この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました 作:東雲(しののめ)
「——傍から見られれば完全に不審者だな」
林間合宿のメンバーも決まって、当日まで残すところ数日。
俺は——盗撮をしていた。
「
うつ伏せの姿勢で芝生にまぎれる。
そして右手に構えるは映像を録画する魔道具。
道具の名は『アトデタノシーム』
(相変わらずセンスのない名前だけど——)
製作者曰く、本来の用途は美少女や美女の姿を映像として記録。
文字通り、後で楽しむ事を目的とした魔道具らしい。
「ま、俺はそんないかがわしい事はしない」
あくまでボスに送る資料の1つとする。
現在は丘の上? 少しせり立った場所から見下ろす形。
昼休み、学食にて食事中の勇者一行を撮影中だ。
距離は結構遠いが、拡大機能もついているので問題ない。
「ただ外のテラスで食事してくれるのはありがたい。室内の場合、流石に接近せざるを得ないからな」
王都の中心にあるくせに、ひたすらに広い敷地を持つ学園。
人が来ない穴場を見つけるのは容易だ。
(昼休みにわざわざこんな
俺が居る場所は小さな公園みたいな所、といってもベンチが1つあるだけ。
「本当は校舎内の上層から見下ろす形にしたかったけど……」
色々考えた結果、ここがベストポジションだと断定した。
「——勇者たちはこの世界の食事に順応してる、と」
あの調子なら初見でも大抵の料理は食べそう。
「毒や薬を盛るのも案外簡単にできそうだな」
こうして映像を撮りながらも、調査書に思ったことを書き込んでいく。
勇者4人プラス補佐役の公爵令嬢、なかなかに豪華な面子だ。
「ただ、マイさんはちょっと食べる量が少ないかな。食事ペースだいぶ遅いし」
彼女に格別の才を見出してから、監視の重点は主にマイさんに向いた。
あの姿を見たのもあり、個人的にもだいぶ気に掛かっている。
「たぶん小食ってことだけじゃないよな……」
おそらく精神的負荷が食欲を減退させている。
周り喋りながらにしても、あまりに食事ペースが遅い。
「ん? あれは貴族の連中か?」
そんな勇者一行に近づく集団? がいる。
身なりからしておそらく貴族の子息子女たちだろう。
「媚びを売りに来たわけね……」
特にマイさんへの接触は多い。
やはりこの国の貴族は彼女が『特別』だと理解している。
「自分の子供まで使って近づこうとは……対処するマイさんは大変だ」
おそらく王城でもそうなんだろう。
貴族がわんさか近づいて来るに違いない。
だがそうなってしまうだけの力を秘めている。
「なにせ彼女の異能、使い方によっては
そこらの結界魔導士など塵と同義。
マイさんの再生能力は、傷を癒す以上に恐ろしい用途があるのだ。
「これは近い内に襲撃があるか——?」
ボーンさんから聞いた
最近活発な魔王の動き。
奴等が勇者に注目しないわけがない。
「すぐはないかもしれないが、そう遠くない時に勇者を巡って戦いが起きる——」
っあ、スガヌマが野菜残して怒られてる。
「説教の相手はワドウさんか。あの人って意外と根は真面目なんだよなぁ」
しかもスガヌマには特に気にかけていて——
「おっと、俺もそろそろ飯食っておくか」
時間もそう多くあるわけではないし、頃合いを見て自分も補給をする。
「腹が減っては監視はできぬってな」
そこで持って来ていた食料を取り出だそうと——
「……ん? 人の気配?」
警戒していたが故、誰かが接近してくることは分かった。
うつ伏せだった姿勢を起こす。
「なんでこんな場所に人が来る……」
見据えた方から数秒もしない内に気配の主は訪れるだろう。
魔道具出しっぱなしの状況、回避の時間はない。
「————あら」
感じ取った通り、間もなくして俺の前には1人の女生徒が現れた。
煌めく金髪、澄んだ碧眼、左の泣きボクロがまた色っぽい。
(美の化身って言われても納得の容姿だな……)
遠目から見ても分かる、顔も身体も完璧設定だ。
容姿に無頓着な俺でもそう感じるくらいの美人さんと遭遇。
(あれ? でもこの人って——)
これだけの容姿、一度見たら忘れる方が難しい。
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
何事もないように挨拶をされる。
まさか——
「あの、俺のこと、覚えてますか……?」
自分は既知でも相手はどうか。
(あの時は急いでて名前を名乗るどころじゃなかったし……)
初めて会った当時の事を思いだす。
その時の俺は受験者の1人であって、案外もう忘れられて——
「ふふ。もちろん覚えていますよ」
クスリと笑って彼女はそう言った。
「もう一度会いたいと思ってましたが、まさかこんな場所で再会するとは思いませんでした」
「もう一度会いたい……?」
「ええ」
思い出すは王立魔法学園、入学試験の2日目。
俺はその日勇者たちと出会ったんだ。
ただ4人もいたという事実に頭が一杯になり、敷地内で迷ってしまう。
そんな迷子な時にたまたま遭遇。
助けてくれたのがこの人だった。
会場まで案内してくれて、命の恩人ならぬ受験の恩人である
「改めまして、お久しぶりですね――慌てん坊の受験生さん」