この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました 作:東雲(しののめ)
「——魔獣と一緒にその場所まで破壊しないください! 何度言ったら分かるんですかアウラさん!」
「——悪かったって」
「——今回なんて島! 島ですよ!? クレス君がいなかったらどうなっていたか!」
「——はいはい、申し訳ないね」
どうも。クレス・アリシアです。
何とか先日の任務は終了、無事に
(ただ隣ではアウラさんが絶賛説教中だけど)
なにせ魔獣どころか調子に乗って島ごと燃やしたのだ。
俺が凍らせなければ炎は大陸にまで及んでいただろう。
「……腹減ったなぁ……」
アウラさんは紅蓮色の髪を面倒くさそうに
少しも反省してないな。
「まったくもう……」
そんなバカ……じゃなくてアウラさんに説教をしている苦労人の紹介。
名をセローナ・レントナー。
「アウラさん、全然
「大丈夫だクレス。次もバシッて決めてやるから」
「だからそれが——」
「それがダメなんですって! また評判が悪くなります!」
俺が言うまでもなくセローナさんが食らいつく。
頭を抱えながら深い溜息も。
ほんとお疲れ様です……。
「クレス、今日は肉が食べたい」
「今日はって、いつも肉じゃないないですか。あとたまには自分で作ってくださいよ」
「面倒だ。それに飯はクレスが作った方が美味い」
アウラさんは5番目を冠しているが、特に上下関係がある組織ではない。
セローナさんの説教をただの小言としか感じないのもそのせい。
しかも大食漢ゆえか、このタイミングでもう夕飯の話をしてくる。
「――セローナ、それぐらいにしておけ」
ただ、この組織にも上下間で例外はある。
それが——
「おおっ! やっぱボスは話が分かるな!」
「確かに私は話が分かる女、だからアウラは
「謹慎!?」
「ペナルティーだよ。毎度のことだが少しは加減を覚えてくれ」
ここでアウラさんに助け船が……って違ったか。
それを告げたのは上下関係が薄いここでの明確な頂点。
正体はここのボス、『Ⅰ』を冠するエリザさんだ。
「くれすぅ……」
「擁護できないですね」
「っく! 薄情者!」
俺たちの正面、立派なデスクにドッシリ構えるボスの姿。
(まさか逆らえるわけもなし、というか悪いのはアウラさんだから)
ボスが一気に吐いた
重い空間で、どうやら酌量の余地はないらしい。
「そんな謹慎……謹慎だなんて……」
こうなってはアウラさんも黙るしかない。
なにせボスが
もっと大きく言えば世界で一番強い。
(口ごたえしたら拳骨制裁される。あれ相当痛いんだよなぁ)
神も、魔王も、魔獣も、かつて存在したとされる勇者とやらも。
ボスは全てを平伏させる力を持っているのだ。
「ふぅ、今回もご苦労だったなクレス」
「ホント大変でしたよ」
「はっはっは、お前は毎回そう言うな」
「事実ですもん。アウラ先輩とペアってのは……」
「はあ!? 私と組んだせいってか!?」
俺の言葉に不満、ここでアウラさんに絡まれそうになるが——
「はいはい。アウラさんは少しコッチに来てくださいね」
「ちょっ! 引っ張るなってセローナ!」
セローナさんがアウラさんの首根っこを掴む。
そしてどこかへ強引に連れていく。
(助かりましたセローナさん)
そして残されるのは俺とエリザさん、つまりボスと2人きりとなる。
「まったく、アウラは相変わらずだな」
「根は凄い良い人なんですけどね」
なんだかんだ言いつつアウラさんのことは心から信頼している。
(出会った当初は、かなり冷めきった関係だったけど……)
色々あって今ではとても信頼できる間柄に進展。
恥ずかしくて口には出せないが、正直最高のパートナーだと自分では思っている。
「さてクレス、お前が
「そうですね。まあ変な人ばかりですけど……」
1年近くタッグを組んでいるアウラさんはともかくとして。
他の
「皆さんのコミュニケーション能力が異常に高いお陰で、不思議なほど早く打ち解けられましたよ」
メンツ的にはオカマとかロリババアとか戦闘狂とか。
濃厚キャラのオンパレードだが。
「ふむ。慣れたなら良し。もう心配する必要はなさそうだな」
俺をこの組織に勧誘したのはボスだ。
誘った当人としては気がかりなところもあったのだろう。
安堵させられたなら何より。
そしてこの話にひと段落、途端に緩まっていたボスの表情が変わる。
——これ、真剣な時のやつだ。
「帰還早々で悪いんだがな、
「依頼、ですか?」
普段だったら任務後には休暇が与えられる。
ただ俺にこの話をする以上、もう新たな任務をやって欲しいってことだろう。
緊急の案件なのか?
