星になったヒーロー 作:日暮 蛍
会議室に集まったメンバーはシッチ、セキンガル、アマイマスク、フラッシュ、ゾンビマン、ジェノス、凶星の7人だ。
「さて、今日緊急招集したのは他でもない。先般の怪人協会掃討作戦において諸君から幾つか不可解な事象が報告されていたからだ。例の地球がヤバいの大預言とも関連する可能性が高い。今日情報をすり合わせ公式な見解として通達するまで出席者はここで交わした情報は厳に他言をつつしんでいただきたい。いいかな?」
「わかった。」
「はい。」
「そりゃ構わんが、この期に及んで何故秘密にするのか理解できんぜ。」
「ヒーローさえいつ誰が怪人にされてもおかしくない状況だと報告しただろう。注意を促すべきだ。」
ゾンビマンの発言にフラッシュも同意する。
「その通り。だからこそ情報と対策をはっきりさせてから公表すべきなんだ。今発表してもヒーローや市民が疑心暗鬼を募らせるだけだ。」
「隣の人間がいつ怪人化するか判らないという恐怖と不安でパニックにもなりかねん。」
それに対して異議を唱えるシッチとセキンガル。
「待ってくれ。」
そこに割り込んできたのはアマイマスクだ。
「話が見えないだが、順を追って聞かせてくれないか。」
「アマイマスク。報告書に目を通してないのか。」
「生憎撮影で忙しくてね。相談役としての立場上出席させてもらってるが後のスケジュールもカツカツなんだ。説明は手短に頼むよ君達。」
少し場の空気がピリついたが、ジェノスと凶星は特に気にせず思い思いに話し出す。
「じゃあ俺達から説明した方がいいな。サイタマ先生の活躍についてだけでも3時間は尺をもらいたい。」
「待ってジェノス君。いきなり3時間は流石に長いよ。まずは短い解説で興味を惹かせてそのままどっぷりハマらせないと。」
「趣旨違ってないか?」
ジェノスと凶星に話の主導権を渡しては話が長引くと判断したシッチはまずゾンビマンに話を振る事にした。
「ゾンビマン君。君は交戦した怪人協会幹部、ホームレス帝から特殊な怪人化の経緯を聞かされたとあるが。」
「ああ。奴は人間だった頃にカミを名乗る何かから神通力を授かったといっていた。」
「...カミ?」
「戦闘中隙を見て取り押さえ色々吐かせてやろうとしたんだが、いきなり塩か灰の様に崩れてくたばっちまった。カミ、とだけ言い残してな。タイミング的に口封じの様にも見えたぜ。」
「...その時テレパシーで何かに話しかけられるような事は?」
「いや?」
ゾンビマンに質問したフラッシュは今度は自身の体験した出来事を話し始める。
「俺がアジトの深部でハゲマントやマナコと行動中に遭遇した何かは」
「? マナコ?」
「...いや。そいつは力の付与をこちらに持ちかけ、与えるに足る器でなければ没収すると俺達の頭に直接伝えて来た。」
「あ、そういえば。死に際にあいつにだけ何か聞こえていたのかもしれん。そんなそぶりだった。」
「ホームレス帝の死が没収によるものだとすれば我々が遭遇したのは同じカミとみてよさそうだな。」
「カミねぇ。どれも怪人協会のボスの仕業じゃないのか? ギョロギョロの正体は超能力だったそうじゃないか。」
「だとしたら幹部一人にだけ力を与えるのは不自然だし、ブラストが行方をくらませてまで追う程の相手ではないだろう。」
「!? ブラストが?」
そうして、ゾンビマンは口を挟まず黙って話を聞いている凶星に質問を投げかけた。
「お前は何か知ってるか凶星。」
「...何か、とは?」
いきなり話を振られても凶星は落ち着いておりじっとゾンビマンを見据えている。
「他のヒーロー達の証言だとお前、ホームレス帝にだけ強い敵意を向けて睨んでいたみたいだな。普段のお前なら、あれだけ強い怪人なら笑って受け入れると思うんだが?」
ゾンビマンの指摘に凶星は一旦視線を逸らしてじっと考え込み、再びゾンビマンに視線を向ける。
「ホームレス帝に力を与えた存在には心当たり、というよりも接触した事があります。」
「何!?」
「どういう事だ!」
凶星の発言にゾンビマン達は目を剥く。
「最初は...1年前ですかね? 画家としての仕事の依頼が入って指定された場所に向かいました。初めて聞く宗教の本部で、名前は、忘れました。そこでの宗教画を描いてほしいと頼まれました。しかしその前に、これに触ってほしいと箱を見せられました。」
「箱?」
箱と聞いて、フラッシュは怪人協会アジトの深部で偶然見つけたやたら重い箱状のものを思い浮かべる。
「断る理由は無かったので触ったら急に景色が変わって、目の前に両親がいました。」
「...両親?」
「はい。私の。具代的な事はもう思い出せないのですが、優しい言葉をかけられたのは覚えてます。それで、手を差し伸べられたので手を取ろうとしたのですが、直前になって手を払いました。」
「ん? 何故だ?」
「私の両親が優しい事を言うわけがない。これは偽物だ罠だと思ったからです。」
凶星の暗い家庭事情の一端をうっかりと聞いてしまった皆の間に気まずい空気が流れたが凶星は気づかないふりをして話を続ける。
「で、手を払ったらいきなりおかしな力が身体中に巡るのを感じて、このままじゃ怪人になると思って、気がついたら目を抉ってました。」
「...え?」
「目を、か。」
皆、ドン引きしながら凶星の眼帯に注目する、
「それ、自分でやったのか。」
「はい。やりました。」
凶星は軽く眼帯を指で叩く。
「そしたら元の場所に戻って、顔半分くらいがそりゃあもう酷い有様になりました。それを見た案内をしてくれた人が怒り狂いました。神の手を振り払ったのかこの不届きものめ! と怒鳴って怪人化しちゃいました。そこからはもう無我夢中で案内してくれた人やその手下達と戦いました。案内してくれた人、教祖だったらしくて、とても強かったですよ。」
その時の事を思い出しているのか凶星はあったらとした様子で微笑む。
「あと少しで勝てそうになって、トドメを刺そうとしたら教祖が命乞いを始めちゃって。どうしようかと悩んでいたら突然教祖の身体が白くなって、塩みたいになって崩れちゃいました。それがきっかけで神と呼ばれた存在にちょいちょいちょっかいをかけられるようになりましたが、手は取らず無視してます。私からは以上です。」
「そ、そうか。話してくれて、ありがとう。」
思いの外ヘビーな話を聞かされ会議室内に重苦しい空気が流れた。