この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました   作:東雲(しののめ)

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第1話:氷炎

「——結構でかいな」

「——そうですね」

「——私が突っ込む」

「——じゃあこっちは後衛に回ります」

 

 俺は災厄の数字(ナンバーズ)の9番目、クレス・アリシア。

 世間からは最強の氷魔法使い、『絶氷(エターナル)』なんて呼ばれている。

 ちなみに隣でガンガン闘気を放っているのが相棒のアウラさん。

 災厄の数字では5番目に位置し、変人だが頼りになる先輩だ。

 

「後衛? もっとやる気だせよクレス! 二人で突貫だ!」

「突貫なんてしたくないです」

 

 淡々としたこちらの態度に、彼女はやれやれと首を振る。

 

「ったく。ただでさえ可愛い顔してんだ。せめて男気はだしてこーぜ!?」

「可愛いって……女顔で悪かったですね。でも冷静に戦った方がいいと思いますよ」

 

 自分が中性的な容姿なことはさておいて。

 さっきからアウラさんテンションが異常に高い。

 呼応するようにその紅蓮色の長髪も(なび)いている。

 それもそのはず。

 ——なにせ俺たちの目の前には今回の標的、昆虫型の巨大な魔獣がいるのだから。

 

「目の前というかは目の上だけど……」

 

 あまりに巨体すぎて視界に入りきらない。

 

(たかぶ)るなぁ」

 

 ただそれでも彼女が歓喜するのは戦闘狂(バトツジャンキー)だからこそ。

 戦闘態勢、アウラさんが背中に担いでいた大剣を手に構える。

 

「応えろ神滅炎剣(バイオレット)!」

 

 一声。すると真っ赤な魔力がマグマのように溢れ出す。

 力を通した大剣もまた豪炎を纏う。

 

「アウラさん、服まで燃えてますよ」

「気にするな!」

「俺が気にするんです。しっかり衣服に強化魔法を掛けてください」

 

 燃え盛る炎は身体にまで伝播(でんぱ)

 炎は鎧と化すが、おざなりな強化のせいで服もまた燃える。

 

「相変わらず倫理観や羞恥心の欠片もないですね……」

 

 戦えることが楽しくて仕方ないという様子だ。 

 

(見た目は美人なんだけどなぁ。性格思考に難がありすぎる)

 

 そんなイカレタ先輩と組まされる俺、苦労ばかりだよ。

 

「次のタイミングで突っ込むぞ!」

「了解です」

 

 そろそろ仕掛け時だそう。

 両手にはめた黒いグローブを外す、魔力を解放。

 右手甲に浮かび上がるのは9番を意味する『Ⅸ』の刻印。

 ——これは俺が災厄たる証だ。

 

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』

 

 敵も警戒心をむき出しにする。

 森が騒めく、踏み荒らされた大地が悲鳴を上げる。

 

()くぜ——!」

 

 瞬間。

 言葉を聞いた時にはもうアウラさんの姿は消えている。

 

「相変わらず速いことで……!」

 

 強化された彼女の脚は神速を生み出す。

 生じた砂塵が頬を掠める。

 

「——私の炎は最強で超無敵だっ!」

 

 轟。

 肉と甲殻(こうかく)が潰れる音。

 そして彼女の口角が三日月を描く。

 瞬く間、相対していた魔獣の顔面に一発クレーターが誕生する。

 

「あっつ……派手というか雑というか……」

 

 後ろにいても熱が届いてくるほどの規模と出力。

 爆炎を纏った剣が成す技に舌を巻く。

 

「俺もそろそろやらないと——」

 

 相手も災害級、既に再生を始めている。

 まさかそのまま回復させるわけもない。

 

「先輩に任せてばかりじゃ後輩の名が廃れるしな」

 

 白銀の魔力をこの手に。

 描いて紡ぐは巨大な魔法陣――

 仕事はキッチリこなす。

 

「凍れ」

 

 一言、それだけ。

 上がった気温を一気に氷点下にまで持って行く。

 

「詠唱は要らない、か」

 

 氷の侵略、再生しそうなクレーター部分も含め魔物全てを氷漬けに。

 ソレはアウラさんの轟炎さえも飲み込んだ。

 ここに1つの氷像が完成する。

 

「さすがっ! なら私もっ!」

 

 後は軽く砕くだけ。

 それで任務達成、なんだが……

 なんと氷の像の真上には真っ赤に燃える先輩の姿がある。

 

「おいおいおい……」

 

 人の身にして神殺しにまで上り詰めたその人。

 太陽を疑似的に具現化、神にしか使えないはずの奇跡を現実に起こす。

 

「ぶっ潰す! 太陽落下(サンライト・ダウン)!」

 

 あ、これやばいやつだ。

 あまりに威力が強すぎる。

 

「アウラさん! 加減をしてく——」

「はっはっはっはっはっはっは!」

「……あの様子だと、こっちの声が何も聞こえてないな……」

 

 正確には何も考えていない。

 たぶん今まで戦えなかったストレスが爆発している。

 そりゃ何十日も移動に強いられたけどさ……

 

「まずい——」

 

 光が全面に展開、夜が朝へと強制的に変えられる。

 降り注いでくる熱放射は魔法で遮るものの、辺りの草木は塵となって消えていく。

 

「力比べだクレス!」

「なに言ってるんですか!?」

「どっちが強くてカッコいいか勝負!」

 

 出たよ先輩お得意の意味不明な自己中プレー。

 しかしこのままでは俺も(ただ)では済まない。

 

「これだからアウラさんと組むのは……」

 

 戦闘において、アウラさんの辞書に協力とか協調性という文字はない。

 

「俺にまで攻撃飛んでくる時あるし、ホントに酷い話だ」

 

 だがボス曰く炎には氷を。

 つまり俺はアウラさんが暴走した時の消火役というわけ。

 

「——だけど、俺はあの人の相棒だから」

 

 これ以上愚痴っている時間も無い。

 

「あの勢いだと森どころか島ごと焼き尽くす気だし……」

 

 疑似太陽が着弾するまでほんの数秒だ。

 

「魔獣を倒しに来たのに先輩を相手取る。おかしな話だよ」

 

 魔獣の時とは違う、俺も相応のクオリティーで対処しよう。

 

「——出番だぞ、異能(エルレブン)

 

 魔法とは別、俺の持つ唯一(オンリーワン)に呼び掛ける。

 すると魔力が爆発的に膨れ上がり、俺も人の身を捨て上へと到達する。

 

「十分だ」

 

 これだけあれば何とか相殺はできるだろう。

 

「凍える風、凍る大地、凍り付く生命の息吹」

 

 響かすフレーズ、熱い世界をフリーズ。

 刻印煌めき高鳴る心臓。

 白銀色の魔力が嵐の如く吹き荒れる。

 

銀色(ぎんしょく)の女王が世界を(せい)す」

 

 草木は燃えることを止め、冷たき永久の眠りについていく。

 描き重なり合う陣と陣、生み出すは——

 

絶氷界(ジ・アブソリュート)

 

 氷の頂、俺の魔法は万物万象を凍らす。

 俺は天に輝く太陽と対峙した。

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