星になったヒーロー 作:日暮蛍
「...シッチ。お前はブラストから神について何か聞かされているんじゃないのか?」
「え?」
重たい空気を斬るように発言したのはフラッシュだ。
「ブラストがよろしく言っていたぞ。」
「なんだって?」
「...ウム。実は今まで隠してきたんだが、ブラストは20年来君達の遭遇したカミと戦い続けているんだ。」
「20年!?」
ブラストが自分よりも遥かに長い期間神と関わり、今も戦い続けている事を知った凶星は驚愕する。
それから、シッチは語った。
ブラストは相棒と幾人の協力者と共にフラッシュや凶星が見た人を怪人化させるキューブを捜索し、収集し、解析していた事を。
2年前、ムガテ長老という巨大なムカデの怪物との戦闘の途中で神と遭遇し、力の取り引きを持ちかけられ、それを拒否して神と一戦交えた事を。
どうにか生き延びた後、他のヒーローや協会の職員達を巻き込まない為に神の存在を公表せず、姿を隠した事を。
「...だから全然姿を見せなかったんですね。」
「ブラストは一人で対抗手段を探っているという訳か。」
「S級トップが姿を現さない事には相応の理由があると思っていたが。」
「オレ達を巻き込まず孤軍奮闘とは、ハードボイルドな奴だ。」
「しかし、惜しいな。」
「ン?」
「もっと早く打ち明けてくれればすぐにでもハゲマントことサイタマ先生が解決していたものを。」
そう言ってジェノスは凶星の方をじっと見る。
「...神の存在を証明する証拠もなしにサイタマ様に相談なんて、出来ないよ。私の幻覚という可能性だって捨てきれなかったし。」
バツが悪そうに指をもじもじさせ俯く凶星にシッチはフォローに入る。
「先ほども言ったが、カミは協会のセンサー類のどれひとつも奴を観測が出来ない規格外の存在だ。ブラストがカミと渡り合えたのは彼が時空を操れる能力者だったからで他のヒーローではなす術がないんだ。」
「どうかな。」
そう言ってジェノスが取り出し皆に見せたものはもうひとつの、サイタマと共に未来から来たジェノスのコアだ。
「報告書には書ききれなかったがこれから解決の糸口になる話をしてやろう。アズマ。」
「任せて!」
すると凶星は顔を上げ先ほどとは打って変わって目をキラめかせて自身も何かを取り出し、シッチに見せる。
「シッチ。これの中身、皆に見せたいんですけど、入れるところあります?」
凶星の持っているものはケースに入った一枚のディスクだ。
「それは、ディスクか。再生なら可能だが、何を見せる気なんだ?」
「見てからのお楽しみです。久しぶりにぐっすり寝られて好調な私が作り、ジェノス君から高評価をいただいたので期待してください。」
そう言って見せられたのは、凶星がジェノスから聞いた話を元に作った未来で起きたサイタマとガロウの戦い、そしてどうやってサイタマが未来を変えたのかという顛末をまとめた漫画動画だった。
ナレーション、制作、凶星。
監修、ジェノス。
再生時間、約20分。
迫力のある絵に皆は目を惹かれ、ちゃんと最後まで見てくれたのだが、内容はとても信じられるものではなかったようだ。
「...いや、その。木星まで飛んで破壊して帰ったとは。」
「あげく時間逆行で歴史を変えたって? いくら何でも。」
「あのキングでさえ月をサンドバッグにするのが限界だというのに。」
「話の真偽はおいておくとして、ガロウを倒したのが本当にハゲマントだったかは彼に確認せねばな。」
「それが、先生はガロウとの闘いの途中から記憶がないらしいのだ。」
「はぁ!?」
「ハゲマントを持ち上げたいにしてももう少しマシな嘘をついたらどうだ。」
「何だと!?」
「ジェノス君が嘘をついてるですって?」
「まあまて。」
険悪な雰囲気になりそうなところをゾンビマンは阻止し、ジェノスと凶星の話を完全には否定せず、他の確認方法を提示する。
「それならガロウにきけば判るだろ。警察での奴の取り調べはどうなってる? シルバーファングと出頭したんだろ?」
「それが決着の一撃のショックで記憶がないらしいんだ。」
「コトの重大さの割にみんなホイホイ忘れすぎじゃね!?」
「確たる話が何も出来ないじゃないか。」
「ひとつ言えるのは、カミのこの次元への干渉が急増していること。ブラスト曰く、この次元にヤツを呼びよせる何かがあるのかもしれない、と。」
「何か?」
「それも調査中だ。ともかく! 近く必ずブラストがカミへの対策を備えて帰る! それまでは団結と結束こそが我々の最優先事項だ。ヤツは心の隙をついて取引きを持ちかけるという事だからな。」
「団結か。ではまず協会の体質改善に期待しているぞ。」
「ム。」
ジェノスが立ち上がり荷物をまとめるのを見て凶星も立ち上がり帽子をかぶりディスクが懐にちゃんとしまってある事を確認する。
「ブラストから何かあったらハゲマント、サイタマ先生に連絡することだ。対策などそれで事足りる。では失礼する。」
「お疲れ様でした。」
「お、おい! 鬼サイボーグ! 凶星!」
2人は揃って会議室から出て、エレベーターへと向かう。
「あー疲れた。会議っていつもあんなにギスギスしてるの?」
「少なくとも、穏やかに進んだ事はないな。」
「あれが今後も続くのかぁ。頑張らないと。」
「アズマ。」
「んー?」
「...いや。なんでも」
「私は神の手先にはならないよ。」
ジェノスの聞きたい事を察したアズマはジェノスの方を見てはっきりと答えた。
「そんな事をしたサイタマ様に顔向けが出来ないよ。」
「...そうだな。」
「神の事は一旦置いといて、私達が今出来る事をやろう。怪人討伐とか、情報収集とか、色々。」
「ああ。そうだな。」
2人は顔を見合わせて揃って頷く。
「そうだ。そろそろサイタマ様のA級昇級と新居のお祝いにご馳走を用意しないと! お蕎麦がいいかな? 焼肉がいいかな?」
「早速サイタマ先生に相談しなくてはな。」
「うん!」
2人は今後の事を楽しげに話しながらエレベーターに乗り込んだ。
ひとまず、これでおしまい。
原作が進んだらまた続きを書くと思います。