トリッカル・記憶もち教主大作戦 作:strawberrycake
【補足】
拙作のオリ主となる教主は名前設定を設けない予定のため、教主呼びではなく名前の呼称が発生する場面では(教主)と表記しますが、実際には名前が入ると見て読んで下さい。
なお、【】は誰かの本音を示します。
私はどこにでも居そうなごく普通のトリッカルプレイヤーだった。
スピキやキュウイのブームをきっかけに動画サイトで使徒たちの情報を学ぶことで本格的にトリッカルを知っていく流れとなり、グローバル版のハーフアニバーサリーを機に試しに始めてみたら、いつの間にかみるみるうちにハマっていった。
やり込み要素が多すぎて最初こそ何をしていけばいいのか分からずに損している事も多かったが、次第にゲームシステムを覚えていくうちにそれらは次第に少なくなっていった。
使徒の特徴やエーリアスの世界観などは動画サイトや短文投稿サイトなどのSNSや二次創作を通じて詳しく知ったものの、ゲーム面としてのやり込み要素にハマるあまりにシナリオについてはテーマ劇場系はスキップで飛ばしていた他、メインストーリーについても1章の3話、教主が他者の心を読む能力を得る辺りぐらいまでしかマトモに視聴した事がなかった。
だが、これが後に後悔を招く事になるとは知る由もなかった…
その時は突然だった。
ある不慮の事故が起こり、急激に襲われた苦痛を味わいながら少しずつ遠のいていきそうな意識の中で、嫌でも「まもなく自分自身は死ぬんだな」という事を思い知らされる事となった。
家族や親しい人を含めた多くの人や大切なモノとの突然の別れを受け入れざるを得ない事を悟ったのは勿論であるが、私はそれよりも強い後悔と嘆きの想いに支配されていた。
“こんな事ならもっとトリッカルのシナリオをしっかりと視聴しておけば良かった…”
“ああ…人の体はなんて脆いんだ…いっそ不死身だったら痛くとも治療さえすれば現世に留まれたかもしれないのに…”
そんな思いを抱きながら、私はその意識を手放していった……
……………………
…………ん……?
ここは………どこだ………??
もしや……死後の世界???
「ヤッホー!」
暗くて何も見えないかと思いきや、目の前から声が聞こえる…!?
しかもどこか聞き覚えのあるような…
「き、君は…誰なの…?」
「あたちはブルミ!」
「え…ぶ、ブルミ…!?」
「うん! あなたの名前も教えて!」
え…聞き間違いなければ声も名前も一致しているだと!!?
まさかとは思うが…とりあえずここに来る前の名前を名乗っておくか。
「私は(教主)っていうんだ」
(そして周囲の視野が少しだけ明るくなると、そこには見覚えのある小さな生物が宙に浮いていた)
「よろしくね!」
えっ、嘘!?
あ、あのブルミが目の前にいるだと!!?
なんでなんでなんで!!!??
「え? 何? そんなに慌ててどったの??」
「あ、な、何でもない…何でもないからぁ…!!」
「と、とりあえず、話、つ、続けて!!!」
「むうぅ…怪しい……」
「あのさ…もしかしてだけど、あたちに何か隠し事してない?」
「うぐぅ!?」
しまった!! 勘づかれてる!!?
「ど、どうして…そう…思うのかな……???」
「みるからに動揺してるもん! 誰が見たって怪しいよ!」
「だって急だったらつい……でもなぁ……これを君に話してもいいものなのか……」
「? 何か話すことができない理由でもあるのー?」
「他の人に知られたら……あ、別に君になら話してもいいか! どうせブルミは他の使徒には見えてないからね!」
「にゃ!? どうせ見えてないって失礼すぎない!?」
「ちょっと! なんであたちのこんぷれっくすを刺激するの!」
「え、コンプレックスに感じてたのそれ!?」
「そうだよー! 他の使徒たちに相手にされない事、時に寂しく思ってたんだからね!!」
「うぅ…心配して来てあげたのに!」
「あたちの凄さを見せないとダメみたいね!」
「まった、ブルミ! 配慮不足な私が悪かった!! 謝るから許して!!!」
「ダメッ! これでも食らえー!!」
「世界を真っ二つにする……ブルミパンチ! どりゃああああ!!」
「結局こうなるの!!?」
私のうっかりな失言によりブルミのコンプレックスを刺激しまい、私は物語の流れ通りにブルミパンチを受ける羽目になった。
まあ、たんぽぽの種が触れるように柔らかいからなんともないからいいんだけどね…すごくふわふわだったし
とはいえ本家クズ教主による理不尽な二択を避けたフリートークな展開でブルミパンチを回避できた筈なのに、結局できなかったのがちと情けなかった。
