この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました   作:東雲(しののめ)

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第23話:同郷

 ——ついさっき莫大な魔力を感知。

 ただそれ以降は魔力の反応はなし、ケンザキの光を遠くから見たぐらいだ。

 

「近い……!」

 

 駆け抜ける木々の間、空気の変化が肌で分かる。

 

「っ見つけた!」

 

 遠目ながらもマイさんとワドウさん、スガヌマ? らしき姿を視認する。

 ついでに言えば彼女らの敵対者も——

 

「黒格好の人間! 本当に正体不明(アンノウン)に遭遇ってか!?」

 

 (ボーン)さんから聞いた特徴とどことなく類似。

 しかもその男の手は彼女らに伸びていて——

 

造形(クリエイト)氷壁(ウォール)!」

 

 電撃系統の匂い、ここで彼女らに変な手出しはさせない。

 

「——っん!?」

「——間に合った!」

 

 生み出した氷壁が敵の攻撃をコンマ数秒の差で防ぐ。

 間もなくして勇者たちの所にはせ参じた。

 

「危ない危ない。どうにか——」

 

 ギリギリ到着、決着する前に辿り着けた。

 スガヌマに軽く確認を取るが、まだ気力はありそう。

 

「君は——」

氷槍(ランス)全掃射(フル・バースト)!」

 

 とりあえず速射攻撃で足止め、容赦なく叩きに行く。

 

「く、クレス君……」

「っマイさん、ケガはない?」

 

 へたり込むマイさんたちにも一応確認を取る。

 

「私たちは大丈夫。だけど騎士の皆さんが……」

 

 マイさんたちの周囲には護衛騎士の姿があった。

 しかし何十人もいるそれは、全員が倒れている。

 

「死んではいないみたいだけど……」

 

 出血等はなし。精神干渉の類ではなさそうだ。

 

「あとケンザキは……」

「あ、あそこで倒れてる」

「さっき異能を使って向かっていったの。だけど全然歯が立たなくて……」

 

 それでやられたと。

 なら残念だがケンザキ、時すでに遅しで……

 

「——彼は死んでないよ。僕はちゃんと手加減した」

 

 氷が砕かれる音、俺の槍を全て破壊し奴は出てきた。

 

「もう出て来たのか……」

「今の学生は辛辣(しんらつ)だ。まさか出会って早々にこんな仕打ちに会わされるとは」

 

 改めて敵を視認する。

 恰好は黒一色、深くフードを被っているため表情は分からない。

 性別は声からして男、武器の携帯はなさそうだ。

 

「——こんにちは。銀髪の魔法使いさん」

 

 (ローラン)さんと戦ったとされる正体不明(アンノウン)って連中と特徴が被る。

 まさかこんなに早く仕掛けてくるとは……

 

「やや? もしかして僕の言葉通じてない? おかしいなー」

「聞こえてる」

「あ、良かったー。なにせ久しぶりの現世だからさ。ちゃんと君にも(、、、)聞こえてて安心」

 

 若干含みのある言い方。

 ただ喋り方からして年齢は若い方、いやそう判断するのは尚早……

 

「昨日の夜、視線を送ってきたのはアンタか?」

「そうだよ。君があんまり優秀そうだったから、つい見惚れちゃった」

「……」

「そこらに転がっている騎士とは違う。君からは格別の才を感じるんだ」

 

 男は口元を緩ませながらそう言った。

 数字(ナンバーズ)とまでは判明せずとも、俺が普通じゃないってことは見抜いてるわけね。

 

「な、なんで私たちを襲うんですか!?」

 

 会話の最中、マイさんが意を決して尋ねる。

 彼女たちも襲われたばかり、状況が把握できていないのだろう。

 

「襲った理由? それがね、実は人材探しをしているんだ」

「……人材、探し?」

「ちょっと人手不足でね、人を集めてるんだよ」

 

 ようは人攫(ひとさら)いってことね……

 

(奴は(ローラン)さんを退けた正体不明(アンノウン)の1人でほぼ間違いない)

 

 殺気とは違う嫌なオーラもガンガン感じる。

 

「ただね、勇者が弱すぎてビックリ。こんなに弱いと少し考えものだ」

「ど、どういう……」

「でも他のお三方は中々良いモノを持ってそう。特に青い瞳の君は——」

 

 ——コイツ、勇者の価値を見抜いてる。

 

「まあ今日の収穫は今回の(、、、)勇者たち(、、、、)と、そこの銀髪の魔法使いだね」

「クレス君も……?」

「そうさ。優秀な人材はいくらだって欲しい。君にも協力してもらうよ」

 

 標的に俺までカウントされているらしい。

 

「アンタ、一体何者なんだ?」

「僕の正体? 気になっちゃう?」

 

 それは俺に限らずこの場にいる全員が同じ。

 勇者たちも無言で肯定を示す。

 

「そうかそうか、まあどうせ仲間になってもらうし……」

 

 ウーンと唸る正体不明(アンノウン)

 しかし数秒も経たずに答えは出た。

 

「いいよ。なら自己紹介をしよう」

 

 名乗るってのか?

 

(ナメられたもんだ。でもそれだけ自分の力を信じてるってこと)

 

 ま、相手からしてみれば盗聴盗撮の可能性もほぼないしな。

 なにせ奴は用意周到で、一帯に『人払いの結界』を張っているらしい。

 俺がここに辿り着けたのは相応の魔法と経験あってこそ。

 

「だから応援が来る可能性は……」

 

 ほぼゼロだ。

 

「でも素直に勇者を渡すわけには——」

 

 しかし体裁上、異能で蹴散らすわけにもいかない。

 だが何はともあれ、まずはその正体を明かしてもらおうか……

 

「僕はね、自分の願いを叶えるための駒(なかま)を探している」

 

 淡々と語り出す正体不明の男。

 すると奴の周囲には光が溢れ出した。

 ケンザキのような黄一色ではなく、様々な色合いの粒子だ。

 

「これは……精霊?」

 

 どこにでも住む意思持つ小さなエネルギー体だ。

 

「ここまでの数はそう見ないだろう?」

「……アンタの正体はエルフか?」

「違う違う。確かに精霊魔法を得意とするのはエルフだけどさ」

「なら……」

「人間にもいるんだよ。例外的に精霊魔法を使える存在が——」

 

 そう言うと奴は一気に黒衣を脱ぎ捨てる。

 露わになる容姿容貌。

 

「————なっ」

 

 俺たちは度肝を抜かれた。

 その理由は、男が『黒』を宿していたから。

 

「ふっふっふ。百聞は一見に如かずってね」

 

 髪も黒い。瞳も黒い。

 加えて肌の色も白というか黄色(おうしょく)だと判明する。

 

「その特徴……」

「私たちと同じ……」

 

 正体不明(アンノウン)の男、その真実は予想もしないものだった。

 

「僕の名前は阿久津(あくつ)(さとし)。君たちと同じ異世界人だ——」

 

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