「もうすぐ春が来る」
「そ、そうですね」
神妙な表情のわりに当然のことを仰る。
頷くぐらいしかリアクションできないぞ。
「実はな、ハーレンス王国がこの春に
「勇者召喚っ!?」
季節の
思わず大きな声を出してしまい、慌てて口を塞ぐ。
「……す、すいません。普通にビックリしたので」
ハーレンス王国とはユグレー大陸を
帝国に次ぐ実力主義国家で、領土も広いし経済も安定している国だ。
「ただの噂じゃないんですか?」
「それが本当らしい。私の方でも裏は取れている」
今まで勇者召喚を試みた国や機関は星の数ある。
(ただ成功したことは一度も、いや一度だけあるか——)
唯一の成功例は千年ほど前。
既に滅んではいるがとある国が成し遂げたとされる。
でもそれはきっと奇跡だったのだろう。
「最近は魔王たちが活発に動く。王国の連中はそれに恐れをなしてな」
「それで勇者召喚に至ったと……」
「実際問題、王国は少し前に魔族の襲撃も受けたそうだ」
近頃は魔王の何人かがよく動いている。
危険は直近まで迫っているらしい。
「警戒するのは当然ですけど、それでも勇者召喚にまで踏み切るとは……」
「もちろん王国もアレが人類史で1度しか成功していない、最難関の召喚術だと知っている」
「ただその上で挑む、そういうことですよね?」
自分的には儀式に使う魔道具や人員を、防衛に
しかしボスの口振りから察するに、王国には勝算があるらしい。
「これまでだったら無視していた。ただハーレンス王国の姫がかなり特殊だ」
「特殊?」
「神からの
「異能力者……」
魔力保有量や適性属性に左右はされるものの、魔法はこの世界にいる誰もが使える。
ただ魔法とは別で『異能』というものも存在する。
それは限られた人しか使えない力。
(割合的には百万人に1人いるとかいないとか——)
その多くが強力無比。
いつの時代も異能所有者が世界を動かすとされる。
「仕入れた情報を
「なるほど……」
「だいたいの背景は分かったな?」
「はい」
「クレスは理解が早くて助かるよ。なら仕事の説明に移ろうか——」
…………ゴクリ。
本題を話すというボス、今度は満面の笑みを浮かべている。
召喚に携わる姫の暗殺か?
それとも勇者自体の暗殺か?
固唾を一飲み。おそらく人並みの仕事はくれそうにない。
「そこで! クレスにやって欲しい任務は――」
ボスは一拍おいて、高らかに告げる。
「――ズバリ! 『監視』だ!」
……
…………はい?
「誰かを暗殺するんじゃ……」
「監視だ!」
「えーっと……」
予想の斜め上どころか真上を抜いてくる。
返す言葉が見つからない。
「勇者は召喚された後、スキルアップのために王国の魔法学園に通うらしい」
「ま、まさか……」
唖然とするこちらに、ボスは今日一の笑顔で告げる。
「クレス、お前には