この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました 作:東雲(しののめ)
俺は
高校に入学してすぐ、勇者としてこの世界に呼び出された。
「全然ゴブリンいねぇな」
「というか魔獣自体1匹もいないっていう……」
「凛花の探知魔法? にも引っかからないんだ」
「ええ。少なくとも近くから魔力反応は感じない」
凛花も春風さんも疑問を持ってるらしい。
「でも護衛の騎士さんたちは……」
「何も言ってこないよなー」
「だけどいつ魔獣が出てくるか分からない。幸樹はすぐ気を抜くから気を付けなさい」
「凛花はうるさい。お前は何様だ」
「は? 幼馴染ですが?」
俺と和道 凛花は腐れ縁。
普段はうるさいと言いつつも——
(幼馴染のコイツが居たからこそ、気持ちが楽になった面もある)
知らない世界に来た時は流石にビビった。
剣崎と春風さんとはそう親交が深いわけでもない。
真に腹を割って話せる相手がいるだけまだ良かったぜ。
(その点で言えば剣崎はすげえな。独りで生きて行けるだけの強靭なメンタルを持ってる)
春風さんは同性である凛花がいたから、きっとセーフだったんだろう。
(アリシアとも随分仲良くしてるみたいだけど)
ともかく、剣崎の順応能力は非常に高いってことだ。
「——どうしたんだい皆」
少し先、先頭を歩いていた剣崎が尋ねてくる。
どうやら俺たち3人の会話に気を止めたらしい。
「大した事は話してねえ」
「ええ。魔獣が全然いないなと」
斥候役は剣崎が名乗り出た。
曰くリーダーが先頭を歩くべきだと。
異能的には、本来俺がやるべき役目なのかもしれないけどな……
「その魔獣がいない理由だけどさ」
「なんか分かったのか?」
「ああ。もしかしたら俺の『神』の異能に勘づいているからかも」
「は?」
「あまりに強大な力だ、魔獣たちはそれに臆して——」
そりゃ違うだろぉ……
てかまーた異能自慢かい。
少し前にアリシアに負けたばかりだろうに。
「なにせ神様の加護だからね。特別すぎる」
「んー……」
「あはは……」
「そうですね……」
俺たちの反応ももはや固定化。
それでも自慢げに語るんだ、どれだけ周りが見えてないのやら……
(しかも勝手にリーダーポジションだし。まあ俺は全然良いけどさ)
召喚されてすぐ乗り気になったのが剣崎。
だから貴族受けもよく、成り行きでこうなった。
「だけど俺の異能の凄さを考えると、アイツは少し可哀そうだったなぁ」
「アイツ?」
「
実は俺たち4人の他に1人、この世界に呼ばれた男がいた。
だがソイツには特別な力は何もなく、ただの一般人だったらしい。
「気付けば姿が消えてたし。置手紙で旅に出るとか書いてあったらしいけど、もしかして王族や貴族の人たちに——」
「剣崎。その辺にしとけ。近くに騎士たちもいる」
「幸樹の言う通りです。不用意な発言は気を付けるべきかと」
「……だね、口外禁止って言われてるし……」
この国の人を完全に信用するのはまだ早い。
なんたって勝手な事情で無理やり呼ばれたんだ。
いつどんな理由で切られるか分からん。
「わ、分かったよ」
3人が注意しただけあって、剣崎も渋々頷く。
「じゃ、じゃあ、とりあえず課題の方にもど——」
この間俺たちは立ち止まっていた。
そしてようやく動き出そう、そう思った時のこと。
「——やっと会えたね」
そう遠くない位置。
黒い装束をまとった、1人の男がいた。
そして俺たちが気付いた瞬間には、何故か『やっと会えた』と投げかけてくる。
「……人?」
「誰だあれ?」
「わ、わかんない」
まず抱いた疑問、だだっぴろい森に何故この人はいる?
