この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました   作:東雲(しののめ)

12 / 26
第10話:勇者

 ………………5分後。

 

「判定の結果、勝者アリシア!」

 

 どちらも倒れることなく模擬戦は終わった。

 最終的には判定で勝敗が着いたんだが——

 

「はぁ……はぁはっ……なんで……」

 

 目の前には肩で息をしているケンザキの姿がある。

 

「ケンザキはよく動いたが決定打がなかったな。その点アリシアの動きはとても洗練されていた」

「あ、アリシアは、魔法を使ってない、ですよ、」

「いいや。まだ見えんだろうが、コイツは強化の魔法を常に使い続けていたぞ」

「そ、そんな……」

 

 判定に口をだすケンザキ、だがデニーロ先生はよく観ていたらしい。

 

(初めに異能を出された時、どんなおそろしい技が出るかと思ったが——)

 

「こ、今回はマグレだ……勇者の俺が負けるはずがない……」

 

 結論から言おう。

 勇者ケンザキ、まぁ酷いもんだったよ。

 『光神の加護』とやらは強化系の異能だと思う。

 

(ただその出力はとても異能とは思えないレベルだった)

 

 魔法は一切使えない。

 動きもド素人。

 センスも感じないし。

 

(特に異能なんて超微妙な強化と、身体をピカピカ光らせてくれるだけ)

 

 将来は街の外灯(がいとう)にでもなるつもりか?

 まだ成長段階にしてもお粗末すぎる。

 

「きょ、今日はたまたまだ。覚えてろアリシア!」

「あ、ああ」

「ックソ……!」

 

 フラフラしながら去っていくケンザキ。

 今回俺は回避ばかり、たまにカウンターを合わせただけ。

 それでも圧勝。

 まったく負ける要素が見つからなかった。

 

「まだ成長中とは言え、あれが今世の勇者か……」

 

 今抱くのは、この(、、)程度(、、)なんだ(、、、)という気持ちばかり。

 頼むぞ残り3人の勇者。

 アンタたちを召喚した王様じゃないけど、俺はこの先が心配——

 

 

 

「……するだけ杞憂(きゆう)だったか」

 

 ケンザキ戦が終わったため、俺は観客席で見物するだけに。

 そこで垣間見る、残る勇者3人のポテンシャルの高さを。

 

「ワドウさんの魔法凄いな。第3階梯のモノとは思えねーよ」

「たぶん異能が魔法に特化した何かなんだろう。あと単純に魔力の質が良い」

 

 隣にいるスミスと吟味しながら言葉を交わす。

 

「魔法適性も全属性あるっぽくね?」

「ああ。それに使い分けも上手い。召喚されてすぐコレとは……」

 

 ステージ上ではワドウさんが様々な魔法を乱射、轟音を響かせる。

 

「すげぇガチ戦闘、今までの()のオーラがまったくねぇ」

「うん。目も本気だ」

 

 魔法の出力も高いが、バランスがしっかり取れていて素晴らしい。

 第一にやる時はやる、そう言った真剣さがこの距離で感じ取れるんだ。

 

「……俺がやったケンザキ戦が嘘みたいだ」

「だな。アイツは口ばっかりだぜ」

「ちなみに今ワドウさんと対峙してる……」

「確かコウキ・スガヌマって名前だ。アイツも普通につえーよ」

 

 ワドウさんの魔法と対峙しているのは同じく勇者の1人。

 

「コウキ・スガヌマ、か」

 

 身長はだいぶ高く、それでも俊敏(しゅんびん)かつスマートに動く。

 

「あの男勇者、動きが速くて全然見えん。クレス見える?」

「軽く。コッチは速度に関係する異能ってことかな」

 

 強化魔法を行使した痕跡はない。

 おそらく異能が速度を上げてくれている。

 

「動きにもセンスを感じる。あれなら前衛役は確定かな」

 

 魔法を紙一重で避ける様はまぁ見事。

 その異能を極めれば、いつかは近接戦で数字(ナンバーズ)と戦えるぐらいにはなるかも。

 

(ただ律儀に異能名を告げてくれたのはケンザキだけか)

 

 他も分かりやすく叫んでくれたらいいのに……

 

「——試合終了! そこまでだ!」

 

 ここで終わりの合図。

 それに際し周りも自然と拍手を送る。

 

「いやぁマジ凄いわ。流石は勇者ってかんじ」

 

 皆が称える気持ちは分かる。

 

「確かに、ワドウもスガヌマも良いモノを持ってる」

 

 だけど——

 俺の注目を一番に集めたのはその2人ではない。

 

(最もポテンシャルが高いのは……)

 

 退場者に合わせ視線を横に動かす。

 ワドウさんらをすぐに迎えたのはハルカゼさんだった。

 

「なあスミス、ハルカゼさんの異能は何だと思う?」

「そりゃ回復系だろ。さっきだって怪我を一瞬で治してたし」

 

 彼女もまた異能を行使。

 怪我人の手当てを率先して行っている。 

 その手つきはタドタドしいものの、生み出す青白(せいはく)色は瞬く間に傷を癒してしまう。

 

「ハルカゼさんの介護、ケガする価値は十分にあるな」

「そうか……?」

「クレスは残念だったなー。無傷なのが逆に可哀(かわい)そうだぜ」

「どれだけハルカゼさんに介抱されたいんだよ……」

 

 確かに見事な治療行為をしているな。

 

「だが——」

 

 周りは彼女の行為を回復魔法、もしくはその延長だと考えている。

 しかしそれは誤りだ。

 これはあくまで個人的見解だが、『アレ』はそんな生易しいものじゃない。

 

(その正体は時間操作の、いやもっと恐ろしい——)

 

 明るい表情で治療に勤しむ彼女に対し、固唾を飲む。

 

「……危険だ」

 

 自然と警戒心を抱く。

 

(もし俺の予想が正しいのなら、ハルカゼさんの異能は数字(ナンバーズ)にも匹敵するぞ)

 

 清楚な美少女なんてとんでもない。

 ——彼女(、、)()怪物だ(、、、)

 

「ハルカゼさん、近頃じゃ聖女なんて呼ばれるらしいぜ」

「聖女……」

「容姿も性格も異能も、まさにピッタリの渾名(あだな)だよなー」

「………どうかな」

 

 俺からしたら皮肉が効いてるように思える。

 

(なにせハルカゼさんの力だけを巡って戦争が起きてもおかしくない)

 

 たぶん俺の予想は大方当たっている。 

 マイ・ハルカゼの異能は勇者の中でダントツの才を持つ。

 

「ぶっちゃけ他は後回しでもいいぐらいに——」

 

 今この時に確信。

 どうやら監視の主たる標的は、彼女にせざるを得ないようだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。