星になったヒーロー   作:日暮 蛍 

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進化の家

「まさか走って現場まで向かうとは。」

「他にどうすんだよ。」

「てっきり先生なら空を飛べるものかと。」

「人間が空を飛べるわけねーだろ。」

「いつもよく徒歩で間に合っていますね。さすがはヒーローです。」

「いや大体いつも間に合ってないけど。」

 

それでも車よりもはるかに速く走るサイタマとジェノスの後を跳んで追うアズマは羨ましそうにぽそりと独り言を呟く。

 

「2人共走るの速いなぁ。」

 

アーマードゴリラに教えてもらった座標に数時間掛けて走って向かった先にあったのは鬱蒼とした森の中では不釣り合いな巨大で飾り気のない建築物が建っていた。

 

「ここが進化の家でしょうか?」

 

アズマが呟いた瞬間、進化の家のアジトと思しき建物が吹き飛んだ。

土煙が晴れるまでの間呆然とするアズマとサイタマ。

 

「,..いや、いきなり何やってんのお前。」

 

瓦礫の山となった進化の家のアジトの前でサイタマは隣にいるジェノスに呆れた様子で声をかけた。

 

「はい? これが一番効率良く一網打尽に出来ると判断したのですが。」

 

サイボーグであるジェノスには焼却砲という兵器が内蔵されている。それを使って建物を全壊させたジェノスは悪びれる事無く答えた。

 

「いや、そうだけどさぁ。相手も色々準備してただろうに。えげつないなお前。」

 

ジェノスの言っている事が正しいとサイタマは分かってはいるが、敵の親玉に会わずに兵器で雑に片付けるのはヒーローとしてそれはどうなのとかなり抵抗感があった。

 

「まぁ、でも。こういうところでは地下に隠し部屋がある事が多いですから、そこに行くまでの手間が省けたかと。」

 

そんなサイタマの心情を察したアズマは精一杯のフォローに入る。

 

「そうなの?」

「はい。あったら進化の家の親玉はそこにいる可能性がありますよきっと。待っててください。私、そういうの見つけるの得意なんです。」

 

そう言ってアズマは隠し扉とか見つかりますようにと祈りながらまだ熱が帯びている地面をものともせずに周囲の捜索を始めた。

そして数分後。

 

「あっ! ありました。ありましたよサイタマ様! ジェノス君!」

 

アズマは地下室への扉を見つけた。瓦礫をどかしながら少し離れた場所で一緒に探していたサイタマとジェノスにも声をかける。

 

「おぉ。本当にあった。」

 

駆け寄って来たサイタマは地下への扉を缶詰の蓋のように折り曲げながらこじ開けていく。

 

「秘密基地みたいだな。」

 

声音が少し明るくなったサイタマは躊躇なく地下室に入りジェノスとアズマもそれに続く。

地下は広く内部は機械やコンクリートのようなもので整備されていている。明かりもあり探索は問題無く行えそうだ。

 

「地下めっちゃ広いじゃん。テンション上がるな。」

「この奥に生体反応.,.同じ反応? クローン人間か。」

「センサーっていうの? そんなのまで分かるんだ。」

 

ジェノスとアズマは警戒しつつ、サイタマは警戒せず辺りを物珍しそうに見ながら進んでいく。

 

「! 先生、アズマ! 2体ほどこちらに近づいてきます。」

 

3人に接近してくる生命体を察知したジェノスは2人に警告する。

ジェノスの視線の先を合わせると2人の目にも接近してくる敵の姿を確認できた。

片方は筋肉質で雄大な人の形をしたカブトムシのような怪人。

もう片方はその怪人に頭を掴まれている満身創痍の男性。

 

「おお、いたいた。3匹いるけどどれだ?」

「ぐは。...真ん中だ。」

 

敵もサイタマ達に気がついている。

満身創痍の男は咳き込みながらも怪人に標的を伝える。

 

「じゃあ他のはいらねぇな。」

 

怪人はそう言って男性を放り投げ、ジェノスを殴って壁に叩きつけ、アズマの腹を蹴り上げる。

 

「ん?」

 

その時、怪人、阿修羅カブトは違和感を感じた。

重い。

アズマを蹴り上げた時真っ先に感じたものだ。その違和感に阿修羅カブトは遠くに蹴り飛ばしたはずのアズマを目で追う。腹に穴を開けて死んだであろうアズマを。

 

しかしアズマは阿修羅カブトから少し離れた位置で難なく着地をした。

 

「ジェノス、アズマ!?」

 

阿修羅カブトの攻撃を受けた2人の心配をし咄嗟に名前を呼ぶサイタマ。

 

「はいサイタマ様!」

 

アズマは阿修羅カブトの攻撃に対し特に怪我を負う事も無く痛みを感じている様子も無くサイタマの呼びかけに元気良く答える。

その様子を見た満身創痍の男は驚愕で目を見開いた。

 

「大丈夫か?」

「あっはい私は」

 

サイタマに名前を呼ばれた事に一瞬喜んだアズマだったが、阿修羅カブトの攻撃を受けて壁にめり込んでいるジェノスの姿を見て悲鳴を上げた。

 

「いやぁああああああっ?! ジェノス君がえらい事に!?」

「ジェノスが現代アートみてぇに。生きてるかジェノス?!」

 

慌てた様子でジェノスに駆け寄り助け出そうとするアズマをまじまじと見る阿修羅カブトの目が笑っていた。楽しみが増えたと言わんばかりに。

 

「...これは、嬉しい誤算だな。」

 

阿修羅カブトの攻撃を受けて無傷のアズマの姿を見て内心動揺しながらもそれを表に出さない満身創痍の男、ジーナスもまたアズマをじっと見ていた。強靭な肉体を持つサンプルが増え、実験の幅が広がると考えていた。

 

「ジェノス君?! サイボーグだから大丈夫だよね?! 治るよねこれぇ!!?」

 

進化の家の最高傑作にしてそのあまりの凶暴性によって失敗作の烙印を押されている怪人とその生みの親である進化の家の親玉からの値踏みのような視線を特に気にする事なく、それよりもアズマはサイタマと共にジェノスの救出を行っていた。

 

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