この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました   作:東雲(しののめ)

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第15話:鉢合

「……長かった……」

 

 疲れた。

 純粋に疲れたよ。

 

「まさか1時間以上も授業をする事になるとは……」

 

 あの時、自分でも驚くぐらい熱の入った授業をしてしまう。

 すると休み時間はすぐ終了。

 次の授業の時間があっという間に来る。

 

「ただ次の授業の先生も俺の魔法学聞いて、受講したいってぶっちゃけるんだもんな……」

 

 すると次の歴史の時間も俺の講義へと早変わり。

 こうしてまるまる1時間掛け、俺は俺の魔法学を伝えた。

 

「でも最終的には皆から感謝されたんだ」

 

 より信頼された、そう考えればいい。

 マイさんも結構話し掛てくるし、監視任務もより円滑化しただろう。

 

「……1日ってすぐ終わるんだなぁ」

 

 学園に通うだけ、気付けば1日が終わっている。 

 今だってもう帰路の途中、少し前まではスミスも一緒だった。

 

(ちょっとした充実感がある。最近になって感じ始めた新感覚だ)

 

 同年代と過ごすってのは新鮮。

 楽しい、そう感じる時もたまにあるくらいで——

 

「というか夕方でも人が多いな。流石は大国の首都だけある」

 

 大通りを歩いているというのもあるが、いやはや人酔いしそう。

「そうだ、夕飯どうしよ……」

 

 ここに来るまでは(アウラ)さんと2人でずっと任務をやってきた。

 生活担当は俺、料理スキルはそこそこあると思っている。

 

「お、この野菜安いな」

 

 鍛えられた眼力は安い値札を見逃さない。

 

「こりゃ可愛いお嬢さんだ! サービスしとくよー!」

「あはは……じゃあ……」

 

 男用の制服着てるんですけど……

 ただ女と間違われてオマケを貰える、こういう時は特だな。

 

「まいどー! また来てねー!」

「は、はい……」

 

 おじさんに感謝しつつ帰路に戻る。

 

(貯金は十分すぎるほどあるけど、派手な使い方はできない)

 

 他大陸から1人で来た学生……という設定。

 周りに怪しまれないよう相応の行動を心がける。

 

「慎ましい生活をってな」

 

 俺は他の数字(ナンバーズ)と違いまだ常識的、細かい配慮だってしてるんだ。

 

「1人でいる分には問題ない。ただもし他のメンバーに鉢合わせようものら……」

 

 考えるだけでおそろしい。

 

「変人や狂人しかいない……一緒にいるだけで目立つのは明らか……」

 

 でもまさかこの王国で遭遇することはないだ——

 

「あら、クレスちゃんじゃない」

 

 鉢合わせしようものなら、監視の任務が高確率で破綻する。

 そう思った矢先のことだ。

 

「え……?」

 

 食材の品定めしつつ歩く俺に、声を掛ける人物が現れた。

 

「ひっさしぶりー。まさかこんな所で会うだなんてね」

 

 話し掛けてきたのは金髪の美人さん。

 しかも何故かメイド服を着ている。

 

(誰だ……?)

 

 見覚えはない。

 ただやけに馴れ馴れしいというか、覚えのあるネチッとした喋り方をする。

 

「クレスちゃんは相も変わらずカ・ワ・イ・イ!」

「……?」

「やぁねえ。もしかして私のこと忘れちゃったのー?」

「…………!?!?」

 

 え? ええ?

 まさか……

 

「いやんいやん! 超ショックなんですけどー!」

 

 目の前でクネクネを身をよじる女。

 

(何故か虫唾が走る甘いボイスと喋り方、そしてこのキモイ動き……)

 

 1人、心当たりがある。

 しかしその人は女じゃない。

 

「クレスちゃんのせいでホルモンバランスが崩れちゃうー」

「…………」

「ちょっとー。アタシのボケに何のツッコミ(、、、、)もなし?」

「……遠回しに下ネタへ繋げようとしてません?」

「あ、分かっちゃった? するどーい」

 

 あーはい、もう正体は判明。

 この人は見た目が美人なだけで女じゃない。

 男である。しかも40過ぎのおっさん。

 

「まさかハーレンスで出会うとは思ってなかったわぁ。もしかして運命の——」

「違います」

「即拒否!? 痺れるうううううううううううううううううううううう!」

「……はぁ」

 

 大通りで突然奇声を上げたため、周りが注目する。

 

「こういうのだよ……」

 

 監視任務で目立ちたくない俺からすれば悪でしかない。

 

「はぁはぁはぁはぁ」

「凄いギラついた眼してますね……」

「普段通りぃ!」

「そして相変わらず情緒も不安定だし」

「テンションがアゲアゲなだけ!」

 

 俺の気持ちは露知らず。

 彼は路上でひとり身をよじらせ荒息を立てている。

 軽く白目も向いているし。

 

「このままだと不審者として通報されるか——」

 

 彼は見た通り変態である。

 周りもざわつき、騎士たちが来るのも時間の問題だろう。

 

「ならまずはこの場を離れないと……!」

「2人だけで逃避行? クレスちゃんも大人になったわねぇ……」

 

 遠い目をしながら、アンタは俺の母親か。

 

「バカなこと言ってないで走ってください! 場所を移します!」

 

 この男の名前はボーン・ボンボーン。

 

 『究極生命体(オカマゲノム)』と世間から恐れられ、同族(オカマ)からは神と崇拝される女装おっさん。

 

 そして——災厄の数字(ナンバーズ)の8人目である。

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