なんとなくだが、この行事の関係者とは思えない出立。
直感的に不審だと思った。
「やっと会えたとは? どちら様ですかね?」
何かが渦巻く空気、剣崎が先陣をきる。
「ほうほう。君がこの勇者一行のリーダーさんかな?」
「ああ! 名はユウト・ケンザキ!」
相手の素性も分からない中、高らかに名乗りを上げる。
「……なるほど。ケンザキ・ユウト君ね」
ふむふむと頭を揺らす男。
『……凛花』
『……どうやら思う事は同じなようね』
小声で確認、どうやら幼馴染も同意見らしい。
相対したコイツは、たぶん——
「勇者様! お下がりください!」
見守るだけだった騎士たちが、辺りからわんさか出てくる。
10、20、30、もう数えきれないくらい。
「これはこれは、凄い人数だねぇ」
男は騎士に囲まれてなお余裕といった感じ。
「ど、どういう事だ!?」
「落ち着いて剣崎君」
「おう。たぶんコイツは敵なんだ」
「敵……?」
王城の人たちからは話は事前に聞いていた。
色々な奴等が俺たちを狙いに来ると。
危惧していたことが実際に起きたわけだ。
「だけど——」
騎士がこれだけの人数いるんだ。
(しかも今の俺たちより確実に強い。王国でもトップクラスの護衛なんだ)
根拠のある安心感、この騎士たちを1人で倒すのはまず不可能で——
「雷の精霊よ」
しかし男は動じず。
その両手に光の粒? を集め出す。
ただ光と言うよりかは青白い色。
「——
ピカッ。
まさに瞬間の出来事。
目前、一迅の雷光が四方八方に分散したのだ。
そして——
「う、嘘だろ……!?」
時間にして1秒も経ってない。
だがしかし、男が放ったとされる電撃は騎士たち全てを穿つ。
悲鳴を上げる暇もなく、全てを地に伏せさした。
「凛花!」
「ええ!」
掛け合ってすぐさま迎撃態勢に。
俺は高速化を解放、凛花は頭上に幾つも魔法陣を展開する。
「待て待て。僕は殺し合いするつもりはないんだ」
「……な、なに?」
「騎士たちだって少し感電させただけ。死んではいないよ」
飛び出そうとした俺たちを諭す。
「なら目的は——」
「菅沼」
「な、なんだ?」
相手の真意を知りたい。
しかしその質問は、一歩前に出た剣崎に遮られる。
「この人の目的が何であれ、騎士の方々に攻撃をしたことは間違いない」
「そりゃ……」
「だからアイツは敵だ。この俺が倒す——!」
剣崎も異能を解放。
剣や装備、肉体自体にも光化を展開する。
その輝きは音と共に、眩い光は柱の如く天に昇った。
「今から少し説明しようって思ったんだけどな……」
「関係ない! 容赦はしないぞ!」
「まあいいけどさ……」
「っ! 行くぞおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
1人で飛び出す。
俺と凛花の準備もお構いなし、おそらく1人で十分と思ってる。
「——なんて雑な動きだい」
ユラリ。謎の男が右手を上げる。
「雷の精霊」
さっきと同様、瞬く間に紫電を大気に奔らせる。
「剣崎っ!」
声かけ虚しく、剣崎の奴は放たれた電撃に見事ヒット。
「……痺れ……て……アァア……」
まさに秒殺。むしろ当たりに行ったような動きだった
「えーこんなのも防げないのかい……」
剣崎の弱さは俺たちも知っているが、その一連に初見の男は困惑といった感じ。
「……グ……ゥ、」
「いくら何でもお粗末すぎる。いや、ダメなのは君だけか」
「俺は……死ぬ……の、か、」
「おいおい。勝手にシリアスにしてくれるなよ。ただの感電、もういいから寝といて」
剣崎の迷走っぷりに男もタジタジ。
面倒とばかりに意識を落とさせる。
「昨日は現地人であんな逸材もいるのかと驚いたのに、肝心の勇者の1人がこれだと——」
独り言をボソボソと呟く。
ただ俺たちはこれまでの光景を見て焦燥に駆られる。
「あ、そこの青い瞳の女の人」
「わ、私?」
「そうそう君だよ」
男は春風 舞を急に指さした。
そしてそのまま近づいて来て——
「舞は下がって! 幸樹!」
「っおう!」
ロクでもない事をしようってのは明白。
「私の友達に手出しはさせない……!」
普段は訳の分からないこと言う凛花も真剣。
(本気になってる。根っこの所は昔っから変わんねえな)
誰かが困った時、一番に動くにはいつも凛花だった。
そしてもう理解はしてる。
護衛はいない、コイツに抵抗できるのは自分たちだけだと。
「酷い警戒の仕様だ。少し近づいただけなのに」
「その動きが不審なんだよ!」
たぶん戦いじゃ勝てない。
なんとか隙を作って、この場から逃げたいが……
「やはり一度意識を断った方が楽だね。君たちにも一度眠ってもらおう」
奴はまた光の粒子を纏い出す。
電撃攻撃の予兆。
異能を使って高速回避し……
(っな! もう目の前に電撃が——!)
気付けば視界が真っ白に染まっていた。
それだけ雷速は早く、防ぎようがなくて。
「クソッ——!」
負けじと俺も高速で動くが軽くしか避けられない。
「凛花っ!」
痛みに耐えつつ何とか凛花を確認。
寸でで防御陣を張って自分と春風さんを守ったようだが、その表情は険しい。
「——残念、経験が足りなかったね」
なにせ一発防いだだけじゃ戦は終わらない。
実力は天地の差と悟る。
奴は再び雷撃を発射、動きが適格すぎて反応しきれない。
ダメだ。もうここまで——
「
しかし雷が着弾するよりも早く、俺の視界は白銀へと塗り替わった。
気付く。
目先には氷、下から壁状の氷が一瞬にして生えて来たのだ。
それが雷撃を遮断、凛花たちも同じように守られていた。
「——危ない危ない」
声がする。聞いたことのある声だ。
「——クラスメイトのピンチには間に合ったみたいだ」
振り返る。
木々の狭間、銀色の髪を揺らして奴は現れた。
「あ、アリシア……」
「よう。無事で何より」
「お前……」
もう助けは無いと思った、しかしその考えは覆される。
「おや銀髪の、君は——」
「
問答無用と言わんばかり。
アリシアは頭上に氷製の槍を作成、そして掃射。
しかしその莫大な弾数。ただただ圧倒される。
「スガヌマ」
「……?」
「一応助け来た。まだ気力はあるか——?」
何気なく声を掛けてくるアリシア。
こんな危機迫る状況だが、それでも俺は思ったよ。
あ、コイツかっけぇなって——