この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました   作:東雲(しののめ)

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第20.5話:同胞

 生徒たち野営をする中、同じくその森にて潜む者がいる。

 

「——この世界も随分変わったなぁ」

 

 僕は現在、ハーレンスなる国が治める土地に立つ。

 そしてこの森の最奥を根城とし、観察に当たっていた。

 

「まあ千年ぶりの現世だし、変化が凄いのは仕方ない」

 

 少し前に長き眠りから目覚めた。それから協力者も手に入れたが——

 

「……あれが今回の勇者なんだね」

 

 今は他の事などどうでもいい。

 注目すべきは、僕の視界に映る4人の同胞(、、)について。

 

「精霊よ。もう少し拡大して映し……そうそう。ありがとう」

 

 時間は夜、星が頭上に煌めく頃合い。

 ただ『精霊』を駆使すれば、こうして離れた位置からでも観察することはできる。

 

「男が2人、女の子が2人か……」

 

 黒髪黒眼という顔立ちから彼らが日本人、少なくともアジア人だと断定はできる。

 

「そもそも勇者が此処にいるって知ってるから、こうしてわざわざ来たんだけど」

 

 協力者たちを無視して出て来たが、どうやら情報は間違いないようだ。

 

「今は夕飯の最中と、なんだか呑気だね」

 

 学校の行事かな?

 勇者の周りには同年代と思われる少年少女がわんさかといる。

 

「……というかこのフード邪魔すぎ」

 

 正体の露見を防ぐためにと渡された特殊装備。

 ただ場所も場所、どうせ向こうからじゃ分からない。

 

「それに学生ごときに僕の隠形は見破れないだろう」

 

 問題無いと踏み、被っていたフードを脱ぐ。

 今の自分を見つけられるのは魔王や神獣ぐらい。

 

「だとしたら、あの男は一体何者だったんだろう——」

 

 協力者たちとの打ち合わせ中に1人(、、)の男(、、)に遭遇。

 

「ずっと怠い怠い言ってたが、僕の精霊も軽く屠(ほふ)られたし……」

 

 あの底知れぬ強さ、相当な手練れであったのは間違いない。

 

「始めは転生者か転移者だと思ったけど……」

 

 接触時間は僅かだったが、おそらくこの世界の住人だった気がする。

 

「次に会ったら仲間に、それが無理なら殺すか——」

 

 相対した者は数手交わしただけで去って行ってしまった。

 最後の台詞と言えば『怠い。帰るわ』とだけ。

 あの軽快かつ余裕そうな装い、正直ムカついた。

 

「この時代、現地人であんな強者もいるんだけど……」

 

 勇者については少しガッカリ。

 彼らの異能や魔法は垣間見ていないが、それでも風格という点で当時(、、)と大きく劣る。

 

「ただあの青い瞳の子は……」

 

 直感的に感じ取る特別な才覚、精霊たちもまた彼女にだけ過敏に反応している。

 

「風格はともかく、能力的には用途がありそうだ——」

 

 様々なプランを画策する。

 あの大戦に赴いた時点で、もうこの世界には十分貢献しただろう。

 

「……今度は僕自身の願いを叶える番だ」

 

 かつての大英雄が目を覚ましたら千年後の世界でした。

 そんなラノベみたいなストーリーを現実に起こす。

 

「ただ無双できると思いきや、この時代は猛者が多い」

 

 脳裏には未だあの男の残像、(くだん)の気怠そうな現地人である。 

 

「魔王のレベルだってどれだけ変ったか把握しきれていないし……」

 

 色々考えると、やはり同じ転移者(、、、)として勇者たちを手中には収めたい。

 

「……ん、どうした?」

 

 観察の最中、氷の精霊たちが駆け足で寄ってくる。

 傍から見ればただ青く光る玉、残光が空を描く。

 

「ふむふむ。素晴らしい氷魔法を使う人間がいるってことかい?」

 

 精霊曰く少し離れた所に氷魔法の使い手がいる。

 

「美しい? 女の人ってこと……?」

 

 僕の従僕たる精霊たちが嬉々として教えてくれる。

 

「よっぽどの才持つ者か……まさか5人目の勇者でしたなんてオチはないよな……」

 

 もしくは転生者でした、とか。

 ただ精霊たちの反応を見るに、その可能性は低そう。

 

「とりあえず一目見てみるか。精霊よ」

 

 精霊眼を発動。木々や草木が邪魔をしようとも、この眼は全てを見通せる。

 

(ええーっと……)

 

 間もなくして、精霊たちがソレダソレダと示す人物を発見。

 

「おぉ……」

 

 それは——とても美しい少女だった。

 流れる髪は青みがかった銀色、瞳もシルバー。

 肌は白く透き通っていて、一層全体の美しさを増す。

 

「感嘆するねぇ。あの見た目で魔法も一級の才覚を持つ。天は二物を与えるってかい」

 

 しかしそれでいて鋭さも宿す、まるで鋭利に研がれたナイフのようだ。

 これは精霊たちが好みそうな——

 

「っ!?」

 

 自分としても興味が湧いた。

 だが観察はここで強制的に打ち切られることに。

 なんと少女と目が合ったのである。

 

「僕の視線に気付いた!?」

 

 偶然じゃない、その瞳は確かに気配を捉えているものだった。

 急いで視線を外す。

 

「嘘だろ。この精霊眼に気付くってのか……」

 

 末恐ろしい。あれが勇者と同い年? 同じ学生?

 たった数秒、一連の事で悟る。

 

「……あれは間違いなく天才、いや化物だ」

 

 かつての仲間を思い起こさせる、規格外すぎる存在。

 

(あのまま見続けていればコッチの存在が見破られていた……) 

 

 肝が冷えた、まさか学生相手にこんな思いをするとは。

 

「もう勇者たちより彼女を仲間にした方が良さそうな気がする……」

 

 僕のこの驚きように精霊たちはゲラゲラ笑っている。

 一見で理解、あの年でかなりの域に達しているよ。

 

「だけどこんな場所にいたんじゃ腐るなぁ……」

 

 惜しい、出来るものなら自分が指南したい。

 なにせ銀髪の少女は、本物の戦いってのを知らないはずだ。

 

「学生生活なんてクソ、実戦を沢山経験するべきだ」

 

 リア充どもがワイワイしてるだけ、得るモノなんて何もなかったよ。

 上から目線なのは、これでも色々な経験をしてきたからだ。

 

(まさかあの歳で冒険者(プロ)ってこともないだろ)

 

 氷魔法に抜群の適性を持つレアな魔法使い、非常に手に入れたいところだ。

 

「勇者たちに仕掛けるついで、銀髪ちゃんの方にもアタックしてみるかな」

 

 元々は勇者だけのつもりだったけど、良い人材を見つけた。

 最初は丁寧に誘うが、まあ断られたら力づくで。

 

「いくら才があるとはいえ、僕に匹敵する技量は無いだろうし」

 

 明日、僕は彼らを襲う。

 襲って手駒に、もっと言えば(さら)うのだ。

 

「あの連中がいなくたって、僕は1人で何でもできるんだ」

 

 協力者たちには悪いが、好きにやらしてもらう。

 勇者だろうが天才だろうが、騎士だろうが全部相手取るつもり。

 

「久しぶりの現世、果たして人はどれだけの進化をしたのかな——」

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