この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました   作:東雲(しののめ)

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第18話:盗撮

「——傍から見られれば完全に不審者だな」

 

 林間合宿のメンバーも決まって、当日まで残すところ数日。

 俺は——盗撮をしていた。

 

(ストレガ)さんはホント何でも作れるっていう……」

 

 うつ伏せの姿勢で芝生にまぎれる。

 そして右手に構えるは映像を録画する魔道具。

 道具の名は『アトデタノシーム』

 

(相変わらずセンスのない名前だけど——)

 

 製作者曰く、本来の用途は美少女や美女の姿を映像として記録。

 文字通り、後で楽しむ事を目的とした魔道具らしい。

 

「ま、俺はそんないかがわしい事はしない」

 

 あくまでボスに送る資料の1つとする。

 現在は丘の上? 少しせり立った場所から見下ろす形。

 昼休み、学食にて食事中の勇者一行を撮影中だ。

 距離は結構遠いが、拡大機能もついているので問題ない。

 

「ただ外のテラスで食事してくれるのはありがたい。室内の場合、流石に接近せざるを得ないからな」

 

 王都の中心にあるくせに、ひたすらに広い敷地を持つ学園。

 人が来ない穴場を見つけるのは容易だ。

 

(昼休みにわざわざこんな辺鄙(へんぴ)な場所に来る生徒もいまい)

 

 俺が居る場所は小さな公園みたいな所、といってもベンチが1つあるだけ。

 

「本当は校舎内の上層から見下ろす形にしたかったけど……」

 

 色々考えた結果、ここがベストポジションだと断定した。

 

「——勇者たちはこの世界の食事に順応してる、と」

 

 あの調子なら初見でも大抵の料理は食べそう。

 

「毒や薬を盛るのも案外簡単にできそうだな」

 

 こうして映像を撮りながらも、調査書に思ったことを書き込んでいく。

 勇者4人プラス補佐役の公爵令嬢、なかなかに豪華な面子だ。

 

「ただ、マイさんはちょっと食べる量が少ないかな。食事ペースだいぶ遅いし」

 

 彼女に格別の才を見出してから、監視の重点は主にマイさんに向いた。

 あの姿を見たのもあり、個人的にもだいぶ気に掛かっている。

 

「たぶん小食ってことだけじゃないよな……」

 

 おそらく精神的負荷が食欲を減退させている。

 周り喋りながらにしても、あまりに食事ペースが遅い。

 

「ん? あれは貴族の連中か?」

 

 そんな勇者一行に近づく集団? がいる。

 身なりからしておそらく貴族の子息子女たちだろう。

 

「媚びを売りに来たわけね……」

 

 特にマイさんへの接触は多い。

 やはりこの国の貴族は彼女が『特別』だと理解している。

 

「自分の子供まで使って近づこうとは……対処するマイさんは大変だ」

 

 おそらく王城でもそうなんだろう。

 貴族がわんさか近づいて来るに違いない。

 だがそうなってしまうだけの力を秘めている。

 

「なにせ彼女の異能、使い方によってはどんな(、、、)封印物(、、、)も解除できる——」

 

 そこらの結界魔導士など塵と同義。

 マイさんの再生能力は、傷を癒す以上に恐ろしい用途があるのだ。

 

「これは近い内に襲撃があるか——?」

 

 ボーンさんから聞いた正体不明(アンノウン)

 最近活発な魔王の動き。

 奴等が勇者に注目しないわけがない。

「すぐはないかもしれないが、そう遠くない時に勇者を巡って戦いが起きる——」

 

 っあ、スガヌマが野菜残して怒られてる。

 

「説教の相手はワドウさんか。あの人って意外と根は真面目なんだよなぁ」

 

 しかもスガヌマには特に気にかけていて——

 

「おっと、俺もそろそろ飯食っておくか」

 

 時間もそう多くあるわけではないし、頃合いを見て自分も補給をする。

 

「腹が減っては監視はできぬってな」

 

 そこで持って来ていた食料を取り出だそうと——

 

「……ん? 人の気配?」

 

 警戒していたが故、誰かが接近してくることは分かった。

 うつ伏せだった姿勢を起こす。

 

「なんでこんな場所に人が来る……」

 

 見据えた方から数秒もしない内に気配の主は訪れるだろう。

 魔道具出しっぱなしの状況、回避の時間はない。

 

「————あら」 

 

 感じ取った通り、間もなくして俺の前には1人の女生徒が現れた。

 煌めく金髪、澄んだ碧眼、左の泣きボクロがまた色っぽい。

 

(美の化身って言われても納得の容姿だな……)

 

 遠目から見ても分かる、顔も身体も完璧設定だ。

 容姿に無頓着な俺でもそう感じるくらいの美人さんと遭遇。

 

(あれ? でもこの人って——)

 

 これだけの容姿、一度見たら忘れる方が難しい。

 

「こんにちは」

「こ、こんにちは」

 

 何事もないように挨拶をされる。

 まさか——

 

「あの、俺のこと、覚えてますか……?」

 

 自分は既知でも相手はどうか。

 

(あの時は急いでて名前を名乗るどころじゃなかったし……)

 

 初めて会った当時の事を思いだす。

 その時の俺は受験者の1人であって、案外もう忘れられて——

 

「ふふ。もちろん覚えていますよ」

 

 クスリと笑って彼女はそう言った。

 

「もう一度会いたいと思ってましたが、まさかこんな場所で再会するとは思いませんでした」

「もう一度会いたい……?」

「ええ」

 

 思い出すは王立魔法学園、入学試験の2日目。

 俺はその日勇者たちと出会ったんだ。

 ただ4人もいたという事実に頭が一杯になり、敷地内で迷ってしまう。

 

 そんな迷子な時にたまたま遭遇。

 助けてくれたのがこの人だった。

 会場まで案内してくれて、命の恩人ならぬ受験の恩人である

 

「改めまして、お久しぶりですね――慌てん坊の受験生さん」

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