という事で、事故で死…もとい週末農場送りならぬエーリアスに送られる形で転生した可能性が高いこと、エーリアスを第三者目線で観測してきていたことも含めてエーリアス送りになる前の記憶をそのまま持っていることなどをブルミに対して打ち明けた。
「なるほどねー」
「でも、それなら話が早くて助かるよー」
「えっ、驚いたり…しないの?」
「うん! あたちがそれほど手取り足取りガイドしなくてもいいのは手っ取り早いからね!」
「さすが親分! 適切すぎるほどの教主ちゃんをここに召喚したんだね!」
「まだネルやエルフィン達に会ってないのに、もう”教主ちゃん”なんだね…?」
「そう! 教主ちゃん!」
「ここまで色々と知ってる頼もしい存在なのはいい意味で予想外だったから、期待してるよー!」
「な、なんだか照れ臭いなぁ…」
「でも、教主はいろんな知識が必要だと思うし、個性豊かな使徒も多いし、今からもう前途多難な気がするんだけどね…」
「そんなに深く考えなくても、その場その場で持ち前の知識を使って問題解決していけばきっと大丈夫! あなたならきっとできるよ!」
「ブルミがそう言ってくれるなら…信じてみようかな!」
「とりあえず行ってみよっか! 教主ちゃんが思うよりも深刻な状況じゃないかもしれないし!」
「まあ、私がいかにエルフィンやネルたちをサポートしていけるかどうかにはかかってそうだけどね、はは…」
「あっ、ブルミ! 向かう前に一つだけ確認しておいてもいいかな?」
「ん? どったの教主ちゃん?」
「いくら君が周りに見えないとはいえ、時々ブルミと会話してたら私が無と会話している事に怪しまれそうな気がするのがちと心配で…」
「平気平気! いざという時はあたちが時間を止めて誤魔化すことができるからね!」
「でも、できるだけ他の使徒たちに変に悟られかけるのもなんかなぁ…あっ、確かブルミ自身も他人の心を読めるんだよね?」
「んー? そうだけどー?」
「もし可能ならブルミが私の心を読むことで、ブルミに話したい事を伝えられたらいいなって、思ったんだけど…」
「教主ちゃん、頭いいね! けど何か気になることがまだあるのー?」
「ブルミに呼びかけるには流石に声出さないと分からなそうかなって…」
「それなら心配ご無用だよ!」
「えっ、心配ご無用?」
「この能力は他人から能力者に強い意識が及ぶと、手に取るようにすぐに分かるんだ!」
「だから、教主ちゃんがあたちの事を呼ぶように強く念じれば、あたちは教主ちゃんの呼びかけとしてすぐ気が付けるよ!」
「え、それでいいんだ!? 便利だけど、愛が重い使徒が近くにいると大変そうだな…」
マヨとか、リニュアとか…
「まあ、その辺りの感覚も、もう少ししてあなたが心を読む能力を手に入れたらなんとなく分かるよ!」
「あはは…とりあえずまあ、心の中でブルミを呼びかければ何とかなりそうだね!」
「うん、それでいいよ!」
「じゃあ、悩みがなくなったところで、早速エルフィンランドへ向かおっか!」
「うん! 案内よろしく頼む…!!」
こうして私の、教主としての長ーい第二の人生が始まりを告げた……
【うわぁ…結構燃えてるね……】
いっつも燃えてんなってネットでよくネタにされてたぐらいには画面越しに見てきた光景だけど、実際に降り立ってみるとかなり熱気を感じるな…
「陽気な妖精たちの王国だからね〜」
【陽気って…この騒動が砂糖不足が原因と考えたら、寧ろ甘党な妖精たちを怒らせるとガチで怖いって思うんだけど…】
「キャァァァ!! どいて! 道を塞がないでよ!」
(ドン!!!)
「あべしっ!!?」
妖精王国の悲惨な光景に気を取られていたら、突如走ってきたもちほっぺとの衝突で1〜2メートルほどぶっ飛ばされた…
構えてなかった私も悪いけど、この子のぶっ飛ばす威力半端ないな!!?
世界樹の加護がなかったら危なかったぞ…
「早速現れたね! この子が妖精王国の女王エルフィンだよ!」
「ちょっと! なんで邪魔な場所に突っ立っていたわけ!? 今、反乱軍に追いかけられているのよ!」
「ごめーん!! 君が妖精王国の女王のエルフィンだよね? ピンチの君の為に私が駆けつけたよ!」
「それならなんで私の邪魔をするのよ!!」
「あれはワザとじゃなく事故だからぁ!!」
「おお! いい感じだね! エルフィンが反乱軍を止められるように協力しよう!」
【最悪な初対面になったけど、いい感じなのか!?】
やっぱり前途多難な予感がするな…