この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました 作:東雲(しののめ)
「……長かった……」
疲れた。
純粋に疲れたよ。
「まさか1時間以上も授業をする事になるとは……」
あの時、自分でも驚くぐらい熱の入った授業をしてしまう。
すると休み時間はすぐ終了。
次の授業の時間があっという間に来る。
「ただ次の授業の先生も俺の魔法学聞いて、受講したいってぶっちゃけるんだもんな……」
すると次の歴史の時間も俺の講義へと早変わり。
こうしてまるまる1時間掛け、俺は俺の魔法学を伝えた。
「でも最終的には皆から感謝されたんだ」
より信頼された、そう考えればいい。
マイさんも結構話し掛てくるし、監視任務もより円滑化しただろう。
「……1日ってすぐ終わるんだなぁ」
学園に通うだけ、気付けば1日が終わっている。
今だってもう帰路の途中、少し前まではスミスも一緒だった。
(ちょっとした充実感がある。最近になって感じ始めた新感覚だ)
同年代と過ごすってのは新鮮。
楽しい、そう感じる時もたまにあるくらいで——
「というか夕方でも人が多いな。流石は大国の首都だけある」
大通りを歩いているというのもあるが、いやはや人酔いしそう。
「そうだ、夕飯どうしよ……」
ここに来るまでは
生活担当は俺、料理スキルはそこそこあると思っている。
「お、この野菜安いな」
鍛えられた眼力は安い値札を見逃さない。
「こりゃ可愛いお嬢さんだ! サービスしとくよー!」
「あはは……じゃあ……」
男用の制服着てるんですけど……
ただ女と間違われてオマケを貰える、こういう時は特だな。
「まいどー! また来てねー!」
「は、はい……」
おじさんに感謝しつつ帰路に戻る。
(貯金は十分すぎるほどあるけど、派手な使い方はできない)
他大陸から1人で来た学生……という設定。
周りに怪しまれないよう相応の行動を心がける。
「慎ましい生活をってな」
俺は他の
「1人でいる分には問題ない。ただもし他のメンバーに鉢合わせようものら……」
考えるだけでおそろしい。
「変人や狂人しかいない……一緒にいるだけで目立つのは明らか……」
でもまさかこの王国で遭遇することはないだ——
「あら、クレスちゃんじゃない」
鉢合わせしようものなら、監視の任務が高確率で破綻する。
そう思った矢先のことだ。
「え……?」
食材の品定めしつつ歩く俺に、声を掛ける人物が現れた。
「ひっさしぶりー。まさかこんな所で会うだなんてね」
話し掛けてきたのは金髪の美人さん。
しかも何故かメイド服を着ている。
(誰だ……?)
見覚えはない。
ただやけに馴れ馴れしいというか、覚えのあるネチッとした喋り方をする。
「クレスちゃんは相も変わらずカ・ワ・イ・イ!」
「……?」
「やぁねえ。もしかして私のこと忘れちゃったのー?」
「…………!?!?」
え? ええ?
まさか……
「いやんいやん! 超ショックなんですけどー!」
目の前でクネクネを身をよじる女。
(何故か虫唾が走る甘いボイスと喋り方、そしてこのキモイ動き……)
1人、心当たりがある。
しかしその人は女じゃない。
「クレスちゃんのせいでホルモンバランスが崩れちゃうー」
「…………」
「ちょっとー。アタシのボケに何の
「……遠回しに下ネタへ繋げようとしてません?」
「あ、分かっちゃった? するどーい」
あーはい、もう正体は判明。
この人は見た目が美人なだけで女じゃない。
男である。しかも40過ぎのおっさん。
「まさかハーレンスで出会うとは思ってなかったわぁ。もしかして運命の——」
「違います」
「即拒否!? 痺れるうううううううううううううううううううううう!」
「……はぁ」
大通りで突然奇声を上げたため、周りが注目する。
「こういうのだよ……」
監視任務で目立ちたくない俺からすれば悪でしかない。
「はぁはぁはぁはぁ」
「凄いギラついた眼してますね……」
「普段通りぃ!」
「そして相変わらず情緒も不安定だし」
「テンションがアゲアゲなだけ!」
俺の気持ちは露知らず。
彼は路上でひとり身をよじらせ荒息を立てている。
軽く白目も向いているし。
「このままだと不審者として通報されるか——」
彼は見た通り変態である。
周りもざわつき、騎士たちが来るのも時間の問題だろう。
「ならまずはこの場を離れないと……!」
「2人だけで逃避行? クレスちゃんも大人になったわねぇ……」
遠い目をしながら、アンタは俺の母親か。
「バカなこと言ってないで走ってください! 場所を移します!」
この男の名前はボーン・ボンボーン。
『
そして——