この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました 作:東雲(しののめ)
場所は移る。
俺たちは教室から実技演習場に来た。
「まさか初日から実技授業とは……」
服装も実技用に変化。
制服は脱いで、ピッチリと肌に張り付く黒ユニフォームになる。
さっき渡されたばかりの新品ピカピカ状態だ。
「予想してなかったな」
「ああ。こんなに早く女子のエロい姿を見れるなんて思ってなかったぜ」
「俺の予想と何か違くない……?」
ピッチリと表現しただけあって、身体のラインが強調されている。
スミス曰く大きさではディアンヌス嬢。
形ではマイ・ハルカゼだそう。
「スミス、ヨダレ垂れてるぞ」
鼻血を出す勇者もいるし、このクラスは一体どうなってるんだ。
「お、アリシア君」
現れたのはマイ・ハル……フルネーム呼びはもう面倒だな。
会話と同じ、内心でもハルカゼ
「もしかして結構鍛えてる?」
「ボチボチ鍛錬はしてるかな」
「やっぱり。身体の線は細いけど——」
彼女は『りくじょうぶ』という所に属していたとか。
肉体改造を目的とした組織だそう、中々物騒だな。
「おやおや2人で面白そうな話をして……」
「ハルカゼさん、スミスが来たんで逃げた方が良いかも」
「っな! お前までオレを変態扱いするのか!?」
いや普通に変態だろ。
付き合いが短い俺でももう十分理解できるぐらいだ。
「事実でしょうスミス・アルビン。今も目がやらしいですわ」
「っぐぐ……!」
ディアンヌスさんが加勢してくる。
彼女は公爵家の人間だからと気を使ったが、さん付けでいいと言われた。
「よーし。Sクラス集合だー」
デニーロ先生の指示で皆が一点に集まっていく。
「初の実技授業、今回は1対1の
まじですかー……
周りもだいたい同じようなリアクション。
「もう実戦形式のことをやるのか……」
まあ夏には他の国々と覇を競う『四国選抜大会』なんてのもあるしな。
名門であればこんなペースなのかも。
「ただ超本気で試合やれってわけじゃない。これは——」
曰く今後の授業を進行していく上で、俺たち個々の実力を知りたいとか。
資料ではなく、自分の眼で全員の実力見ておきたいらしい。
「ようはお披露目会ってことだよな?」
「だな。しっかり女子にアピールしねぇと」
「そこは先生にアピールじゃないのか……?」
隣にいるスミスが小声で耳打ちしてくる。
(とりあえず、今回は自分の魔法レベルや戦闘レベルを皆に見せればいいと)
一見すると面倒な授業、しかし考えてみればラッキーとも思える。
なにせ模擬形式と言え、初日から勇者の戦いぶりを観戦できるのだから。
「女子へのアピールもいいけど、しっかり観ておいた方がいいんじゃないか?」
「勇者たちだろ? 確かに気になるぜ」
「同じクラスさまさまだよ」
スミスもやはり気にはなるらしい。
「戦争のない、平和な国から来たって言ってたけど……」
「魔法もないって話だし、魔族もいないなんてビックリだよなぁ」
「ああ。戦闘に不慣れなのは仕方ない。魔法の練度や戦闘技術もまだまだとして——」
今回気に掛けるべきはその『素質』である。
「どこまでのモノを秘めているのか……」
「魔法のセンスもそうだけど。できれば異能も見して欲しいぜ」
「……そうだな」
ただ実際に異能を披露してくれるかはだいぶ怪しい。
使用を禁止されている可能性もゼロではない。
「よーし、早速だが模擬戦の組み合わせを決めよう」
デニーロ先生がグルリと視線を移す。
「一発目だけは勘弁してくれ……」
「同じく……」
誰だって初戦はやりたくない。
できれば中盤あたりで——
「まずはクレス・アリシアだな」
「え!?」
「実技試験トップ通過。その実力は誰もが観たいだろう」
「「「「「うんうん!」」」」
クラスメイトたちはそれに全力肯定、首を縦に動かす。
先方を俺に押し付けたいってことだろうさ。
「それに今日は遅刻もしたし」
「ペナルティーですか……」
「どっちにしろ全員やるんだ。あと罰だと思うならこれで清算しとけ」
「……了解です」
どうせこれ以上言っても一試合目は俺で決まり。
はいはい、やりますよ……
「おめでとうクレス!」
「全然嬉しくない……」
しかして相手はどうする?
