマを吹っ飛ばしてその隙にブラストの技をコピーして得た力で亜空間ゲートを開き地球の前までワープしたのだが、すぐにサイタマに追いつかれてしまいそのまま殴られサイタマと共に地球に落下した。

 

「ヒーローを倒すんじゃなかったの?」

 

そうして地面に激突し、ガロウは再び現れたアズマ(毒)に見下ろされていた。

サイタマには見えていない。聞こえていない。

 

「うる、せ」

「へえ。元いたとこにドンピシャ...お前ここを狙ったのか?」

「ガハ...どうした、やれよ。何故殺さない。」

「...早着替えしたお前やキングと比べるとほとほと自分の向いてなさに嫌気が差すけど、オレはヒーローだからな。お前を殺さないで止めてくれってのがあのガキの遺言でもあるからさ。」

「ゆ、遺ご?」

「ガキって、あの子の事?」

 

ガロウの足元にしゃがみ込んだアズマ(毒)はある方向へと指をさす。つられて頭を動かしたガロウは、見てしまった。

 

「タ...」

 

子供が、タレオが倒れていた。ガロウを止める為に皆から離れていた為、避難が間に合わなかった。

ガロウが守りたかった存在が、息を引き取っていた。

 

「ウ、ウワアアァアァアアアああッ!!!」

 

ガロウはサイタマとアズマ(毒)に背を向けてタレオがいる場所とは反対方向へと走り出した。

 

「おい。どっち行くんだよ。ガキはあっちだぜ。」

「オッオレがッ! オレが側にいたせいで!! オレがッッ」

 

涙を流し、悲しみと後悔に心が支配されて不安定なガロウは瓦礫に足を取られ派手に転んだ。

 

「タレオ...そうか。オレは、オレは、不吉な未来ってワケか。」

「空から降ってきた時からお前ヘンだったぞ。おかしなのに何かされたんじゃねーのか?」

「本体(私)も散々言ってたでしょ。神のせいで精神汚染されてるって。」

 

止められなくて、ごめんね。

 

アズマ(毒)の言葉に、凶人の言葉を思い出す。

 

ようやく、ガロウは凶人が命をかけてまで必死にガロウを止めようとした訳が分かった。こうなると分かっていたから、ガロウが深い絶望と果てしない後悔に呑まれると分かっていたから、凶人は何としてでも止めたかったのだ。

 

「...だとしても、それは俺の心が弱いせいだ。」

 

それを、ガロウ自らの手で殺してしまった。

 

「笑い話だぜ。お前に勝てない限りオレは絶対悪になれない。その上俺を倒したヒーローは、ヒーローに向いてないだと? せめてヒーローらしく、狂った正義を振りかざして自信満々に殺してくれれば悪として散れたのに。」

 

サイタマと現実によって打ちのめされた事で悪として取り繕う余裕はすっかり無くなっているガロウは、本音をこぼした。

 

「世界を変えて、真っ先に救済したかったヤツもオレのせいで...」

「救済したい? すがってたんじゃないのか?」

「すがるだと、俺がか? てめェに何が解」

 

起き上がり、サイタマを睨もうと顔を向けたガロウは、サイタマの手元にあるヒーロースーツを犠牲にしてまで守り抜いたアズマの返り血がついたジェノスのコアを見て、悟った。

 

すがっていたのは、サイタマも同じである事を。

 

「お前これからどうすんだよ?」

 

座り込んだガロウは暫し考えた。今の自分に出来る、何かを。

 

そして、思いついた。

 

「...頼みがある。」

 

立ち上がったガロウにアズマ(毒)は咎めるように話しかけてきた。

 

「まさか介錯を頼もうとしてないよね?」

「しない。そこで見ててくれ。」

「? 何の話だ?」

「気にするな。」

 

そうして、ガロウがするサイタマへの頼み事は

 

「コピー? お前の真似ッコ武術をオレに真似ろって?」

「言い方。」

 

自身の武術の伝授だった。

 

「お前ならオレの術理をコピーして更に上回れる筈だ。神の力を盗んでなお成し得ない俺のイメージする俺の拳の最終最高奥義。それを今からお前に伝授する。有り難く思えよ。」

「どんな頼み方だ。あんま興味ねーんだけど。つかそれを今やってどーなるんだ?」

「そーだそーだ。」

「やりゃあわかる!」

 

ガロウの決意を固めた目を見て、アズマ(毒)は黙り、サイタマはガロウの頼みを引き受ける事を決めた。

 

「...わかったよ。んじゃ貰えるもんは貰っとくか。」

「いきなり免許皆伝ってのもオマエらしいぜ。さあよォく見ろ。」

 

ガロウは構えをサイタマに見せる。

 

「お前なら神の手を借りずに神の力を会得する事だって出来る筈だ。」

 

『黙れ。没収だ。』

 

その時どこからともなく声が聞こえ、そのすぐ後にガロウの足元が白く変色し、結晶化していく。結晶化はどんどん広がっていきガロウの身体が崩れていく。

 

「オイ」

「集中しろ!」

 

しかし、それに構わずガロウはサイタマへの奥義伝授を何よりも優先した。

サイタマもガロウの意図を汲んでガロウの構えを見て、奥義習得に集中する。

 

「さあ倒して来いサイタマ!」

 

ガロウの奥義を会得したのか、サイタマは全身が後ろに強く引っ張られるような感覚がした。

 

「お前なら出来る。お前が倒すのは、不吉な未来だ!」

 

そうして、サイタマはガロウが生み出した奥義によって時間を逆行しはじめた。

 

残ったガロウは全身結晶と化した。

 

「...ちゃんと見てたよガロウ。」

 

同じく残ったアズマ(毒)はタレオの方へと目線を向ける。

 

奥義の伝授の前にタレオに別れを告げていたガロウの姿を思い返して、最後にアズマ(毒)は微笑み、消えていった。

 

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