この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました 作:東雲(しののめ)
生徒たち野営をする中、同じくその森にて潜む者がいる。
「——この世界も随分変わったなぁ」
僕は現在、ハーレンスなる国が治める土地に立つ。
そしてこの森の最奥を根城とし、観察に当たっていた。
「まあ千年ぶりの現世だし、変化が凄いのは仕方ない」
少し前に長き眠りから目覚めた。それから協力者も手に入れたが——
「……あれが今回の勇者なんだね」
今は他の事などどうでもいい。
注目すべきは、僕の視界に映る4人の
「精霊よ。もう少し拡大して映し……そうそう。ありがとう」
時間は夜、星が頭上に煌めく頃合い。
ただ『精霊』を駆使すれば、こうして離れた位置からでも観察することはできる。
「男が2人、女の子が2人か……」
黒髪黒眼という顔立ちから彼らが日本人、少なくともアジア人だと断定はできる。
「そもそも勇者が此処にいるって知ってるから、こうしてわざわざ来たんだけど」
協力者たちを無視して出て来たが、どうやら情報は間違いないようだ。
「今は夕飯の最中と、なんだか呑気だね」
学校の行事かな?
勇者の周りには同年代と思われる少年少女がわんさかといる。
「……というかこのフード邪魔すぎ」
正体の露見を防ぐためにと渡された特殊装備。
ただ場所も場所、どうせ向こうからじゃ分からない。
「それに学生ごときに僕の隠形は見破れないだろう」
問題無いと踏み、被っていたフードを脱ぐ。
今の自分を見つけられるのは魔王や神獣ぐらい。
「だとしたら、あの男は一体何者だったんだろう——」
協力者たちとの打ち合わせ中に
「ずっと怠い怠い言ってたが、僕の精霊も軽く屠(ほふ)られたし……」
あの底知れぬ強さ、相当な手練れであったのは間違いない。
「始めは転生者か転移者だと思ったけど……」
接触時間は僅かだったが、おそらくこの世界の住人だった気がする。
「次に会ったら仲間に、それが無理なら殺すか——」
相対した者は数手交わしただけで去って行ってしまった。
最後の台詞と言えば『怠い。帰るわ』とだけ。
あの軽快かつ余裕そうな装い、正直ムカついた。
「この時代、現地人であんな強者もいるんだけど……」
勇者については少しガッカリ。
彼らの異能や魔法は垣間見ていないが、それでも風格という点で当時(、、)と大きく劣る。
「ただあの青い瞳の子は……」
直感的に感じ取る特別な才覚、精霊たちもまた彼女にだけ過敏に反応している。
「風格はともかく、能力的には用途がありそうだ——」
様々なプランを画策する。
あの大戦に赴いた時点で、もうこの世界には十分貢献しただろう。
「……今度は僕自身の願いを叶える番だ」
かつての大英雄が目を覚ましたら千年後の世界でした。
そんなラノベみたいなストーリーを現実に起こす。
「ただ無双できると思いきや、この時代は猛者が多い」
脳裏には未だあの男の残像、
「魔王のレベルだってどれだけ変ったか把握しきれていないし……」
色々考えると、やはり同じ転移者(、、、)として勇者たちを手中には収めたい。
「……ん、どうした?」
観察の最中、氷の精霊たちが駆け足で寄ってくる。
傍から見ればただ青く光る玉、残光が空を描く。
「ふむふむ。素晴らしい氷魔法を使う人間がいるってことかい?」
精霊曰く少し離れた所に氷魔法の使い手がいる。
「美しい? 女の人ってこと……?」
僕の従僕たる精霊たちが嬉々として教えてくれる。
「よっぽどの才持つ者か……まさか5人目の勇者でしたなんてオチはないよな……」
もしくは転生者でした、とか。
ただ精霊たちの反応を見るに、その可能性は低そう。
「とりあえず一目見てみるか。精霊よ」
精霊眼を発動。木々や草木が邪魔をしようとも、この眼は全てを見通せる。
(ええーっと……)
間もなくして、精霊たちがソレダソレダと示す人物を発見。
「おぉ……」
それは——とても美しい少女だった。
流れる髪は青みがかった銀色、瞳もシルバー。
肌は白く透き通っていて、一層全体の美しさを増す。
「感嘆するねぇ。あの見た目で魔法も一級の才覚を持つ。天は二物を与えるってかい」
しかしそれでいて鋭さも宿す、まるで鋭利に研がれたナイフのようだ。
これは精霊たちが好みそうな——
「っ!?」
自分としても興味が湧いた。
だが観察はここで強制的に打ち切られることに。
なんと少女と目が合ったのである。
「僕の視線に気付いた!?」
偶然じゃない、その瞳は確かに気配を捉えているものだった。
急いで視線を外す。
「嘘だろ。この精霊眼に気付くってのか……」
末恐ろしい。あれが勇者と同い年? 同じ学生?
たった数秒、一連の事で悟る。
「……あれは間違いなく天才、いや化物だ」
かつての仲間を思い起こさせる、規格外すぎる存在。
(あのまま見続けていればコッチの存在が見破られていた……)
肝が冷えた、まさか学生相手にこんな思いをするとは。
「もう勇者たちより彼女を仲間にした方が良さそうな気がする……」
僕のこの驚きように精霊たちはゲラゲラ笑っている。
一見で理解、あの年でかなりの域に達しているよ。
「だけどこんな場所にいたんじゃ腐るなぁ……」
惜しい、出来るものなら自分が指南したい。
なにせ銀髪の少女は、本物の戦いってのを知らないはずだ。
「学生生活なんてクソ、実戦を沢山経験するべきだ」
リア充どもがワイワイしてるだけ、得るモノなんて何もなかったよ。
上から目線なのは、これでも色々な経験をしてきたからだ。
(まさかあの歳で
氷魔法に抜群の適性を持つレアな魔法使い、非常に手に入れたいところだ。
「勇者たちに仕掛けるついで、銀髪ちゃんの方にもアタックしてみるかな」
元々は勇者だけのつもりだったけど、良い人材を見つけた。
最初は丁寧に誘うが、まあ断られたら力づくで。
「いくら才があるとはいえ、僕に匹敵する技量は無いだろうし」
明日、僕は彼らを襲う。
襲って手駒に、もっと言えば
「あの連中がいなくたって、僕は1人で何でもできるんだ」
協力者たちには悪いが、好きにやらしてもらう。
勇者だろうが天才だろうが、騎士だろうが全部相手取るつもり。
「久しぶりの現世、果たして人はどれだけの進化をしたのかな——」