この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました 作:東雲(しののめ)
「——勇者たちの観察は無事に終了」
ハルカゼさんの部屋を覗いた後、残る3人も見に行った。
これは魔道具があってこそ、製作者であるストレガさんの手腕に感服する。
(ただ、見たくなかったモノもあった)
男勇者、ケンザキやスガヌマの下着姿とかではない。
それはハルカゼさんの素の状態、弱った少女の存在を垣間見たこと。
「いや、これ以上考えるのは……」
いくら過去の自分と被るとはいえ、相手は監視対象の1人。
情が移れば公正な観察ができなくなる。
「とりあえず、今回で『カベヌケール』が凄いってことは分かった」
ストレガさんは他にも便利な魔道具を造ってくれる。
途方もないエロ思考しているのがネックだけど。
「俺にさえセクハラしてくるし……」
欲求不満すぎて、俺に女装を本気で頼んできた時もあった。
もちろん断ったよ。
そうしたら他の
(しかも俺の女装に本気で興奮してたっていう、怖い怖い)
良い人なんだがあの性癖がキツイ。
「さて、禁書庫の方も片付けるとしよう」
仲間の事を思い出しながらも目的地には着々と近づいて行く。
騎士団長様が不在だからと調子に乗らない。
「——っと、この辺からか」
禁書庫の方に騎士は一切いないようだ。
その代わりに魔道具を使った罠がこれでもかと仕掛けられている。
「……レベルも格段に上がってる」
普通の侵入者だったらまず突破は不可能だろう。
「だけどこの廊下を抜けないと話にならない——」
手始めに氷魔法を発動、大気に霧を発生させる。
すると廊下には半透明な赤レーザーが何本も浮かび上がった。
「……なかなかの数」
感知式の魔道具が大量に張り巡らされている。
「なら——」
床に両手をつけて静かに魔法を発動する。
「凍れ」
天井、床、壁に氷を薄く張っていく。
これで設置された
「魔道具を破壊すれば後で絶対にバレるからな……」
侵入の痕跡を残すわけにはいかない。
「でも凍らせるだけなら、後で溶けて元通りになる」
全てを氷漬け、魔道具同士で連動していようと関係ない。
霧が薄く漂う道のり、騎士たちがいないので堂々と進める。
「——本当に氷魔法は便利だよ」
さっき使ったばかりの瞬間冷凍法は特に役立つ。
例えば旅の時なんか、普段持っていけない食べ物を食料とする事ができるのだ。
どうしても干し肉ばかりだと飽きるんでな。
「そういえばアウラさんにさんざん料理作らされたなぁ——」
あの人メチャクチャ食うんだよ。
それでいて料理ができない。というか色々できない。
得意なのは戦闘だけだ。
「ちゃんと生活できてればいいけど……」
今まで面倒見ていただけあって心配だ。
あの人自体、俺がこの任務をやることに最後まで大反対していて——
「……っと到着、ここだな」
ついに禁書庫、その入口までたどり着いた。
目の前には巨大かつ重厚な扉が待ち構える。
「やっぱここは特に厳重そうだ」
この先に目当ての代物がある。
そのほとんどがトップシークレット、納得の厳重性だ。
「
流石に一筋縄ではいかないだろう。
それに単純に凍らすだけでも進めない。
「——こっちも色々魔道具持って来てる」
後は俺のスキル次第。
王国の秘密を守る扉、相手に不足はない。
「……勝負!」
——そうして解除に取り掛かること30分が経過。
周囲に警戒しているのもあり、集中と緊張で汗をかく。
「これで……」
かなり難しい施錠。
痕跡を残さずに解除する、いつも以上に時間を要したが——
「でき、た!」
ガチャリと鈍い音を発ててゆっくり扉が開く。
「はあぁ……ようやくだ……」
しかし休んでいる暇はない。
解放された禁書庫、注意しながら足を踏み入れる。
うん。罠となる魔道具の反応は内部に感じない。
「……結構広い」
書籍に文献、ファイルされた記録書、様々な物がここにある。
「この中から目当ての書物を探すのは骨が折れるぞ……」
しかしそう思ったのは束の間。
「あ」
入ってすぐの所だ。
召喚された勇者に関係する物、それだけ集められたコーナーがあったのだ。
「ラッキー。王国の連中も
どうせこの禁書庫は侵入されないと思っているのだろう。
確かに素晴らしいセキュリティーだったよ。
「並の侵入者だったら即アウト。でも相手が悪かったな」
ただ俺としても、鍵開けでこんなに時間が掛ったのは久しぶりだった。
「……召喚儀式に関係する書物もある。後は過去の勇者の伝記なんかも」
しかし一番欲しているのは——
「お、これだな。勇者の個人情報をまとめたレポート」
年齢や身長体重、身体能力や出身地について聴取したもの。
もちろん異能についても記載されている。
俺の目測とは違う、研究者が色々吟味(ぎんみ)した上での見解が書かれているのだ。
「それでハルカゼさんの異能は——」
ペラペラとページをめくり該当欄を見つける。
「……えーっと、現時点ではマイ・ハルカゼの異能を『
うーん、俺はもう2ランクぐらい上の異能と踏んでるんだけど。
「解釈の仕方は合ってるけど時間逆転じゃちょっとな、断定した理由も信憑性低いし……」
この資料を鵜呑みにするのは止めておいた方が良さそう。
「なにせ彼女の力は、
脳に過る1つの可能性。
世の中には色々な組織や集団がある。
彼女の異能が俺の予想通りであったとし、もしあの連中の手にでも渡ったら——
「……いや今はいい。仕事を済ませよう」
ボスの言った通り色々データは揃っている。
考えるのは後でいいだろう。
早々に写してこの場を去るべきだ。
「ん?」
だが資料を漁っていて気付く。
勇者の基本情報だけをまとめた冊子。
その最後のページに知らない名前があるのだ。
「……ショーゴ・マノ? 誰だ?」
4人の厚いデータに比べ、その男についての資料はたったの1枚で完結している。
「出身はニホン、現在消息は不明……」
何者かと疑った。
しかし読むと正体判明へのピースは埋まっていく。
そして最後に決定打、彼の備考欄にはこう書いてあった。
『
俺は知る。
今回召喚された異世界人、それは『5人』であったと——