この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました   作:東雲(しののめ)

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第13話:五人

「——勇者たちの観察は無事に終了」

 

 ハルカゼさんの部屋を覗いた後、残る3人も見に行った。

 これは魔道具があってこそ、製作者であるストレガさんの手腕に感服する。

 

(ただ、見たくなかったモノもあった)

 

 男勇者、ケンザキやスガヌマの下着姿とかではない。

 それはハルカゼさんの素の状態、弱った少女の存在を垣間見たこと。

 

「いや、これ以上考えるのは……」

 

 いくら過去の自分と被るとはいえ、相手は監視対象の1人。

 情が移れば公正な観察ができなくなる。

 

「とりあえず、今回で『カベヌケール』が凄いってことは分かった」

 

 ストレガさんは他にも便利な魔道具を造ってくれる。

 途方もないエロ思考しているのがネックだけど。

 

「俺にさえセクハラしてくるし……」

 

 欲求不満すぎて、俺に女装を本気で頼んできた時もあった。

 もちろん断ったよ。

 そうしたら他の数字(ナンバーズ)と手を組んで強制的に着がえさせられた。

 

(しかも俺の女装に本気で興奮してたっていう、怖い怖い)

 

 良い人なんだがあの性癖がキツイ。

 

「さて、禁書庫の方も片付けるとしよう」

 

 仲間の事を思い出しながらも目的地には着々と近づいて行く。

 騎士団長様が不在だからと調子に乗らない。

 

「——っと、この辺からか」

 

 禁書庫の方に騎士は一切いないようだ。

 その代わりに魔道具を使った罠がこれでもかと仕掛けられている。

 

「……レベルも格段に上がってる」

 

 普通の侵入者だったらまず突破は不可能だろう。

 

「だけどこの廊下を抜けないと話にならない——」

 

 手始めに氷魔法を発動、大気に霧を発生させる。

 すると廊下には半透明な赤レーザーが何本も浮かび上がった。

 

「……なかなかの数」

 

 感知式の魔道具が大量に張り巡らされている。

 

「なら——」

 

 床に両手をつけて静かに魔法を発動する。

 

「凍れ」

 

 天井、床、壁に氷を薄く張っていく。

 これで設置された魔道具(センサー)を瞬間凍結する。

 

「魔道具を破壊すれば後で絶対にバレるからな……」

 

 侵入の痕跡を残すわけにはいかない。

 

「でも凍らせるだけなら、後で溶けて元通りになる」

 

 全てを氷漬け、魔道具同士で連動していようと関係ない。

 霧が薄く漂う道のり、騎士たちがいないので堂々と進める。

 

「——本当に氷魔法は便利だよ」

 

 さっき使ったばかりの瞬間冷凍法は特に役立つ。

 例えば旅の時なんか、普段持っていけない食べ物を食料とする事ができるのだ。

 どうしても干し肉ばかりだと飽きるんでな。

 

「そういえばアウラさんにさんざん料理作らされたなぁ——」

 

 あの人メチャクチャ食うんだよ。

 それでいて料理ができない。というか色々できない。

 得意なのは戦闘だけだ。

 

「ちゃんと生活できてればいいけど……」

 

 今まで面倒見ていただけあって心配だ。

 あの人自体、俺がこの任務をやることに最後まで大反対していて——

 

「……っと到着、ここだな」

 

 ついに禁書庫、その入口までたどり着いた。

 目の前には巨大かつ重厚な扉が待ち構える。

 

「やっぱここは特に厳重そうだ」

 

 この先に目当ての代物がある。

 そのほとんどがトップシークレット、納得の厳重性だ。

 

数字(ダイヤル)暗号(コード)(キー)、それに加えて最新の魔力認証式ロックまで……」

 

 流石に一筋縄ではいかないだろう。

 それに単純に凍らすだけでも進めない。

 

「——こっちも色々魔道具持って来てる」

 

 (ストレガ)さんや(ダンテ)さんが開発したから性能は超一級。

 後は俺のスキル次第。

 王国の秘密を守る扉、相手に不足はない。

 

「……勝負!」

 

 

 

 ——そうして解除に取り掛かること30分が経過。

 周囲に警戒しているのもあり、集中と緊張で汗をかく。

 

「これで……」

 

 かなり難しい施錠。

 痕跡を残さずに解除する、いつも以上に時間を要したが——

 

「でき、た!」

 

 ガチャリと鈍い音を発ててゆっくり扉が開く。

 

「はあぁ……ようやくだ……」

 

 しかし休んでいる暇はない。

 解放された禁書庫、注意しながら足を踏み入れる。

 うん。罠となる魔道具の反応は内部に感じない。

 

「……結構広い」

 

 書籍に文献、ファイルされた記録書、様々な物がここにある。

 

「この中から目当ての書物を探すのは骨が折れるぞ……」

 

 しかしそう思ったのは束の間。

 

「あ」

 

 入ってすぐの所だ。

 召喚された勇者に関係する物、それだけ集められたコーナーがあったのだ。

 

「ラッキー。王国の連中も迂闊(うかつ)だな」

 

 どうせこの禁書庫は侵入されないと思っているのだろう。

 確かに素晴らしいセキュリティーだったよ。

 

「並の侵入者だったら即アウト。でも相手が悪かったな」

 

 ただ俺としても、鍵開けでこんなに時間が掛ったのは久しぶりだった。

 

「……召喚儀式に関係する書物もある。後は過去の勇者の伝記なんかも」

 

 しかし一番欲しているのは——

 

「お、これだな。勇者の個人情報をまとめたレポート」

 

 年齢や身長体重、身体能力や出身地について聴取したもの。

 もちろん異能についても記載されている。

 俺の目測とは違う、研究者が色々吟味(ぎんみ)した上での見解が書かれているのだ。

 

「それでハルカゼさんの異能は——」

 

 ペラペラとページをめくり該当欄を見つける。

「……えーっと、現時点ではマイ・ハルカゼの異能を『時間逆転(タイム・ターン)』と断定する、か」

 

 うーん、俺はもう2ランクぐらい上の異能と踏んでるんだけど。

 

「解釈の仕方は合ってるけど時間逆転じゃちょっとな、断定した理由も信憑性低いし……」

 

 この資料を鵜呑みにするのは止めておいた方が良さそう。

 

「なにせ彼女の力は、アレ(、、)の復活(、、、)さえ可能に——」

 

 脳に過る1つの可能性。

 世の中には色々な組織や集団がある。

 彼女の異能が俺の予想通りであったとし、もしあの連中の手にでも渡ったら——

 

「……いや今はいい。仕事を済ませよう」

 

 ボスの言った通り色々データは揃っている。

 考えるのは後でいいだろう。

 早々に写してこの場を去るべきだ。

 

「ん?」

 

 だが資料を漁っていて気付く。

 勇者の基本情報だけをまとめた冊子。

 その最後のページに知らない名前があるのだ。

 

「……ショーゴ・マノ? 誰だ?」

 

 4人の厚いデータに比べ、その男についての資料はたったの1枚で完結している。

 

「出身はニホン、現在消息は不明……」

 

 何者かと疑った。

 しかし読むと正体判明へのピースは埋まっていく。

 そして最後に決定打、彼の備考欄にはこう書いてあった。

 

 『勇者召喚(、、、、)に巻き(、、、)込まれた(、、、、)()

 

 俺は知る。

 今回召喚された異世界人、それは『5人』であったと——

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