自分で言うのもアレだが前評判がある。
誰もやりたがらないと思うんだが——
「アリシアの対戦相手は……」
順当に行けば勇者の誰か、もしくはディアンヌスさんになるだろう。
世間の評価的にはこの辺りだ。
「よし。ならユウト・ケンザキに頼もうか」
「俺ですか?」
「ああ。アリシアと同じぐらい勇者の力も気になるんでな」
「分かりました!」
対戦相手はユウト・ケンザキが指名される。
だが決まった途端、俺の方にニヤニヤとした視線を送ってくる。
やけに自信満々じゃん。
「ホントにラッキーだよ……」
向こうさんは余裕の面持ちをしている。
しかし嬉しいのは俺も一緒だ。
なにせ初日で勇者たちのリーダー格っぽい男と対峙できるんだからな。
そして——目の前には勇者の1人、ユウト・ケンザキがいる。
(入学早々、まさかこんな機会が来るとは……)
お互い授業用の剣を持って対峙する。
「クレスー! お前ならできる!」
「頼んだぜアリシア!」
「俺たちの想いを背負って勝ってくれ!」
「アリシア君天使すぎ……僕とヤラな……」
会場には観客席が用意、他の生徒は全員そこに移動した。
(にしてもやけに男子たちが俺を応援してくれる)
最後の奴は少しおかしいけど……
「よろしくアリシア」
「よろしく」
「男子たちに大人気だね。やっぱり見た目が女っぽいからかな?」
「……さあ」
ほう、どうやら喧嘩を売られているらしい。
分かりやすくていいけどさ。
「アリシアは女の子みたいだし、なんかやりにくいなあ」
「遠慮しなくていい」
「そうは言うけど俺はなんたって
「その時はその時。しっかりやってくれると嬉しい」
「そうかい。じゃあ
「ああ」
そう言った後すぐ女子たちの方をチラリと見る。
どうせ俺を軽く捻って黄色い声援を浴びたいんだろう。
力を持つが故、誇示したい気持ちも多少は分かる。
「改めてルール説明だ。攻撃魔法は第3
「……3階梯」
「相手を戦闘不能にした方が勝ちだ。決着がつかなければ判定で決める」
1から10までクラス分けされる魔法、第3階梯までしか今回は使えない。
「大技禁止ね……」
たぶんダラダラ進んで判定になるだろう。
「お互い定位置にいるな。それじゃあ5カウントで始めるぞ」
俺はとうぶん魔法も技能も見せるつもりはない。
やられっぱなしみたいな構図にはなるだろうが、それでも勇者の真価を問いたい。
「カウント開始! 5! 4! 3——」
拡声の魔道具を通しデニーロ先生の声が響く。
ケンザキも自然と剣を構える。
「……けど酷い持ち方だ」
予想以上に素人感が丸出し。
これは
「2! 1! 始め——!」
カウントは終了。
スミスたちの声援が一層送られてくる。
まず向こうの出方を
「これが俺の異能!
「っ!」
初っ端から異能使うのか!?
それが悪いことだって言うつもりはないけど——
「普通はもう少し様子見するんじゃ……」
ただ光の神の加護と言うだけあって、ケンザキの身体はギラギラと輝く。
まるで黄金の如く発光。
その様相に俺も観衆も息を呑む。
「とくと味わえ! この異能の力を——!」