星になったヒーロー 作:日暮 蛍
3人がガロウや他のヒーロー達がいる場所まで戻ってくると、ガロウにやられたヒーロー達が怒りに任せてガロウを囲んで殴ったり蹴ったりしていた。
「うっわ。リンチってやつですね。」
皆の怒りはごもっともとは思いつつも場の険悪な雰囲気にアズマは少し引いていた。
「人間怪人もすっかり怪人化が進んでしまっている。彼の処刑は満場一致で動かせない決定事項だ。」
「俺は賛同した憶えねーぞ。」
「俺も俺も。」
「私達も異議ありです。」
「ン? 凶人と、何だ君は。」
アマイマスクがガロウの処刑を唱えているのが聞こえ、サイタマ達は割って入る。
「この方はガロウを倒したヒーローであるサイタマ様です。」
「何?!」
「めまいでよく見えなかったんだが、それは本当か?」
「そうらしいけど、よく憶えてないんだよな。」
「...先生。ガロウの処遇を決める資格があるのは先生だけだと俺は思います。」
「なんでだよ。まあ資格とか処遇とかわからんけど、あいつもあえて殴らせてる感じするし、互いの気がすむまでやらしておけばいいんじゃないの。まあ効いちゃいないんだろうけど。」
サイタマはそう言うが、無抵抗でやられているガロウの様子を見て違和感を感じた。
「まて。こいつに聞きたい事がある。」
「ゾンビマンさん。」
ガロウを取り囲む皆に割って入ったゾンビマンはガロウの前に立ち質問を投げかけた。
「ガロウ。人間が怪人化したところであの規模のチカラが得られるとは思えない。チカラの出処が別にあってお前はその触媒にされてたんじゃないのか? 例えば、カミだとかに。」
カミという単語にアズマとフラッシュは反応を見せる。
「敵幹部の一人にそんな兆候があった。」
「...ジャージの人か。」
「カミ。ブラストもたしかそんな事を。」
ガロウの方はゾンビマンの質問に対して可笑しそうに笑い出す。
「クク、クックッ、ハハハハハハ! 何を言い出すかと思えば、カミだと!? 寝言ほざきやがって。全部、俺の意思でやった事だ! さあ! さっさと殺せよ!! 殺しやがれ!!!」
「...ガロウ。」
ガロウの目にはもう生気が感じられない。生きる気力がない。
そんなガロウの姿を見てアズマはやり場のない気持ちで胸がいっぱいになる。
「フ。本人たってのご希望か。じゃあ処刑を執行」
「待って!!!」
アマイマスクがガロウにトドメを刺そうとした時、アマイマスクの足にタレオがしがみつく。
「みんなひどいよ! ヒーローなんでしょ!? 何でこんな事するの! おじさんは僕を何回も救ってくれた本物のヒーローなんだよ! おじさん!! 早く逃げて!」
泣きながらガロウを逃がそうと必死なタレオの姿を見て、アズマは決意を固める為にサイタマに声をかける。
「サイタマ様。行ってきてもいいですか?」
「おう。行ってこい。」
サイタマの後押しのおかげでアズマは真っ直ぐと歩き、ガロウとアマイマスクの間に入る。
「もうやめましょうアマイマスク。」
「どくんだ凶人。そいつは怪人だぞ。」
「後は警察や裁判所に任せましょう。この子の言う通り、これ以上はヒーローのやる事じゃありません。」
アズマはガロウを守るようにアマイマスク達の前に立ち、タレオに微笑みかける。
「ガロウのそばにいてあげてください。」
タレオは頷き、アマイマスクから離れてガロウの側に駆け寄る。
アマイマスクはアズマを睨みつけ、ガロウを庇うタレオとアズマに他のヒーロー達は困惑し騒めく。
すると、辺りに爆音が鳴り響く。
「よさないか君たち。子供の前だぞ。」
キングエンジンを最大音で鳴り響かせるキングにヒーロー達はキングを怒らせたと顔を青ざめさせ、一気にガロウから距離をとる。アマイマスクは口を挟もうとしたが、キングに鋭い視線を投げられた為黙り込む。
「キング、さん。」
涙目でキングと視線を交わすタレオ。
少し前におじさん、ガロウをいじめないでとタレオと約束していたキングはきちんと約束を守ったのだ。
「ガロウ。」
そしてもう1人、ガロウを生かそうとする者がいる。
ガロウの師匠、バングだ。
「そうカンタンに捨てバチにはさせんぞ。人に害を為したなら何十倍何百倍もの人を助けて償うんじゃ。」
「絶対悪はそういうの得意だもんな。よかったじゃん。お前が本当は何者なのか皆が教えてくれてさ。」
タレオ達の言葉を受けて、ガロウは俯き口を開く。
「オレを生かしておくってのか? 後悔するぜ?」
「後悔もなにもねえよ。オレお前にお礼言いそびれてたんだ。ジェノスとアズマとキング助けてくれたのってお前だろ? ありがとな。」
「あっ。お礼なら私も。ムカデの怪物の時は色々とありがとうございました。」
「...チッ。つくづく嫌なヤツらだ!」
そう言って顔を上げたガロウの目には生気が宿っており
気がつけば、ガロウは姿を消していた。
「逃げたぞ!」
「どっちに行った!?」
「クソックソッ!!」
皆が騒ぐ中、アズマは体をふらつかせてサイタマとジェノスの元へと戻る。
「...奴は再犯するでしょうか。」
「大丈夫じゃね。あとの事はジィさんに任せるべきだろ。」
「そう、ですね。これで、終わり、ですよね。」
うつらうつらと頭を揺らし、そのままアズマは2人の目の前でバタンと倒れた。
「アズマァ!?」
慌てて駆け寄るサイタマとジェノス。
それと同時に地面や空から大量の機械が襲来してきた。
「メ、メタルナイト!?」
全てS級ヒーローの1人、メタルナイトが操るロボットだ。
「脅威は去ッタヨウダナ。オレノ設計シタ艦が核攻撃ヲキャッチシタ。コレヨリ放射性降下物ノ除去ト攻撃ノ分析調査ヲ開始スル。オ前達全員ニ急性放射線障害ガ出テイル。強制的ニラボデ検査ト除染処置ヲ受ケテ貰ウゾ。」
「は、はい。」
遠隔操作のロボット越しでヒーロー達に有無を言わさず決定事項を伝えるメタルナイトに皆はおとなしく従う事にした。
「じゃあその放射、ナントカでアズマは倒れたのか!?」
「...いえ、先生。寝てるだけです。」
「え?」
「おそらく、ずっと動き回って体力が無くなり疲れて眠っただけのようです。」
具合が悪くてアズマが倒れたのかと慌てふためくサイタマだったが、すぐにアズマのバイタルをチェックをし脈を測っていたジェノスはアズマが疲労からくる強い眠気に襲われてそのまま眠ってしまったと診断した。
落ち着いて見ればアズマは規則正しく寝息を立てている。
「...なんだ。あーびっくりした。」
アズマの体調に問題ないと知り、サイタマとジェノスは心底安心する。
「たくっ。しょうがねぇな。」
そう言ってサイタマはアズマを背負う。
心なしかアズマの寝顔が嬉しそうに見える。
そして朝日が昇っている事に気がつき、水没したゴーストタウンを見てサイタマはため息を吐いた。
「...とりあえず、クセーノ博士に身体修理してもらってさ、一緒に家財道具探そうぜジェノス。潮干狩りで。」
「ハイッ!!!」